はっけん! 日本の爬虫類・両生類【第11回】ミヤコヒキガエルBufo gargarizans miyakonis (Okada, 1931)

宮古島は、沖縄島と石垣島の間に浮かぶ、高温多湿な気候の島です。平坦な台地状の島であり、その大部分は琉球石灰岩で形成されています。

世界中でも宮古諸島にしかいない生きものが、この島には数多く暮らしています。例えば、ミヤコカナヘビやミヤラヒメヘビなどの爬虫類、純淡水域に暮らすミヤコサワガニ、ベニエリルリゴキブリという美しいゴキブリなどです。今回紹介するのはミヤコヒキガエルです。

宮古諸島に住むカラフルなカエル

写真:ミヤコヒキガエル

ミヤコヒキガエルは、本州に暮らすアズマヒキガエルやニホンヒキガエルよりも小柄なカエルです。体色は少しだけカラフルで、黄色がかった個体やオレンジ色の個体、すこし緑色っぽく見える個体までいます。宮古島は植物も多様なので、その落ち葉に擬態しているのかもしれません。

繁殖期を迎える10月ごろには、夜間の路上などでも多くの個体と出会えます。この時期の日中に、サトウキビ畑を徘徊している個体も見たことがあります。

写真:サトウキビ畑を徘徊するミヤコヒキガエル

繁殖期のオスは、夜間に浅い池などに集まり、メスを求めて鳴きます。鳴嚢(めいのう:鳴き声を増幅するのに使われる薄い膜)がないため、鳴くときにニホンアマガエルのように喉元の袋が大きく膨らむことはありません。また、発達した水かきを使ってスイスイと泳ぎ回り、メスを見つけると抱きついて交尾します。「蛙合戦」と呼ばれる、多くのオスが少ないメスを取り合う姿があちこちで見られます。無事にカップルが成立したあとのメスは、時間をかけてヒモ状の卵を産みます。卵から孵化した大量の幼生は成長し、生き残った個体だけが数年後に交尾や産卵のために池に戻ってきます。

写真:ミヤコヒキガエルの産卵

不思議なのは、このようなヒキガエルの仲間が、奄美大島や沖縄諸島、石垣島を含む八重山諸島などには在来していないことです。なぜ高い山がない宮古島に、このような多様な種が残るのか、今後の研究が楽しみですね。生物地理学的にも注目されており、宮古島の魅力を再考させてくれるミヤコヒキガエルに会いに、また宮古島を訪れたいものです。

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(ニホンヤモリ、ニホンイシガメ、オオサンショウウオ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、イモリ、トカゲ、小型サンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。最新刊『日本のいきものビジュアルガイド はっけん! カナヘビ』(緑書房)が2024年3月29日に発売。