アクアリウムをはじめよう! 最初に知っておきたいこと

アクアリウムと聞くと、多くの方は水族館を想像するのではないでしょうか。
涼しげで神秘的な水の空間を優雅に泳ぐ美しい魚たち……見ているだけで癒されますよね。
そんな水槽が自分の家にあったら毎日が少し華やかになると思います。

「魚は飼うのが難しく、すぐに死んでしまう」
「何からはじめたらいいのかわからない」

そう思って躊躇している方が多いのではないでしょうか。でも、そこで諦めてしまうのはもったいない!
確かに私たちとは違い、水中に生きる観賞魚たちを飼うのは簡単なことではありません。
しかし、いくつかのポイントを押さえるだけでグッと飼育がしやすくなります。

今回はアクアリウムの良さを多くの方に知ってもらえるように、なるべく簡単なご家庭での観賞魚の飼育法をお伝えします。

必要な道具を揃えよう

アクアリウムをはじめる際に必要な道具たち

水槽

水槽には多くの種類やサイズがあり、選ぶ基準も様々ありますが、そのなかでも一番に考えなければいけないことが、飼育する観賞魚の大きさです。

お店などで売られている種類の多くは、人間でいえば子どもくらいの大きさであり、成長していくなかで水槽が狭くなってしまうことがあります。

基本的には大きい水槽の方が飼育はしやすくなります。それは水量が多い方が、水が汚れにくく、観賞魚へのストレスも少ないからです。

もし、飼ってみたい観賞魚の種類が決まっているのであれば、その観賞魚がどのくらい大きくなるのかを調べ、設置するスペースと相談して考えるのが良いでしょう。

フィルター

フィルターには、いくつかの役割があります。

名前のイメージ通り、物理的に汚れを取る機能に加え、水を動かすことで水槽内への酸素供給と観賞魚のフン(アンモニア)などを分解し毒性を低くする役割があります。

フィルターは、アクアリウムにおいてライフラインと言っても過言ではないほど大切な道具です。
水槽のなかに設置するもの、水槽の上やフチに設置するものなど、フィルターにも数多く種類があります。

ただし、基本的な構造は同じで、ポンプで水を吸い上げ、ろ過層を通った水が水槽に戻る過程で、水を綺麗にする仕組みになっています。
ろ過層の大きさが浄化能力に比例するので、使用する水槽に合った規格のものを選ぶのが良いでしょう。

ヒーター

一般的に、アクアリウムで飼育される観賞魚たちは海外の生き物であり、日本の冬や季節の変化による寒暖差への耐性がありません。
そのため、飼育にはヒーターが必要です。

ヒーターは大きく別けて2種類あり、多くの熱帯魚の飼育に適した水温の26 ℃に合わせて作動する「オートヒーター」と呼ばれるものと、設定した水温に合わせて作動する「サーモスタット式ヒーター」と呼ばれるものがあります。
室内で飼育する場合にも、人がいる時とそうでない時の空調による急激な寒暖差が観賞魚のストレスになるので、ヒーターは必ず設置するようにしましょう。

ただし、1つ注意しなければいけないことが、ヒーターには水温を下げる効果はないということ。夏場の高水温は要注意です。

ライト

ライトは観賞魚を綺麗に観賞できるほか、決まった時間に点灯することで、観賞魚の生活サイクルを作り、健康維持に大きく役立ちます。

色やデザインなど様々な種類がありますが、水槽の大きさや水槽内に入れる観賞魚などを基準に選ぶと良いでしょう。

水槽台

水槽は小型のものでもかなりの重さがあり、専用の水槽台を設置する必要があります。

くつ箱の上や棚の上などに設置をしてしまうと、棚が変形する可能性があり、最悪の場合には水槽自体が割れてしまうこともあります。
必ず適応サイズの専用水槽台を使用するようにしましょう。

底砂

底砂にもいくつか種類があります。大きく言えば、水の浄化作用や飼育に適した水作りなどのサポートをする道具です。
底砂を入れない飼育方法もありますが、使用をするメリットは大きく、特に初めて飼育する場合には必ず使用するようにしましょう。

