日本で出会ったイルカとクジラ【第1回】御蔵島での野生イルカとの出会い その1

こんにちは、フォトグラファーのあきです。小さい頃から海の生きものが大好きで、普段は水族館で写真を撮ったり、海に潜って水中撮影を行っています。また、ジャンルは異なりますが、時にはアーティストの音楽ライブも撮影しています。

このフォトエッセイでは、私が日本で出会ったイルカやクジラについてお伝えしていきます。今回は御蔵島(みくらじま)のイルカたちです。

初めての野生イルカとの出会い

私が初めて野生のイルカと出会ったのは、東京都から約200km南に下ったところに位置する御蔵島です。御蔵島近海には約120頭のミナミハンドウイルカが暮らしており、シュノーケリングやスキンダイビングでイルカと一緒に泳ぐことができます。

日本で「野生のイルカと泳ぐ」といえば、必ず候補地として挙げられる御蔵島ですが、基本的には船で行くことになります。しかし、一部のドルフィンスイマーからは“幻の島”と呼ばれるほど、島への着岸率があまり高くありません。

京都のバーで出会った、イルカと泳ぐのが夢だというご夫婦は10年以上前から御蔵島を訪れようとチャレンジしているものの、天候や海況に恵まれず、未だ行けていないといいます。シーズンにもよりますが、年間を通して計算すると4~50%の着岸率になるようです。

当の私も2021年は1回も行けず、2022年は4回チャレンジして2回、2023年は2回中1回とあまり海況に恵まれない人です(笑)。

その理由は島に桟橋が1つしかないことです。桟橋は北西に向かって伸びているので、北西の風が吹くと波の影響で着岸が難しくなります。しかし、最難関である島への着岸が完了すれば、あとはイルカと遊ぶだけ!

寝ぼけ顔

この写真は私が初めて御蔵島に着岸できた日に撮影した写真です。上手く泳ぐこともできず、慌てふためいていた私にイルカの方から寄ってきてくれ、穏やかな表情で2~3回、私の周りをくるくると泳いでくれました。

後から知ったのですが、ミナミハンドウイルカはお腹の斑点の数で年齢が推定できると最近の研究で明らかになってきており、写真下側のイルカの斑点の数からみると、数十年は生きているベテランイルカだと思います。

この子からすれば、泳ぎの下手な人間が来たのか! 仕方ないから遊んであげるよ! といった気持ちだったのかもしれませんね。

ドルフィンスイムの魅力

ドルフィンスイムの一番の魅力はイルカと目を合わせて一緒に泳げる瞬間です。イルカもこっちをみながらたまにウンウンと頷く素振りをみせてくれ、私もマスクの下は笑顔で一緒に並走します。その瞬間が本当に楽しくて、毎年何回も御蔵島に通ってしまいますね!

また、当たり前ですが、水中は電子音や都会のような喧騒が聞こえないのです。聞こえるのは波の音と自分の息遣い、そしてイルカの鳴き声です。そんなイルカと私だけの世界に入り込むと、嫌なことや辛いことをすべて忘れられます。私にとっての水中は“wonderland”です。

お魚くわえた のらね…イルカ!?

イルカは島近海に生息する魚やタコを食べて生きています。ボートに乗っていると、イルカに追われて必死に飛びながら逃げているトビウオをみかけますね。この写真は捕まえた魚を仲間にみせびらかしながら、泳いでいるイルカの姿です。

魚が白くなっていることからしばらく時間が経っていることがわかりますが、捕獲できたことがよほど嬉しかったのでしょうか。そんなことを想像しながら観察するのも面白いですね。

イルカは浅瀬から深場まで

2023年8月8~13日、東京でイルカとクジラの写真展を開催しました。そこで多くの人にびっくりされたのがこの写真。イルカは意外と浅い所にもいるということです。

おそらく水深2メートル程度でしょうか。イルカはこのような浅い所から水深20メートルくらいの深場まで、自らの好みや気分で広く泳いでいます。

また、奥の個体は背びれの前あたりに皮膚病のような傷がみられました。当たり前のことですが、自然界にイルカのお医者さんはいませんし、怪我や病気になっても、誰も助けてくれません。餌も自分で捕まえることができなければ飢えてしまいます。与えられた環境をただ強く生きるしかない。そう感じさせてくれた1枚でした。

半水面世界

これは半水面写真といって、カメラを半分だけ水に沈めて、海の中と空や島の両方を写したものです。差し込む光、水面に浮かぶ泡もキラキラとした玉ボケとして映り込み、とても幻想的な1枚になりました。よくみると、イルカの顎下に小さなコバンザメがくっついているのも可愛いですね。

さて、今回はここまでとします。次回も御蔵島のイルカたちを巡る旅を続けますので、ご期待ください。

【文・写真】
あき
1996年大阪府生まれ、東京都在住。水族館や水中、音楽ライブの撮影のほか、雑誌、Webメディアへの寄稿などを行う。2017年、水族館の生きものを綺麗に撮影したいと思い、写真を始める。2023年、国際フォトコンテスト8TH 35AWARDS「UNDERWATER PHOTOGRAPHY」で100Best photo選出、Top35 photographers選出。『幻想的な水族館の世界カレンダー2024』(緑書房)が2023年9月25日に発売。

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