動物園に聞く! インドゾウの健康診断(よこはま動物園ズーラシア)

動物園で人気者のゾウ。もちろん、ゾウも健康診断を行います。いったいどのように診断されるのでしょうか? よこはま動物園ズーラシアにお話を聞きました。

2頭のインドゾウ

よこはま動物園ズーラシアでは現在、ヒンディー語で王子という意味のラスクマル(オス、34歳)、インド神話に出てくる女神様の名前からいただいたシュリー(メス、29歳)の2頭を飼育しています。どちらも1999年に入園しました。

※情報は2024年7月時点のものです。

写真1:シュリー(左)とラスクマル(右)

健康診断では何をするのでしょうか?

血液検査を隔週で実施しています。また、足のチェックは毎日朝・夕の2回実施し、体重測定は毎週月曜日と金曜日。体型チェックは月初めに1回行います。
治療や採血のためのトレーニングは毎日実施しています。

ゾウは体も大きく、近づくだけでも緊張感がありますね

その通りです。さらに力も強いため、近づく飼育員には危険がつきまといます。そのため柵越しに接しています。その柵は「プロテクテッド・コンタクト・ウォール」と呼ばれ、飼育員の安全を守る構造になっています。

写真2:プロテクテッド・コンタクト・ウォール

どうやって健康診断などを行うのですか?

触診や薬を塗るなどゾウに近づく場合、自分から対象部位を柵に寄せてくれないと実施できません。そのため、飼育員の号令で体の各部分を柵に寄せるトレーニングを行います。

例えば、号令によって口を開けてもらうことにより口腔内のチェックができます。これにより歯の状態確認、牙の整形(オスのみ)が可能です。

また、血液検査の際は耳の裏にある静脈から採血します。この検査では健康状態や繁殖周期などを知ることができます。そのため、柵に耳を寄せるトレーニング、針を刺した時の痛みで耳を動かさないトレーニングを毎日行っています。

写真3:耳から採血するトレーニング

ゾウの健康を維持するためにはフットケア、ネイルケアが大変重要になります。体重の重たいゾウにとって、足の疾病は命取りになりかねません。爪が割れたり足裏に何かが刺さったりした場合、対処しようとしても人の力ではゾウの足を持ち上げることはできません。

写真4:ゾウの足の裏

そのため、飼育員の号令で、ゾウが自ら足を上げるトレーニングを行っています。毎日朝と夕方に足を1本ずつ上げてもらって洗浄します。冬場はオイル塗布を行い、同時に異常がないか点検をしています。定期的に足の爪の整形をすることも欠かせません。削蹄用のヤスリやカマを駆使してささくれを切ったり、爪の伸びた部分を削ったりします。

写真5:ゾウの足洗い

その他、週に2回の体重測定と、月に一度目視による体型チェックをします。展示場に設置された体重計に飼育員の号令で乗ってもらい体重測定します。体型チェックでは、複数の飼育員が目視で9段階のスコア表に基づき評価します。

健康診断をスムーズに行うためのトレーニングについて教えてください

前述の通り、スムーズに健康診断や治療を行うため、当園ではハズバンダリートレーニングを行っています。これは、動物に健康診断を実施するための動作や姿勢を行ってもらう手法のことです。動物側に協力してもらったら、約束事として動物にご褒美の強化子(おやつ)を与え、次からも協力してもらいやすくします。

写真6:体に触るトレーニング

体の大きなゾウから安全に採血をすることはとても難しいことです。飼育員が押さえて注射針を刺すことは危険であり、採血をするためにはゾウに協力してもらうことが必要になります。ちなみに、強化子のおやつはサツマイモ・ニンジン・リンゴを使用しています。

ゾウ特有のはなしとして、フットケアがたいへん重要になります。ゾウの足裏は重たい体重を受け止められるようにクッションの役目をしていて、軟らかくなっています。そのため足裏に何かが刺さり、内部に膿が溜まるなどの疾患を発症することがあります。またゾウの足先には爪がありますが、爪がひび割れることや、摩耗することもあります。体重の重いゾウにとって、足の疾病は命取りです。日々ゾウの足(足裏、爪、関節の動き)をチェックする必要があり、このようなトレーニングは欠かせません。

まとめ

動物たちの健康は、飼育員や獣医師たちの様々な工夫によって守られています。そのことを知れば、また少し違った視点で動物園を楽しめるかもしれません。

【文・写真】
よこはま動物園ズーラシア
〒241-0001 横浜市旭区上白根町1175-1
TEL 045-959-1000

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