動物業界のお仕事:地方公務員獣医師(鳥取家畜保健衛生所)

「いきもののわ」6月の特集では、いろいろな「動物業界のお仕事」を紹介していきます!

今回は、鳥取家畜保健衛生所で公務員獣医師(家畜防疫員)として働く天野さんに、1日の業務や就職までの経緯、この仕事を目指す人へのアドバイスなどをお聞きしました!

写真:鳥取家畜保健衛生所の天野さん

毎朝車で通勤し、8時半から家畜保健衛生所での業務をはじめます。

家畜保健衛生所は、家畜(ウシ、ブタ、ニワトリ、ミツバチ、ヤギなど)の病気の感染予防やまん延防止のため農家への指導をする施設であり、ここに勤める職員は全員が獣医師の専門家集団です。農家の生産性向上や経営安定に貢献するため、農家、担当獣医師、農協、農業改良普及員などと連携して業務をしています。

とある1日を紹介しますと、午前中は、県外にミツバチを移動させるために必要な腐蛆病検査(ふそびょうけんさ)をするために養蜂場へ向かい、巣箱にいるハチの幼虫に異状がないことを確認し、検査済証を発行して県外への移動の許可を出します。

事務所に帰ったあとは、複数の職員で手分けして子牛の解剖検査をします。牛や豚の解剖による死因の調査や採血検査による健康状態の確認も、大切な業務の一環です。

写真:検査や病気の調査は大切な業務です

午後は、家畜保健衛生所が毎月開催している養鶏農場での勉強会へ出席します。私が作成した資料を使い、参加者である養鶏農場の従業員と一緒に、鶏の病気や飼養衛生管理基準について勉強しました。

写真:農場での勉強会の様子

業務を終え、午後5時半ごろに退勤します。家に帰ってからは、自宅にいるウサギ、蛇、金魚などのペットの世話をしたり、ゲームをしたりと、自分の時間を満喫しています。

「動物を病気にさせないための仕事」ということに最も魅力を感じています。家畜の衛生状態や防疫意識を向上させるための指導をした結果として、農場の繫殖成績や衛生管理状況が目に見えて改善されると嬉しいですし、農家さんが喜ぶ姿を見ると「がんばって指導をしてよかったな」と思います。

また、大学時代に習得した知識や技術を業務で生かせるほか、日々の業務のなかで新しい知識や技術を習得できることを楽しく感じています。

写真:「動物を病気にさせないための仕事」であることにやりがいを感じる

小学生のときに、飼っていた犬が病気になり、動物病院に入院した数日後に亡くなってしまったことがありました。亡くなったという連絡を受けたときに、短い時間で命が失われてしまったことがあまりにも悲しく、「病気の動物たちを治療してあげられるようになりたい」、「私のような思いをする飼い主さんを減らしたい」と思ったことから、獣医師を志すようになりました。

獣医師になるために獣医学科のある大学に入学した後、県の家畜防疫員として働く公務員獣医師という職について知りました。そして、「動物を病気にさせない」ことが主な業務であることに魅力を感じました。

猛勉強をしつつ浪人生活を経て獣医学科のある大学に入学しました。大学では、1~2年生では一般教養、3年生からは専門的な獣医学を学びました。4年生になると、獣医学科の研究室に所属して専門的な研究をします。5年生では獣医学共用試験に通過し、臨床実習に参加できるようになりました。その後、希望する鳥取県の公務員試験を6年生の夏ごろに受験して採用となり、2月の獣医師国家試験合格を経て、卒業後に鳥取県職員の獣医師職に就きました。

県職員の獣医師の職場は、家畜保健衛生所だけではありません。食肉衛生検査所の検査員、保健所の動物愛護や食品衛生にかかわる仕事、野生鳥獣に対応する部署、畜産試験場の試験研究員など、さまざまな職種があります。仕事が多岐にわたるため、さまざまな体験ができますよ。

また、組織の一員として大勢の仲間と協力しながら仕事をするので、人間的にも大きく成長できます。動物が好きな人はもちろん、人とコミュニケーションをとることが好きな人や、人のために働くことに喜びを見出せる人にも向いている仕事です。また、公務員としての福利厚生を受けられるため、結婚、出産、子育てなど、それぞれのライフステージに合った働き方ができると感じています。

天野弥咲(あまの・みさき)
鳥取家畜保健衛生所勤務