淡水性の観賞魚全般に発症する主な病気とその対策

私たち人間が風邪をひいたり色々な病気に罹ったりするのと同じように、水槽で飼育されている観賞魚もしばしば病気になります。
観賞魚の病気は体表や泳ぎ方などに変化が現れることが多いため、普段からよく観察し、見つけ次第、対策をしてあげましょう。

今回は、淡水性の観賞魚全般によく発症する3つの病気と、その対策を紹介します。

水カビ病

原因

ミズカビ病は淡水性卵菌類が原因の病気で、水温10~20 ℃でよく発症します。

症状

魚の体表や鰓(えら)に、綿状の菌糸がみられます。
急激な水温低下による低温ショックや、魚を網ですくうなどして生じたスレ(傷)が原因となることが多いようです。
また、弱った魚や他の病気に罹った魚に感染して発病することもあります(二次感染)。
原因となる淡水性卵菌類の菌糸は組織(主に筋肉)深部まで侵食するため、患部では出血や炎症などがみられ、体液が流出します。
淡水魚の場合、浸透圧調整によって体液の塩分濃度は淡水よりも濃く保たれています。
しかし、体表に傷などがあると、そこから体液が流出するだけでなく、水が体内に入ってくるため、体液が薄まり死んでしまうこともあります。
水カビ病がひどくなると、患部が広がるため、浸透圧を調整することが難しくなり、死んでしまいます。

対策

この病気の対策としては、メチレンブルーやマラカイトグリーンなどの薬剤を有効成分とする薬の投与が有効です。
ミズカビ病になった魚は浸透圧を調整することが難しい状態なので、塩水浴(0.5%)も有効です。
塩を加えて体液と飼育水の塩分濃度の差を少なくすることで、魚の負担を軽減できます。
また、原因である淡水性卵菌類は高水温に弱いので、水温を20 ℃以上に保つことも有効です(水温は時間をかけてゆっくり上げましょう)。

水カビ病のメダカ。患部に綿状の菌糸がみられる
水カビの顕微鏡写真。菌糸が多数観察される

白点病

原因

白点病は様々な魚類で発症する最も有名な病気のひとつです。
この病気は、Ichthyophthirius multifiliis という原虫が魚の体表に寄生することによって発症します。

症状

水温が20 ℃くらいのときに発生し、病気の魚は体の表面に小さな白い点が多数みられ、元気がなくなったりします。
ひどくなると、体の表面にある粘液が過剰に分泌され、赤くなって炎症を起こすこともあります。特に、この寄生虫が鰓にたくさんつくと、死に至ることもあります。
これは、魚は鰓から水中の酸素を取り入れているので、呼吸できなくなるからです。

対策

この病気の対策としては、メチレンブルーやマラカイトグリーンなどの薬剤を有効成分とする薬の投与や、塩水浴(0.5%)が有効です。
また、水温を25 ℃以上に保つことで、虫体を剥落させることができます。
いったん治癒しても、すぐに再発してしまう場合がありますので、その場合は再度薬剤による治療を行ってください。

白点病のキンギョ。体表に無数の白点がみられる。
白点虫(Ichthyophthirius multifiliis)の顕微鏡写真。

運動性エロモナス症

原因

運動性エロモナス症はAeromonas hydrophilaという細菌が原因の病気です。症状によって「赤班病」や「立鱗病」(マツカサ病)とも呼ぶことがあります。

症状

症状は環境によって異なりますが、眼球突出、腹部膨満(腹水が溜まることによってお腹が膨れる)、体表の出血・充血、肛門の発赤(腸炎による)などがみられるほか、鱗が逆立つ立鱗症状がみられます。
ひどくなると筋肉がやわらかくなって体がブヨブヨになり、遊泳力を失って死に至ります。
この病気は日和見感染症といって、健康で元気な魚で発症しませんが、体調を崩したりストレスがかかったりすると発症します。
魚は体温をコントロールできないので、水温の急激な変化がストレスになり体調を崩します。
そのため、この病気は昼夜の水温差が大きい季節の変わり目である、春や秋によく見られます。

対策

この病気の対策ですが、日和見感染症であるため、健康を維持していれば発生することはありません。
よって、日頃の管理が最も重要な対策法となります。
発生してしまった場合には、抗菌剤を含む薬剤の投与が有効です。

運動性エロモナス症(立鱗病)のニシキゴイ。眼球突出、立鱗、腹部膨満の症状がみられる

まとめ

今回は比較的よくみられる3つの病気を紹介しましたが、観賞魚も人と同じように、他にもたくさんの病気があります。
日頃の飼育管理が大切なのは言うまでもありませんが、それでも病気になってしまうことがあります。
病気の治療は早期発見・早期治療がカギとなるので、できるだけ毎日観察するようにしましょう。

【執筆】
安本信哉(やすもと・しんや)
水産大学校 生物生産学科 准教授。博士(学術)。日本動物薬品株式会社にて動物用医薬品や用品の開発に従事。その後、水産大学校生物生産学科助教に着任し現在に至る。同大学にて、養殖魚介類や観賞魚の疾病に関する研究を行っている。また、錦鯉をはじめとした観賞などの業界紙へ記事執筆も手掛けている。

【編集協力】
柴山淑子