フォトエッセイ:海外の牧場をめぐる風景【第3回】ヒツジやヤギだけではないコッツウォルドファームパーク

連載2回目では、コッツウォルドファームパークのヒツジとヤギの写真を紹介しました。
今回は、ヒツジやヤギだけではない当農場の魅力的な動物たちを紹介します。

印象的だった動物たち

観光牧場といえば、ウシやヒツジなどの反芻動物が主役になることが多いですが、コッツウォルドファームパークには、たくさんの家禽(家畜化された鳥類)やウサギも飼育展示されています。

筆者は、大学でニワトリの行動を研究し、現在もニワトリの行動およびアニマルウェルフェアを専門にしているので、特にニワトリに思い入れがあります。

寒い季節になり、インフルエンザの予防接種が始まる今日この頃ですが、人だけではなくニワトリなどの家禽も、鳥インフルエンザへの感染が心配です。
当然ですが、鳥インフルエンザのウイルスは動物園や観光牧場の鳥類にも感染します。そのため、動物園や観光牧場でも、渡り鳥の季節になる冬期は展示・公開を休止しているところがほとんどです。10月下旬から4月下旬頃までは、鳥類の展示を見られないことが多いと思われますのでご注意ください(コッツウォルドファームパークでの家禽展示期間についてはHP等でご確認ください)。

コッツウォルドファームパークの鶏たち

ニワトリは、東アジアに生息するセキショクヤケイという野生動物から家畜化された家禽で、非常に多くの品種が存在します。日本でも趣味の鶏飼育が盛んに行われていますが、イギリスでも多くの愛好家がいるようです。私の手元に「British Poultry Standards (5th Edition)」(Victoria Roberts著,1997,Wiley-Blackwell社)というイギリスの家禽の標準を解説する書籍があるのですが、鶏だけでも約80品種が掲載され、この中には日本原産の鶏も紹介されています。
当農場では、他の家畜と同じく訪問するたびに展示されている品種が変更されていることがありますが、日本ではあまり見かけない非常に大きな鶏が目を引きます。ここでは、ほとんどの家禽が1羽の雄と数羽の雌で飼育されています。これは、祖先種であるセキショクヤケイも1~2羽の雄と、4~6羽程度の雌で生活していることから、ニワトリの最適な飼育法として知られているからでしょう。

ニワトリは、他の家畜以上に色のバリエーションが多い家畜です。当農場で飼育されているウェルサマー種 やブラーマ種は、「赤笹色」といって、鶏の祖先種であるセキショクヤケイに近い色合いで、卵を温めているときは保護色になると言われています。一方で、ライトサセックス種は白地に黒の襟巻模様が特徴で、人気の鶏です。また、足にまで羽毛が生えている品種もあり、毛色だけでなく形状にもいろいろな特徴があります。

また、アヒルやガチョウも、これほどたくさんの品種がいるのかと感心します。

ちなみに前述の「British Poultry Standards」には、ガチョウは15種、アヒルは24種が掲載されています。お尻をフリフリと振って歩く姿は見ていて飽きません。
ウサギは、室内で品種ごとに飼育されていますが、ウサギ飼育に適した床材が使われていることや、適切な飼育密度が守られていることなど、アニマルウェルフェアにも配慮されています。

【文・写真】
伊藤秀一(いとう・しゅういち)
東海大学農学部動物科学科教授、家畜写真家。1972年東京都生まれ。麻布大学獣医学部環境畜産学科卒業後、麻布大学博士課程修了。北海農業研究センターなどの研究所での勤務を経て、現在は熊本県の東海大学農学部で農用動物と動物園動物の行動およびアニマルウェルフェアを研究している。2019年に1年間、スコットランド農業大学 動物行動学・福祉学チームへ留学。著書に『まきばなかま』(東海教育研究所)、『動物福祉学』(共著、昭和堂)、『動物行動図説』(共著、朝倉書店)、『畜産』(共著、実教出版)など。