光触媒でイヌ・ネコアレルゲンの除去に成功

光触媒でイヌ・ネコアレルゲン(溶液/乾燥状態)の分解に成功

東京大学、カルテック㈱、犬山動物総合医療センターの研究グループは、酸化チタン型光触媒がイヌアレルゲンとネコアレルゲンを分解し、アレルゲン性を消失させることを国際的な学術誌「Toxics」で発表しました。

同研究グループは今回の研究の意義について、以下のコメントを発表しています。

犬および猫アレルギー患者は年々増えており、世界人口の10~20%が犬や猫にアレルギーを持っていると推定されています。犬や猫のアレルゲンは主にフケに含まれており、犬や猫のいる家庭では空気中やカーペットなどに小さな粒子として存在しています。

掃除と犬や猫のシャワーは、家庭内のアレルゲンを減らすために有効ですが、アレルゲンを完全に除去することは困難です。そのため、より効率の良いアレルゲンの除去方法の開発がきわめて重要な課題となっています。

東京大学大学院農学生命科学研究科の間特任教授らは、光触媒技術をアレルゲンの除去へ応用するための研究の1つとして、1センチメートル角の酸化チタン型光触媒ガラスシートにイヌ皮屑粗抽出物を滴下し、405ナノメートルの可視光で励起して反応させることで、液体中の主要なイヌアレルゲンが24時間で98.3%まで分解されることを明らかにしました。同様にネコ皮屑粗抽出物では、主要なネコアレルゲンが24時間で93.6~94.4%まで分解されました。

さらに、イヌおよびネコアレルゲンは微粒子に付着し、乾燥した状態で空気中に浮遊し、人の体内に取り込まれるため、乾燥条件下での効果を検証したところ、酸化チタン型光触媒はイヌおよびネコアレルゲンをそれぞれ92.8%と59.2~68.4%まで分解しました。

次に光触媒によるアレルゲンの分解により、そのアレルゲン性を喪失しているかを検証するために、光触媒で処理をした犬と猫のアレルゲンとアレルギーを引き起こすヒトIgEとの結合を検出したところ、それぞれ104.6%と108.6%まで結合性が減少しました。

この研究により、世界で初めて、光触媒技術による溶液中と乾燥状態のイヌおよびネコアレルゲンの分解、そしてそれに伴うアレルゲン性の喪失が実証されたことは、人と犬や猫とのより良い関係を創出してくと同時に、犬や猫以外の動物アレルギーや花粉アレルギーなどへの効果も示唆するものです。光触媒のより幅広い応用が期待され、今後、光触媒技術の社会貢献度がさらに増すと考えられます。

【論文の要約】
https://www.mdpi.com/2305-6304/11/8/718

【発表の詳細】
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20230828-1.html
(東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部ウェブサイト)

※同研究グループのニュースリリースをもとに編集部まとめ。