はっけん! 日本の爬虫類・両生類【第13回】コガタブチサンショウウオ

Hynobius stejnegeri(Dunn,1923)

私が両生類の写真を撮りはじめた頃、日本には20種ほどのサンショウウオが知られる程度でした。
2000年代になって一気に遺伝学的な解析が進むと、これまで同種だと思われていた種が別種になるという例が増え、2倍近い種が記載されていきました。

今回紹介するコガタブチサンショウウオも、細分化された種のひとつです。 

コガタブチサンショウウオが種と認められるまで

当初、「ブチサンショウウオ」と呼ばれていた種は、体の大きさによって、大小異なる2つの系統に細分化されました。

このとき、体の大きな集団はブチサンショウウオ(現在は、チュウゴクブチサンショウウオ、チクシブチサンショウウオ、ブチサンショウウオ)、体の小さな集団はコガタブチサンショウウオとされました。

コガタブチサンショウウオはさらに細分化され、マホロバサンショウウオ、イヨシマサンショウウオ、ツルギサンショウウオ、そして、コガタブチサンショウウオとなりました。

コガタブチサンショウウオの横顔

このように細分化されたことで、コガタブチサンショウウオは九州に分布する集団のみを指すことになりました。
ブチサンショウウオと呼ばれていた時代から考えると、分布域が一気に小さくなりました。

湿り気のある暗い場所でひっそり暮らす

コガタブチサンショウウオは通常、山地、森林の渓流沿いに暮らしていますが、水中で見つかることはまずありません。
主なすみかのひとつに、斜面の石がゴロゴロしている場所や倒木の下などがあり、湿り気のある暗い場所でひっそりと暮らしています。

コガタブチサンショウウオの成体

個体数は少なくないのですが、実はあまり詳しく繁殖生態がわかっていません。
それは、繁殖が伏流水の中で行われていることと、幼生もそのような環境で暮らしているため、人目に触れないからです。
卵が見つかった例も数例しかありません。
幼体になると、次は性成熟するまでは陸上生活を行い、水辺にはほとんど近寄りません。

コガタブチサンショウウオの幼体

ただ、分布が九州だけになったことや伏流水という特殊な繁殖環境が必要なことから、九州の中でも生息環境は限られていることはわかっています。
ひっそりと暮らしてきた本種がいつまでも九州の地で生き残ってくれることを願っています。
また会いに行きたいな!

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(カナヘビ、ニホンヤモリ、ニホンイシガメ、オオサンショウウオ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、イモリ、トカゲ、小型サンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。

【編集協力】
柴山淑子