吸い込まれるように美しく、不思議な魅力を持つ猫の眼ですが、時には人間と同じように病気になることがあります。
病気のサインを見逃さないために、ここでは見た目の変化で発見しやすい猫の眼の病気について解説します。
しょぼしょぼする
眼が痛いときのサインで、結膜炎や角膜炎など、様々な病気の可能性が考えられます。目やにや涙が大量に出る場合は、早めに受診しましょう。
目が赤い
まぶたが赤い
【眼瞼炎】
まぶたの周辺に炎症が起こると、眼のまわりの腫れや脱毛、目やにの付着などがみられます。
白目が赤い
結膜炎、眼内の炎症、緑内障などで、白目が充血します。
【結膜炎】
結膜(上下のまぶたの内側や、眼球の白目の部分にある粘膜)が充血する状態で、涙や目やにが増えることがあります。多くは猫ヘルペスウイルスやクラミジアなどの病原体の感染が原因です。
【ぶどう膜炎】
ぶどう膜(瞳の虹彩、毛様体、脈絡膜の3つからなる目の中にある膜)の炎症で、白目だけでなく虹彩(黄色や青色の部分)の充血や眼の中の出血が見られることがあります。ぶどう膜は眼に炎症の原因がある場合もありますが、腫瘍や感染、炎症などといった全身性疾患の症状の一つとして現れることもあるため、注意が必要です。
また、炎症が起こると眼の中を循環している水(房水)の混濁や炎症性物質の沈着により、眼の中が白く見えることがあります。例えば猫伝染性腹膜炎(FIP)ではぶどう膜炎の症状が顕著で、FIPを発症した猫の29%に眼の病変が認められたという研究報告があります。
【緑内障】
眼圧の上昇により視神経や網膜の細胞が損傷し、進行性の視覚障害が起こります。多くは何らかの眼疾患や全身性疾患が原因となりますが、ゆっくりと進行するため、失明して初めて気付かれることが多い病気です。
猫では明らかな充血がみられないこともありますが、眼の大きさが反対眼と比べて大きい、散瞳したままであるなどの症状が認められた場合は注意が必要です。
眼が白い
眼の表面が白い
角膜が混濁していると、眼の表面が白くなります。角膜の混濁は角膜の炎症や感染、潰瘍が形成された際に見られます。
眼の中が白い
【白内障】
水晶体が白く濁る病気です。猫では人や犬に比べて白内障の発症頻度は低く、炎症や水晶体の位置異常などに続発することが多いという研究報告があります。
眼が黒い
眼の表面が黒い
【角膜黒色壊死症】
角膜の表面に黒い塊が見られることが特徴です。角膜に対する何かしらの慢性刺激(猫ヘルペスウイルス感染症、眼瞼内反など)が要因であると考えられており、短頭種の猫では発生する割合が高くなります。角膜潰瘍を併発することもあり、眼の不快感、目やに、涙の増多、結膜炎などが起こることがあります。
眼の中が黒い
【びまん性虹彩メラノーマ】
虹彩に茶色の斑点が見られます。斑点は単なるシミのこともあれば腫瘍の可能性もあります。腫瘍の場合でも初期にシミと鑑別することは困難ですが、腫瘍であれば範囲の拡大や眼圧の上昇が起こることがあるため、定期的な検査をおすすめします。
見えていない?
高血圧性網膜症
高齢猫では腎臓の病気や甲状腺機能亢進症を患っていることが多く、これらの疾患が高血圧の原因となることが知られています。
高血圧の猫では、血圧の上昇により眼の奥の血管が破綻することで網膜剥離や網膜出血、時には虹彩からの出血を起こし、突然視覚を失うことがあります(高血圧性網膜症)。高血圧性網膜症が起こると瞳孔が丸く広がったままになることが多く、時には剥離して浮き上がった網膜が、眼の奥でモヤモヤした白い膜として見えることもあります。高血圧は初期には明らかな症状を示さないため、定期的な血圧測定や眼底検査が早期発見につながります。
まとめ
眼の病気は進行が速いものもあり、眼に現れている症状が眼だけの問題ではなく全身性疾患の症状のひとつである可能性もあります。
いつもと眼の様子が異なる場合は、早めに動物病院に受診しましょう。
【執筆者】
重山純子(しげやま・じゅんこ)
獣医師。ファーブル動物病院(大阪府門真市、https://fabre-amc.jp/)眼科・勤務医。日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科卒業後、大阪府、東京都内の動物病院に勤務。日々、動物の眼科診療に携わる。比較眼科学会に所属。
【編集協力】
柴山淑子