愛鳥の健康診断について

多くの人は毎年健康診断を受けて、体重のチェックや内臓の病気の有無を医師からアドバイスされます。
では、皆さんが飼っている愛鳥はどうでしょうか?
鳥はしゃべることができませんし、体に異常があっても元気にふるまってしまうことが多くあります。
そのため、獣医師が健康をチェックする健康診断がとても重要になります。
愛鳥の健康診断は、年に2~3回程度受けることをおすすめします。
健康診断において必要な項目は、鳥種、年齢などによって異なるため、獣医師に相談するのが良いでしょう。

この記事では、健康診断ではなにをするのかを解説します。

健康診断でわかること

病気の早期発見

鳥は元気そうに見えても病原体(病気を引き起こすウイルス、細菌、寄生虫など)を隠し持っていることがあります。
また、血液検査をすることで、何も症状がないように見えても、内臓に異常が見られることもあります。

日頃の生活を見直す

愛鳥の体重や状態を獣医師に見てもらうことで、健康的に過ごすためにはどうしたらいいのかアドバイスをもらえます。
与えているエサの量や質、運動量、生活習慣など助言をもらいましょう。

動物病院をみてみよう

健康診断は愛鳥のためでもあり、動物病院の雰囲気を感じるチャンスでもあります。
健康診断で動物病院に行くことで、どんな先生がいるのか、説明はわかりやすいか、どのような検査ができるのか、病気になったときに信頼できるのか、などを飼い主さんがチェックできます。
特に鳥を診察する動物病院は犬猫の動物病院と比べるとまだまだ少ないため、家の近くに愛鳥をみてくれる病院があるか確認しましょう。

健康診断では何をするの?

次に健康診断で行うことを紹介していきます。

問診

日頃の行動や困ったことなどを伝えましょう。

体重測定

愛鳥の体重を把握することはとても重要です。
獣医師から適正体重を聞いて、今の体重で過不足がないかを相談しましょう。

身体検査

眼は赤くないか、鼻水は出ていないか、くちばしは伸びていないか、おなかは腫れていないか、異常な羽はないか、心臓の音に問題はないかなどを診ていきます。

糞便検査

糞便を採取して顕微鏡で見ていきます。
マクロラブダスのような病原性のある真菌(カビ)や寄生虫がいれば、治療をします。
また、消化のチェックもしていきます。

クラミジア症の愛鳥の糞便に見られた黄色尿酸

そのう検査

「そのう」とは、食道の途中にあるエサをためておく袋状になった消化管の一部分です。
ゾンデという金属を口の中に入れて、そのう液を採取し、真菌(カビ)、寄生虫がいないか、炎症がないかをチェックしていきます。

そのう検査の様子

遺伝子検査

愛鳥の糞便や血液を採取して、感染症の病原体(ウイルスや細菌)がいないか、PCR検査をします。
遺伝子検査で検出する代表的な感染症はPBFD(オウム類嘴羽毛病)、BFD(セキセイインコのヒナ病)、クラミジア症(オウム病)などです。

X線検査

獣医師が愛鳥を保定してX線写真を撮影します。
骨や呼吸器、内臓の大きさや形に異常がないかを確認します。

獣医師の保定によるX線検査。2方向から撮影する

超音波検査

超音波プローブを愛鳥の体に当て、心臓や肝臓などの様子を診察します。

血液検査

血液を採取し、血球の数や内臓に異常がないか調べます。

愛鳥の採血の様子

鳥の代表的な病気

最後に、検査で発見することができる鳥の代表的な病気を紹介します。

マクロラブダス症

マクロラブダス(別名:メガバクテリア、AGY)という真菌(カビ)が胃炎を引き起こし、食欲不振、嘔吐、粒便、黒色便などが現れます。
糞便検査で検出します。

PBFD(オウム類嘴羽毛病)

3歳以下のオウム類に羽の変形や脱羽、免疫力の低下などを引き起こすウイルス性疾患です。
遺伝子検査で検出します。

BFD(セキセイインコのヒナ病)

羽の変形や脱羽、免疫力の低下などを引き起こすウイルス性疾患です。
成鳥は感染してもほとんど発症しませんが、幼鳥では突然死することもあります。
遺伝子検査で検出します。

鳥クラミジア症

人にも感染する感染症です。
鳥では、くしゃみ、鼻水、呼吸が荒い、下痢、尿酸の黄色変化などが現れます。
人ではインフルエンザのような症状が出ます。
遺伝子検査で検出します。

おわりに

今回は愛鳥の健康診断について、受けた方が良い理由、検査の内容と、検査で見つかる代表的な病気を紹介しました。
鳥は言葉を話せませんし、具合が悪くても元気に振る舞ってしまうため、長く健康でいてもらうためにも、健康診断は重要です。
また、記事にも書きましたが、愛鳥の診療ができる動物病院はまだまだ少ないのが現状です。いざというときに頼れる獣医師を見つける意味でも、定期的な健康診断をおすすめします。
この記事が参考になれば幸いです。

【執筆者】
寄崎まりを(きざき・まりを)
獣医師。森下小鳥病院(東京都台東区)院長。日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業後、犬猫の動物病院、横浜小鳥の病院で勤務。The bird Clinic、Broward Avian &Exotic Animal Hospitalでの研修を経て、鳥専門の動物病院を開業。愛鳥たちにとってベストな診療環境を整えている。

【編集協力】
柴山淑子