ただし、底砂は水質に大きく影響を与えるので、飼育する観賞魚に合った底砂選びが大切です。

その他

飼育を始めるうえで最低限必要な道具類は以上ですが、ほかにも水質を調整するコンディショナーや、水槽内を彩るアクセサリー類など、アクアリウムをサポートする商品は数多くあります。
かゆい所に手の届く便利な商品が多くあり、見ているだけでも面白いので、お店で実際に見てみるとイメージしやすいと思います。
その他にあると便利な道具類も簡単に紹介していきます。

・観賞魚用ネット…観賞魚の移動に便利、水槽のゴミなどの回収にも。

・カルキ抜き…水道水に含まれる塩素の中和や観賞魚に適した水作りのサポートに。

・バケツ…底砂の掃除や水換え時に。10 Lくらいのものが良いでしょう。

・水換え用ホース…水換え時にゴミと水を吸い出すのに便利。

観賞魚を迎える前に水槽を準備しよう

いま挙げた道具を実際に使って、アクアリウムをはじめましょう。

まず、初めに注意することが、水槽の準備と観賞魚を入れるタイミングです。
基本的に道具類を先に購入し、設置をしたら、2週間ほど時間を空けることが大切です。
これはフィルターの効果が出るまでに少し時間が掛かるためです。早く観賞魚を入れたくなる気持ちはわかりますがここはグッと我慢しましょう。

お店で上記の商品を揃えたら、水槽を設置する場所を決めましょう。
設置場所で一番注意すべき点は太陽光です。
太陽光が直接当たるところに設置してしまうと、水槽や器具類の劣化、大幅な水温上昇などが起こる危険があります。
たとえガラス越しでも、直射日光に当たらない位置に設置することが大切です。

場所を決めたら水槽台を置き、水槽とフィルターを設置します。
故障の原因になるので、フィルターの電源は水を入れてからにしましょう。

次に底砂を洗い、水槽内に敷きます。バケツなどに砂を移し、水道水を注いで、お米を研ぐイメージで洗いましょう。
ソイルと呼ばれる砂など、底砂の種類によっては洗う必要のないものもあるので、必ず商品説明を確認しましょう。

底砂を敷いたら、流木や石などのアクセサリーを設置します。
これらのアクセサリー類にも、水質や観賞魚に良い影響をもたらすものが多くあります。
観賞魚との相性があるので、店員さんに飼育する観賞魚を伝え、確認すると安心です。

水を張る際には、水流で底砂やアクセサリーや巻き上がらないよう注意し、水を張り終えたらカルキ抜きを必ず入れる様にしましょう。

フィルターやヒーター類の電源を入れ、観賞魚を導入できる状態にしたら、2週間ほど時間を置きましょう。

観賞魚を水槽に入れよう

観賞魚を水槽に入れるまでにはいくつかの手順があります。

家の水槽とお店の水槽には環境の差があり、いきなり家の水槽に入れてしまうと、観賞魚に強いストレスがかかってしまいます。
ストレスの原因はいくつかあり、水温や水質の急激な変化が主な要因となります。
お店で観賞魚を購入すると、酸素を入れてパッキングしてもらえます。

購入後にパッキングされた観賞魚

パッキングの酸素は1日ほど持ちますが、なるべく早く持ち帰るようにしましょう。
最初はパッキングの状態で封を開けずに、水槽に20分ほど浮かべ水温を合わせます。

はじめにパッキングの状態のまま水温を合わせる

次に、パッキング袋の封を開け、水槽の水を100 ㏄程入れ、10分置きます。

これを3回ほど繰り返します。
パッキング袋のなかの水が多くなりすぎる場合には、水を捨てて減らしましょう。
この作業を水合わせと呼びます。
ここで紹介した方法以外にもやり方はいくつかありますが、こちらが一番お手軽な方法なので、ぜひ一度調べてみて下さい。

水合わせが終わったら、袋の水は絶対に水槽に入れず、観賞魚のみを入れるようにしましょう。
これは観賞魚の病気には外部からの持ち込みが原因の物がいくつかあるからです。
決してお店の水が悪いという訳ではなく、リスクを避けるために外部の水槽の水は入れない方が良いということです。
また、導入直後の観賞魚は強いストレスを受けて疲れています。
観察したくなる気持ちはわかりますが、初日はライトを付けたり、餌を与えるのは控えましょう。

