『黒猫ろんと暮らしたら』漫画家・AKRさんの描く、個性豊かな猫たちと過ごす日々

人懐っこくて穏やかな性格が印象的な黒猫・くろあんくん(愛称:ろん)や、その他の猫たちと暮らす日常を描いたコミックエッセイ『黒猫ろんと暮らしたら』。作者のAKRさんに、猫たちと生活を送るなかで気づいた「猫の魅力」などをお聞きしました!

図:AKRさん似顔絵

写真:インタビューに参加してくれた、みたらし(左)としんば(右)

写真:インタビュー中にお昼寝していた、ろん(上)とまめ(下)

図:『黒猫ろんと暮らしたら』1巻の表紙(『黒猫ろんと暮らしたら』©AKR/KADOKAWA)

思い出を残しておくために描きはじめた漫画

ろんくんと暮らしはじめた経緯を教えてください!

AKRさん

2014年に1人暮らしをはじめたときに、「猫と一緒に暮らしたい」と思うようになりました。迎えるなら保護猫にしたいと考えていたため、保護猫を飼っている職場の方に相談したところ、「里親を募集している動物病院に話を聞いてみたら」と獣医師さんに連絡してくださったのです。まずは話を聞こうと思って訪問したところ、その動物病院が保護していた黒猫を「良い子だし、サポートするから」と猛プッシュしていただきました。その黒猫が「ろん」こと「くろあん」です。

図:ろんとのはじめての出会い (『黒猫ろんと暮らしたら』©AKR/KADOKAWA)

写真:同居初日のろん
AKRさん

野良猫時代のろんは、住宅街を徘徊しては家に侵入してご飯を狙う、とても人懐っこい猫だったようです。猫を好きではない人にいじめられていたところを、獣医師さんが保護したと聞きました。当時、推定で生後半年なのに体重が4キログラムもあったのですが、はじめての猫なので「猫ってこんなに大きいんだなあ」としか思っておらず、ろんが特大サイズだと気づいたのは後からでした。ちなみに今はすくすくと育って7キログラムです。

こうしてろんを引き取ることになり、その5年後の2019年に、今のようなエッセイ漫画を描きはじめました。友人などにろんについて知ってほしい気持ちもありましたが、ろんとの思い出を残したかったのが一番の理由でした。ところが、描いた絵を友達に共有するためにSNSに投稿したところ、多くの方が関心をもってくださいました。意外でしたが、可愛い我が子を見てもらえた嬉しさがありましたね。

AKRさん

黒猫は他の柄に比べて人気が低く、黒い保護猫も里親が見つかりにくいとされています。ろんを引き取った動物病院でも「黒猫なので、里親探しに難航するのを覚悟していた」と言っていました。なので、エッセイ漫画を読んだ方から「私も黒い保護猫を引き取りました」「家の周りで野良の黒猫を保護しました。絵日記にも影響されました」などとメッセージをいただいたときには、「描いていてよかったぜ!」と嬉しかったです。

ろんがスカウトした個性豊かな猫たち

作中に出てくる、ほかの猫たちについても教えてください。

AKRさん

ろんが7歳くらいのときに窓越しに仲良くなり、それをきっかけとして迎え入れることとなったのが、母猫のまめと、娘のみたらしです。

図:ある日、庭にやってきたまめとみたらし(『黒猫ろんと暮らしたら』©AKR/KADOKAWA)
AKRさん

そして、9歳くらいのときに、同じくろんがスカウトする形でしんばが家に来ました。男の子2匹と女の子2匹、年配2匹と若者2匹と、意外とバランスが取れていますね。

図:ろんにスカウトされたしんば (『黒猫ろんと暮らしたら』©AKR/KADOKAWA)
AKRさん

ろんにスカウトされただけあって、コミュニケーション能力が高い子たちばかりですが、性格はばらばらです。ろんは賢く穏やかなタイプで、大黒柱のようにどっしりしています。まめも穏やかですが、野良猫歴が長いからか嫌なことは態度で示します。みたらしは、生まれたばかりだった野良猫時代はろんにビクビクしていたのですが、それから他の猫や人間に見守られて育ち、甘えん坊で怖いものなしになりました。今や自分からろんに近寄って、ろんが振っている尻尾を顔にぺしぺしと当てたりしています。猫が人間に懐くのも嬉しいですが、ろんに懐いていてくれるのはなによりも嬉しいですね。

