ハムスターは、その小さな体と愛らしい仕草で大人気のペットですが、健康に育てるためには、餌に課題がありました。ひまわりの種やナッツ、乾燥フルーツなどのおやつ類が大好きで、これらを与えると食べてくれますが、それだけでは栄養バランスが偏ってしまいます。
ペレットフードは栄養バランスに優れていますが、ハムスターがあまり食べてくれませんでした。しかし、飼育者はハムスターが喜んでくれるフードを必要としています。
そこで今回は、これらの課題をクリアしたハムスター用フードが、どのようにして開発されたのかをご紹介します。
ハムスターが本当に食べたいものを知る
ハムスターが好む原料を模索することが最初のステップです。
ハムスターが「これが好き!」と言葉で教えてくれるわけではありませんので、ハムスターの食べたいものを判別する試験方法の開発からスタートしました。
先入観を持たないよう注意し、様々な原料を試した結果、いくつかの原料がハムスターを惹きつけることが分かりました。
例えば、野生のハムスターが昆虫を食べているせいか、ミルワームを本能的に好むようです。
栄養バランスと嗜好性のジレンマ
ハムスターが好む原料が判明したので、その原料を使いながら、必要な栄養を満たすレシピの検討に入りました。ところが、この工程が思いのほか難しく、ハムスターが喜んで食べるレシピと、栄養バランスが取れているレシピが一致しないというジレンマに直面しました。
例えば、ミルワームやフルーツなどの原料を増やすと、食いつきは良くなるものの、栄養バランスに偏りが出てしまいます。一方で、栄養バランスを重視すると、ハムスターの食いつきは悪くなりました。健康に育てるためのペレットフードを開発するはずが、おやつに近い栄養バランスのものを開発しては意味がありません。
試行錯誤の末に、栄養と嗜好性を兼ね備えたレシピを完成させることができました。
食感の重要性
開発が進むにつれて、ハムスターの嗜好性は「食感」に左右されることに気がつきました。カリカリ、サクサク、しっとり……と、微妙な固さや食感が、ハムスターの食欲に大きな影響を与えていることが分かりました。
開発チームは、さまざまな食感のペレットフードを作り、どれを最も好むかテストしました。カリカリとした歯ごたえを重視するハムスターもいれば、サクサクした軽い食感を好む個体もいます。同じレシピでも、作るときの温度や圧力で食感が変わります。当社の場合は、自社工場を持っているという強みを生かして、試作を繰り返しました。
最終的に「サクサクぎみのカリカリ」の食感をハムスターが好んで食べるという結論に至りました。
最適な粒の形状
ハムスターは餌を手でつまんで食べるため、粒の太さや形状が重要です。試作していく中で、手で持ちやすい細長い粒を作ることが最適であると判断しました。この形状であれば、餌をしっかりと持って食べることができ、食べ残しが減ることが分かりました。
また、飼い主が手渡しで餌をあげることを考慮し、手渡ししやすい大きさに調整しました。
生産用量産機での最終調整
ペレット生産用の量産機は、圧力やパワーが試作機とはケタ違いです。試作機で作ったものとは異なった食感や味になる可能性があり、量産機でも同じものを作れるのか、ドキドキの瞬間でした。
量産機で試作したペレットフードを、ヒマワリの種や他のおやつと混ぜて与えてみると、ヒマワリの種と同じように食べるという結果になりました。一部の個体は、おやつよりもペレットから食べ始めるほどです。
量産機でも、試作機と同じレベルのペレットを再現でき、開発チームは大きな達成感を味わうことができました。
こうして、ハムスターがおやつと同程度に食べてくれる栄養バランスに優れたペレットフードが完成しました。
【執筆者】
株式会社キョーリン
魚類を中心に、両生類・爬虫類、小型動物、鳥類など多くの動物種が食べるフードを製造しているペットフードメーカー。
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