ウサギ専門の動物病院に聞く! 健康診断のはなし

犬や猫では一般的になってきた健康診断。ウサギにも必要なの? ウサギの健康診断って具体的になにをするの? 病院に連れて行く際の注意点は? 普段の健康管理はどのようにすればいいの?

そんな数々の疑問を、熊本県にある日本でも数少ないウサギ専門の動物病院「うさぎの病院」院長・中田先生にお聞きしました!

写真:ウサギを診察する中田先生

ウサギにも健康診断は必要ですか?

必要です。

ウサギは犬や猫と違って鳴くことがほとんどなく、普段からおとなしい子も多いです。
また、被捕食者のため、自分の具合が悪いことを体が動くギリギリまで隠す傾向があります。このため、飼い主さんが気付かないうちに病気が進行してしまい、手遅れになってしまうことが多々あります。

しかし、早期発見できれば、病気を予防できたり進行を遅らせたりすることができますし、ウサギへの負担が少ない治療で済むこともあります。

当院では、1ヶ月に1回の健康チェックと、4ヶ月に1度の詳しい検査をお勧めしています。

ウサギの健康診断ではどのようなことを行うのですか?

まずは目・鼻・歯・爪・耳・おしりまわり・肢裏などのチェックを行い、汚れがみられる場合にはきれいにします。
歯は、前歯から奥歯までチェックして、伸びすぎていたり横に伸びていたりしたらカットすることもあります。
爪も伸びすぎていると、折れたり出血したりするので短く切ります。

写真:前歯のチェック
写真:肢裏のチェック

また、内臓の健康状態を知るために、血液検査・レントゲン検査・超音波検査を行います。
血液検査では、貧血や炎症の有無を調べる血球算定検査や、内臓に異常がないか・どの部分に異常があるのかなどを調べる生化学検査を行うほか、乳酸値を測ることもあります。
ウサギの血液検査の項目は犬や猫に似ていますが、数値の解釈が違うので、診断できる獣医師はあまり多くありません。

ウサギを動物病院に連れて行く際に注意すべきことはありますか?

ウサギは大変ストレスを感じやすい動物で、キャリーに入れて移動するだけでも負担になってしまうことがあります。
このため、キャリーの周囲を布で覆って、少しでも落ち着いた環境を作ってあげることが大切です。

また、温度・湿度にも配慮が必要です。特に夏場はキャリーに熱がこもりやすくなるので、キャリー上部に保冷剤を入れるなど、温度管理には十分注意してください。

写真:なるべくストレスがかからないように病院へ連れてくることがポイント

キャリーには水と牧草も忘れずに入れてあげてください。
病院でウサギを出し入れする際、キャリーの上部が開くタイプのものだと扱いやすく、万が一の事故を防げます。

病気にならないためにも普段から気をつけたほうがいいことはありますか?

まずは定期的なケアと健康診断で、病気の予防・早期発見をこころがけましょう。

また、その子に合った適正な食事の量と、与える食事の質も大変重要です。
おやつは基本的にあげずに、食事と清潔な水をしっかり与えましょう。

さらに、繁殖の予定がないのであれば、去勢・避妊をしましょう。特に女の子は子宮の病気がとても多いので、早めの避妊手術をお勧めしています。

前述のようにウサギは病気を隠す動物です。元気がない・ごはんを食べないといった変化に対して「様子を見る」ことが命取りになることもあります。
「普段の様子と比べると、少し違うかも」といったちょっとした違和感を覚えたら、様子を見ずにお早めに受診してください。

【執筆者】
中田至郎(なかた・しろう)
獣医師。博士(医学)。水前寺公園ペットクリニック(熊本県熊本市、https://szpet.jp/)院長。クリニック内にウサギ専門の動物病院である「うさぎの病院(https://www.usagihospital.com/)」を併設。ウサギ分野での学会発表や専門誌への寄稿など、獣医師に向けたウサギの診療技術向上活動もおこなっている。日本獣医エキゾチック動物学会(理事)、九州エキゾチック動物臨床研究会(会長)、日本獣医腎泌尿器学会(認定医)、日本獣医皮膚科学会、麻酔外科学会、熊本臨床獣医師研究会に所属。(一社)日本国際動物救命救急協会が正式認定するエキゾチックペットセーバーインストラクター(指導者認定)の資格を所有。

【編集協力】
柴山淑子