牧場で魅力的な写真を撮るために:知っておきたい6つのポイント

牧場にいる動物の魅力的な写真を撮るための基本のお約束や、撮影のポイントをご紹介します。

基本のお約束 

撮影しても良いか確認!

観光牧場ではない生産農家さんの場合は、撮影できるかを事前に調べましょう。また、牧場の敷地には立ち入り禁止の場所もあるので、案内板などをしっかり確認して、安全な場所から撮影してくださいね。また、牧場では大型の車や機械の往来があるので、事故にならないように気をつけましょう。

衛生にも気をつけよう!

複数の牧場をハシゴするときには、動物を伝染病から守るために、できれば靴を履き替えましょう。車(特にタイヤ)が病原菌を運ぶこともあるので、撮影の前後に洗車すると完璧です! 旅行先の牧場に行く場合には、その地域で家畜の伝染病が発生していないか確認することも大切です。

撮影のポイント

1.まずは、時間をかけて向き合うことが大切!

何事にも動じないように見られがちな牛ですが、実はとても臆病な面があります。牛に限らず、草食動物は基本的に大きな声や音にびっくりしてしまうので、動物が近くにいるときには、静かに優しい声でコミュニケーションをとってみましょう。

遠くにいても、じっと待っていると寄ってきてくれます。私はいつも、近くに来てくれた動物に話しかけたり、首を掻いてあげたりして、「私はあなたの友だちだよ」という気持ちを伝えてから撮影に入るようにしています。動物たちの良い表情を引き出すには、リラックスしてもらうことが何より大切だと思っています。

2.まん丸の瞳にフォーカスを当てて!

牛をはじめとして、牧場にいる草食動物はまん丸の瞳がとっても魅力的! ですが、牛や馬などは顔が長いので、真正面から撮ると鼻にピントが合いがちです。カメラで撮影するときには、目にピントを合わせた状態でシャッターを半押ししてから構図を決めて撮りましょう。スマートフォンで撮影する場合は、画面に映っている動物の目の部分をタッチすると、自動でピントを合わせてくれますよ。

また、曇りの方が柔らかな光のなかで明るく撮れるので、晴れてかんかん照りの日には、太陽が雲に隠れるのを待つのも良いと思います。動物たちが驚くので、フラッシュは焚かないようにしましょうね。

また、目に白い光が入ると目が輝いてますます可愛くなります。被写体が顔を上げると、瞳に空が映って綺麗です。自分で白などの明るい色の服を着て、レフ板の代わりに自分を動物の瞳に映すのも良いですよ!

3.カメラを動物の目線の高さに!

小さい動物や、座って休んでいる動物を撮影するときには、しゃがんでカメラを被写体の目線の高さにすると、表情がわかりやすくなります。また、同じ目線になることでこちらの威圧感もなくなるため、リラックスしてもらえますよ。立ったりしゃがんだりする動作で動物が驚かないように気をつけて、ゆっくりと動きましょう。

4.笑っているような表情は横顔から!

牛や山羊、羊などは口角が上がっているので、横から見るとにっこりと笑っているように見えます。おすすめは動物たちが反芻などでリラックスしているとき。反芻のリズムを感じながら、口を開けるタイミングを狙って撮影してみましょう。シャッターを押してから撮影されるまでに多少のタイムラグがあるので、カメラの個性も把握できると良いですね!

牧場の動物は、犬のように「おすわり」や「マテ」をしてくれません。被写体がちょうど良いところへ動いてくれるまで待つか、自分が動いて、良い角度を見つけてみてください。動くときには、走り回って驚かせないように気をつけてくださいね。

5.水平を意識してみよう!

動物をアップで撮るときには、斜めの角度でもダイナミックに表現できます。しかし「動物を含めた風景」を撮るときには、地面、建物、柵、動物の背中などのうち、一箇所が水平または垂直になるように意識してみましょう。慣れないうちは、カメラのファインダーやスマートフォンの画面上にグリッドライン(縦横に2本ずつの線)を表示させるのも良いと思います。水平がバッチリ決まっている写真のほうが、見ていて気持ちが良いです。

6.ヨコ位置とタテ位置を使い分けよう!

スマートフォンで撮影すると、ついつい縦長の写真が多くなりがちです。しかし人の目は左右についているため、風景などはヨコ位置の方が自然に伝えられる場合があります。

*ヨコ位置:カメラ用語で、横長の写真のこと。縦長の写真は「タテ位置」。

また、空などの空間を多めに入れると景色に広がりが感じられます。動物たちの顔を撮るときも、横顔ならヨコ位置、正面ならタテ位置など、いろいろな撮り方を試してみると、自分でも「あ!」と驚く良い写真が撮影できるかもしれません。「1枚撮っておわり!」ではなく、いろいろな角度から試してみてくださいね!

【文・写真】
高田千鶴(たかた・ちづる)
1979 年大阪府生まれ。1994 年大阪府立農芸高等学校資源動物科に入学、3年間にわたり大家畜部(牛部)で牛の世話を経験する。酪農ヘルパーの職務経験を経て牛写真家に転身。カメラ片手に全国の牧場をめぐり、写真を撮り続けている。著書に『うしのひとりごと』(河出書房新社)など。2015 年より酪農専門誌『Dairy PROFESSIONAL』にて「牛とおっちゃん」を連載中。著作『牛がおしえてくれたこと」(緑書房)を2024年6月に発売。
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