絶滅危惧種アホウドリ 現地調査・保全活動のサポーター募集開始(山階鳥類研究所)

アホウドリを絶滅から救い出すために

山階鳥類研究所では、アホウドリの現地調査・保全活動のため、マンスリーサポーター(500円/月)の募集を開始しました。

目標としている2000口の応募を達成すると、鳥島(伊豆諸島)で年1回、聟島(小笠原諸島)で年3回の現地調査・保全活動が可能となり、すべてのヒナへの個体識別用の足環装着、個体数およびヒナ数のモニタリング、聟島でのデコイによる誘引などが継続できます。おおむね10年の活動継続を目指しています。

1970年代からの調査が途切れるおそれ

アホウドリは特別天然記念物であり、絶滅危惧II類(環境省レッドリスト、2020)に位置づけられています。

これまでの保全活動でアホウドリの個体数は回復してきており、2023年は推定7900羽を超えるまでとなりました。この個体数回復には、1970年代から毎年継続されてきた現地調査が大きく貢献しています。とくに、最大の繁殖地である鳥島で孵化するすべてのヒナへの足環装着がほぼ半世紀にわたって行われてきたことは、数十年も生きる長寿種であるアホウドリの、現在および今後の保全活動のために必要な情報の蓄積につながっています。

山階鳥研は現在、主に公的予算によって、鳥島と聟島で標識調査やモニタリングを含む現地調査・保全活動を毎年実施しています。しかし、他の絶滅危惧種との兼ね合いなどから、この公的予算が大幅に縮小される方向性が示されており、このままでは活動が継続できない見通しとなっています。現地調査が途切れると、アホウドリを絶滅危惧種から救い出すためのよりどころとなる情報の蓄積が失われることとなります。

鳥島および聟島で現地調査を行う理由

現在、アホウドリには鳥島と尖閣諸島の2つの繁殖地があります。

しかし、最大の繁殖地である鳥島は活火山であり、万一の噴火の際には、アホウドリの個体群に影響が出る可能性があります。また尖閣諸島は、現地調査・保全活動を行うのが難しい状況です。

このため、過去にアホウドリが繁殖していた聟島に営巣地を復活させる活動が、2008年より行われています。しかし、2021~2022年の繁殖期に2つがいが繁殖しはじめたものの、まだ安定した集団繁殖地はできていません。アホウドリは1年に1つしか卵を産まないため、個体数が増えるには長い年月が必要です。その間、ヒナへの足環装着や、繁殖が立ち消えないためのモニタリング、そして状況に応じたきめ細かい対策が必要となっています。

さらには最近「尖閣諸島で繁殖するアホウドリ(センカクアホウドリ)と鳥島のアホウドリは分類学的に別種とするべき」という研究成果が発表されました。尖閣諸島の個体群の現状や絶滅のおそれについて把握するためにも、鳥島および聟島での現地調査・保全活動の継続が重要となっています。

山階鳥類研究所 アホウドリマンスリーサポーター募集ページ:
https://www.yamashina.or.jp/albatross/kifu.html

※同研究所ニュースリリースをもとに編集部まとめ。