飼育を始めるための手順は以上になります。

迎えた観賞魚のお手入れをしよう

次は日々のメンテナンス方法を紹介します。

日々のメンテナンスは、飼育する観賞魚や使用する器具類によって変わりますが、大きくわけて餌やりと水換えがあります。

餌やり

熱帯魚の餌にはかなりの種類があり、選ぶのが難しいと思います。
内容量や値段なども重要な判断基準ですが、まず気にしなければいけないものが餌のサイズです。
「〇〇用」と観賞魚の種類が書かれていても、実際に飼育する観賞魚の大きさによっては口に入らずに食べられない可能性があります。
1つの方法として、観賞魚を購入する店舗で、実際にどんな餌を与えているのかを聞き、それに近い種類の物を与えるのも良いと思います。

使用する餌が決まったら、次は餌の与え方です。
観賞魚への餌やりは1回の量を少なく、頻度を多くが基本です。観賞魚は自分の食事量を調整することができません。
目の前に餌があれば、お腹に入るだけ食べようとします。
餌を多く食べることは良いことのように感じますが、食べ物の消化にはそれなりの労力が掛かります。そのため「1回の量は少なく、頻度を多く」です。これは飼育をするうえで大切なことなので、必ず押さえておきましょう。
1匹あたり1日に与える餌の量は、その観賞魚の頭の体積が目安と言われています。
この量を可能な限り複数回に分けて与えるようにしましょう。
ただし、これはあくまで目安なので、実際に与えた時の観賞魚の反応などを見て判断するのが良いでしょう。
また、多くの餌の説明にあるように、2〜3分程で食べきれるかどうかなどを基準にするのも良いと思います。
さらに、餌を周りの観賞魚に取られて食べられていない子がいないかや、餌が残ったりしていないかも気にしながら量を調節していくことが大切です。

水換え

水換えはアクアリウムを維持するにあたって、一番と言っても過言ではない程大切なことです。

観賞魚が出すフンには有毒なアンモニアが含まれますが、このアンモニアは水の中にいるバクテリアによって弱毒化された物質に変えられ、水槽外に排出されることなく蓄積されます。
弱毒化されたとはいえ、一定の濃度を超えると観賞魚にとってはストレスになるので、定期的にこの物質を外に排出する必要があります。この役割を果たすことが水換えになります。

この水換えに関しても、大切なのは頻度と量です。
1つの目安として、1週間に1度、3分の1ほどの水換えが推奨されています。

下の写真のように、水槽内の汚れを吸い取りながら水換えを行います。

水換えの様子

こちらに関しても、餌やりと同様に極端な量や頻度は観賞魚にとってストレスになるので、なるべく一定の周期を保って行う事が大切です。

観賞魚の病気や不調

最後に、観賞魚の病気や不調について説明します。

日々の飼育において、観賞魚に異変が起きてしまうことがあります。
変化として、見た目に出るのが泳ぎ方や観賞魚の体の表面です。
餌を食べている時が観賞魚を一番観察しやすいタイミングなので、毎日チェックしてあげましょう。
病気などの不調は、飼育を続けていくなかで避けては通れません。
異変を感じたら慌てずに、素早く対処することが大切です。
インターネットや書籍などで調べることもできますが、購入したお店に行き、直接聞くことをオススメします。
その際には水槽全体と、観賞魚の画像を用意してから行くと解決しやすいと思います。

さいごに

以上がアクアリウムをはじめるうえで必要な話になりますが、上記はあくまでも一例であり、水槽や飼育する種類ごとに違いがあります。
今回は基本的なことを中心に紹介しましたが、アクアリウムは奥が深く、ここでは説明しきれないことも沢山あります。
難しいイメージが先行しがちな趣味ではありますが、試行錯誤していくなかで得られる喜びは格別だと思います。
自分で作った小さな自然のなかで観賞魚たちが元気に泳ぐ姿は見ているだけで癒されるものです。
ぜひ自分だけの水槽の世界を作ってみてください!

自分だけのアクアリウムを楽しもう!

【執筆】
緒方 航平(おがた・こうへい)
東京都府中市出身。家の近くを流れる多摩川での生体採集をきっかけに観賞魚の飼育に興味を持つ。学生時代はアクアリウムショップにてアルバイトとして勤務。アクアリウム関係の学校を卒業後、観賞魚の卸問屋である株式会社ジャパンペットコミュニケーションズに就職し現在に至る。

【編集協力】
柴山淑子