動物業界のお仕事:動物病院の獣医師(大相模動物クリニック)

「いきもののわ」6月の特集では、いろいろな「動物業界のお仕事」を紹介していきます!

今回は、動物病院で犬・猫・エキゾチックアニマルの診療をしている村上先生に、1日の業務や就職までの経緯、この仕事を目指す人へのアドバイスなどをお聞きしました!

*エキゾチックアニマル:ペットとして飼育されている、犬や猫以外の動物

写真:大相模動物クリニックの村上先生

朝は、午前中の診療がはじまる前に、入院している動物の治療や看護をします。動物病院では動物を飼育していることが多く、私の動物病院でも飼育しているため、その世話もします。また、午前の診療の準備や、予定によっては検査や処置の準備をします。

9時から午前の診療をはじめます。診療の例を挙げると、爪切りや、健康診断、ワクチン接種などの予防や、病気の診断をするための血液検査やレントゲン検査など、そしてその検査結果をもとにした注射や点滴などの必要な治療などです。飼育指導の話だけのこともあれば、緊急的にウサギに麻酔をかけて歯を削る処置をすることもあります。このような通常の診察とは別に、動物を半日ほど預かって、人間ドックのような精密検査もしていきます。

写真:診察風景

写真: レントゲン撮影の様子

午前の診療時間を終えたあとは、精密検査をした動物の報告書の作成や、手術をします。その後、検査や処置の準備をしてから、午後の診療をはじめます。

写真:手術の様子

午後の診療を終えた後は、夜間にかけて、入院している動物の治療や管理をしていきます。緊急で対応が必要な動物がいるときは、夜にも手術をします。また、その日のカルテのチェックや、勉強、論文の執筆などもこの時間にしています。

一番のやりがいは、病気で苦しんでいる動物を救えることです。しかし、人間の医療と同じで、どうしても治らない、治せない病気もあります。そのときは、いかに1日1日を、苦しみを感じず楽しく過ごさせてあげられるかを考えていくこともあります。また、「病気を未然に防ぐこと」が最も大切なので、ワクチン接種などによる予防だけでなく、正しい飼育方法を飼い主さんにお伝えすることで、健康な生活を過ごせる手助けをしています。

つらいこともありますが、これらのすべてを通じて、動物たちがその生涯を健康に過ごしていく手伝いができることにやりがいを感じています。

幼少期から動物が好きだったことが大きな理由のひとつです。一番のきっかけは、小学生の頃に飼っていた犬が獣医師の往診を受けていたことから、獣医師という仕事を知り、憧れを抱いたことです。

当時の私は行動力だけはあったので、近隣の動物病院にアポイントも取らずに乗り込んで、どうしたら獣医師になれるのか情報収集しました。獣医師を目指すのに学費がかかることを知ったあとは、親と進路について話し合い、頭を下げてお願いしました。そこからしばらくは漫然と勉強をしていましたが、受験勉強中にその飼い犬が病気で亡くなってから、本気で勉強しはじめました。

つまり、飼っていた犬、診てくれた獣医師、そして金銭面に余裕がある訳ではなかったにもかかわらず何も言わずに費用の工面をして進学させてくれた親のおかげで、獣医師を目指せたのです。

獣医師になるためには、獣医師国家試験の受験資格が取得可能な大学・学部に入る必要があります。私の場合は、日本大学で獣医学を6年間学びました。

大学4年生になった学生たちは、それぞれ就職先(動物病院、公務員、企業、動物園など)を考えながら、希望する研究室(外科、内科、病理、伝染病学など)に所属します。私は動物病院への就職を考えていました。動物病院は犬・猫の診療がメインの所が多いのですが、私は「動物を診療するからには犬・猫だけでなくエキゾチックアニマルもしっかりと診療したい」と思っていました。そこで、エキゾチックアニマルも診察できる動物病院の院長と当時ご縁ができたこともあり、卒業後にその動物病院に就職しました。その後、病院を受け継いで今に至ります。

「本当に大変なのは働きはじめてからです」とアドバイスしたいです。獣医師になると、毎日のように更新される医療情報を常にチェックして勉強しながら、ハードな仕事をこなさなくてはなりません。また、救える動物を増やすためには、情報を受け取るだけではなく、新情報があったときに論文として発信していく必要があります。この職業は、動物たちのために日々精進する覚悟を胸にして目指すことが大切です。

写真:学会などでの情報収集や発信も仕事の一環

また、学生のうちから人と話す能力を高めておいたほうが良いでしょう。私は学生時代にさまざまなアルバイトを掛け持ちしましたが、そのほとんどで接客業を選びました。今でも、そのときの経験が役に立っています。言葉を話せない動物の診療では、特に飼い主さんとしっかり話すことが大切ですが、これには高いコミュニケーション能力が求められます。勉強ばかりでなく、よく遊び、よく周囲と会話をしていくことが、将来きっと役に立ちますよ。

村上彬祥(むらかみ・あきよし)
大相模動物クリニック 院長