災害やケガなど、いざというときにペットが頼れるのは飼い主さんしかいません。しかし、助かるはずの命を助けるには知識とスキルが必要です。今回は、ペットを救うための救急救命講習会「ペットセーバープログラム」に潜入! 愛するペットの命に真剣に向き合う講習会の様子をレポートします。
ペットセーバープログラムとは?
ペットセーバープログラムとは、救急救命のプロであるサニー カミヤさんが、日本全国で開講しているペットの救命講習。「助かる命を助ける」ことを目的に、災害や事故が発生したときに必要な知識とスキルを身に付けられるカリキュラムで構成されています。
犬と猫の飼い主さんを対象にした講習のほか、トリマーや愛玩動物看護師などの動物事業者向け講習、またエキゾチックアニマル(ウサギ、カメ、鳥など)向けの講習も実施されています。
開始から約10年が経ち、受講者数はのべ7万人にものぼります。1回の参加者数は40~100人程度で、開講日は毎回満員になるとのこと。講習の内容は定期的にアップデートされるので、リピーターになっている受講者も多いのだそうです。
なお、「ペットセーバー」は(一社)日本国際動物救命救急協会および(一社)日本防災教育訓練センターが正式に認定している民間資格。この講習を受講すると、自身の名前入りの国際認定修了証をもらえます。講習終了後には、修了証を持ってサニー カミヤさんと記念撮影もできちゃいます。
ペットの救命救急隊員講習
講習の前半では、日常生活でも起こりうる事故・ケガや病気などに対応するための救命救急処置を学びます。心肺蘇生法や人工呼吸法などの実技はもちろんのこと、様子がおかしいペットを発見してから、呼吸・意識の確認と搬送の手配を行い、処置をしながら動物病院へ引き継ぐという一連の流れもシミュレーションします。
■心肺蘇生法の実習
飼い主さんが具合の悪そうなペットを発見した、という場面から実習開始。名前を呼んだり、呼吸の有無を確認したり、動物病院への連絡といった実際の手順を再現しながら進行します。なお、心肺蘇生法の練習はぬいぐるみで行われます。また、実際の状況を想定し、すべての実習が感染防止用の手袋を着けて行われていました。
写真:心肺蘇生法の実習の様子
■気道異物除去法の実習
のどに異物を詰まらせて窒息してしまうという事故は、犬の場合はさつまいもやジャーキー、そしてボールなどのオモチャでよく起こります。とくに飲み込む力が衰えてきたシニア期の犬は、ふだんの食事でも気をつけたいところ。数回せきこんでも吐き出せないようなら、すぐに除去を実施する必要があります。実習では、異物を除去するための手技として、背部叩打法、ハイムリック法などの方法が行われていました。また、犬の体格別の対応法や猫での方法も丁寧に説明されていました。
写真:気道異物除去法の実習の様子
■止血法の実習
ペットが出血した際は、ガーゼと包帯で傷口を圧迫して止血しますが、実習では、傷口を洗う方法や包帯法の練習が行われていました。
ペットのレスキュー隊員講習
後半は、ペットのレスキュー隊員講習として、自然災害発生時に自分とペットを守るための方法を考えながら学んでいくプログラムが組まれていました。災害への対策を書き出し、話し合うなど、参加者自身が考えるメニューが提供されていました。さらには、ハザードマップの確認の仕方など、あらかじめ知っておくべき情報の数々がサニー カミヤさんから提供されました。
写真:後半は座学を中心にあらかじめ知っておきたい知識や情報が提供されました
■サニー カミヤさんからのコメント
「災害への対策」となると、備蓄品を買って終わりにしてしまう人も多いのではないでしょうか。それよりももっと大事なことは、「納得性と必要性」。平時に家族で話し合って選択肢と“想定内”を増やしておくこと、そして避難生活で本当に必要なものは何かを考えておくことが重要なのです。より多くの人にこの講習を受講してもらい、自分にとって何が必要なのかに気づき、自分とペットの命を守ることにつなげてほしいと思います。
写真:ペットセーバープログラムでの学びにより「助かるはずの命を助けてほしい」と語るサニー カミヤさん
【プロフィール】
サニー カミヤ
(一社)日本国際動物救命救急協会代表理事、(一社)日本防災教育訓練センター代表理事。福岡市消防局のレスキュー隊小隊長、国際緊急援助隊員、ニューヨーク州救急隊員などを経て、2014年には活動拠点を再度日本へ移し、ペットの救急救命法(ペットセーバープログラム)の講習を日本全国で展開している。著書に『ペットの命を守る本 もしもに備える救急ガイド』(緑書房)。
*「ペットセーバープログラム」は全国で開講されています。最新情報は公式サイト(https://petsaver.jp/)でご確認ください。
*本稿は季刊誌の「wan」2023年10月号(9月14日発売)に掲載している記事のダイジェスト版です。詳しい情報はそちらをご覧ください。
[取材・文]緑書房編集部
[写真]岩﨑 昌、緑書房編集部