AKRさん

最後に来たしんばは、おそらく2年弱ほど野良猫をしていた子ですが、出会ったときから人間が大好きです。まめには頭が上がらない様子ですが、みたらしとは子ども同士でよく競い合っています。ろんに対してはまだ距離がありますが、いずれ仲良くなってくれることを願いつつ見守っています。

写真:人間が大好きなしんば

ろんくんに猫の友だちができて良かったです。

AKRさん

ろんは、家の前を通る散歩中の犬や野良猫に積極的に話しかける子だったので、「他の猫と暮らした方が楽しいのだろうな」と思っていたところに、まめとみたらしがろんを受け入れてくれたのです。当時は、ろんと縁がある子なので幸せにしてあげたい気持ちと、ろんを守りながら野良猫を保護できるのか不安な気持ちの板挟みになり、とても悩みました。最終的に、私には自宅と実家の2つの住環境があり、いざというときに分けて世話をできることを理由に保護に踏み切りました。

写真:保護から2週間後のまめ(下)とみたらし(上)
AKRさん

最近はまた住環境が変わり、実家にしんば、まめ、みたらしがいて、私の家にろんがいます。今の家族のLINEグループは、メンバーのアイコンがみんな猫ですし、メッセージ履歴もそれぞれが一緒に暮らしている猫の写真ばかりですよ。

ろんは車が嫌いではないので、ろんを他の3匹と会わせるために頻繁に実家に帰っています。キャリーに入れたろんを助手席に置いて移動し、たまに「外が見たい」と主張したときには、コンビニに駐車してすこし車内から外を見せてあげています。

図:猫たちの所在地(『黒猫ろんと暮らしたら』©AKR/KADOKAWA)

飼ってわかった、猫の「社会性」の魅力

エッセイ漫画を描くときに工夫している点はありますか?

AKRさん

エッセイ漫画を書くときには、私の等身大の体験が、そのままの形で伝わるように気を付けています。物語的な起伏の少ない、淡々とした話になってしまうことはありますが、そこは割り切っていますね。

猫を描くときは、写真を見るなどして、猫として違和感がないように気を付けています。また、ゆっくりと絵柄が変わるなかで、なるべく顔の表現は変えないようにしていますね。代わりにイラストでは、服を着せたり2本足で立たせたりと、ファンタジー的な要素を織り交ぜています。

図:イラストにはファンタジー要素を織り交ぜることも(『黒猫ろんと暮らしたら』©AKR/KADOKAWA)

AKRさんの思う、猫の魅力を教えてください!

AKRさん

以前は猫に対して「自由で気ままで、1匹でも楽しく過ごせる」というイメージをもっていましたが、寂しがりで気遣い屋のろんを迎えて、猫が社会性をもった生き物だと知りました。ほかの子たちもしっかりとした社会性をもちあわせていて、例えば動物病院で注射されて落ち込んで帰ってきたろんを他の子たちが「大丈夫?」と舐めてあげたり、私が疲れているとそばに来てくれたりします。年下のみたらしがとくにそうした性格なので、愛されて育ったのが影響しているのかなと思うこともあります。

このように猫は、その賢さや、お互いに尊重し合って一緒に暮らしているところが魅力です。これからも、猫の魅力がどんどん発見できたらいいなと思っています。

ありがとうございます。最後に、この記事の読者にメッセージをお願いします!

AKRさん

いつもエッセイ漫画や写真を通して優しく見守ってくださっている方々には、ほんとうに感謝しています。新しい子を保護したときに親身になって心配してくださる声や、健康になる過程を喜んでくださる声には、励まされましたし嬉しかったです。これからも引き続き、ろんたちの生活を見守っていただけると嬉しいです。

これからの作品も楽しみにしています!

AKR
三重県在住。黒猫のくろあん(愛称:ろん)と暮らす。2019年3月よりX(旧Twitter)で「ろんの絵日記」を投稿し、人気を博す。著書『黒猫ろんと暮らしたら』シリーズ(KADOKAWA)は、2024年6月に第6巻が発売。