近年、アニメのヒットなどで再び熱い注目を浴びているモルモット。そんなモルモットと飼い主の“あるある”をユーモラスに描いた漫画「GUINEA PIG ROOM TOUR」の作者である鳩川ぬこ先生に、モルモットの魅力や漫画を描くうえでのこだわりをお聞きしました!
もっと多くの人にモルモットの魅力を知ってほしくて描いた漫画
モルモットの漫画を描いた理由を教えてください!
漫画は大人になってから、自分自身を見つめ直すためになんとなく描き始めたのですが、自分が何を好きだったのか考えた時に、最初に思い浮かんだのがモルモットでした。
紙にらくがきしていくうちに、モルモットってやっぱり変だよな……みんなクセが強かったな……あの動き面白いんだよな……と、だんだんエピソードが溢れかえってきました。
最後に飼っていたモルと死別してからモルモットを描いていなかったし、思い出すことも少なくなっていたけれど、本当はこんなに覚えていて、ずっと大好きだったんだと気付きました。
学校帰りに本屋さんのペット書籍コーナーに立ち寄っても、モルモットの本は飼育本しか置いていなくて悲しかったことも思い出しました。まだ「PUIPUIモルカー」も公開されていなくて、本棚のラインナップは寂しいままでした。
私はモルモットの本が一冊でも多く本屋さんに並んでくれればという思いで、小さなエピソードを漫画にしてpixiv(イラストや漫画の投稿サイト)に公開しました。
Pixivの漫画も拝見しました! 公開してから、どのような反響がありましたか?
モルモットに興味がない方には、動物園でじっとしているだけのイメージが強いのか「こんなに動くんですね」「鳴き声出すんですね」「性格や毛並みに個性があるんですね」と知ってもらえたようです。
モルモット好きの方からは「うちの子もこの仕草しています」「後ろ姿がそっくりです」「昔飼っていたあの子を思い出しました」と言ってもらえて、モルモットの魅力を共有できたことが嬉しかったです。
モルモットのエンタメを欲している方からは、作中にモルモットを登場させる作家さんが本当に少ないため、それだけの理由で重宝されている感じがしました。
おっしゃる通り、残念なことにモルモットのエンタメがそこまで多くないように思います…先生の作品は、そんなモルモットエンタメ不足問題に一石を投じたわけですね!
小学生の時にお迎えしたモルモットがルーツ
鳩川ぬこさんとモルモットの出会いを教えてください!
小学生の頃、友達の家で飼っている2匹のモルモットを触らせてもらったのがきっかけでした。ずんぐりボディの大きなモルたちでした。どうしてもあのかわいい生き物と一緒に暮らしたくて、反対する両親を説得しました。最終的には、モルモットのお値段が人気者のハムスターよりも安かったおかげで、私のしつこい説得に疲れた両親は折れてくれました。
お迎えしたのは、小柄なイングリッシュの女の子で、横顔が美しいモルでした。音も立てずに食事をしていたので「大人しい子なのかな?」と思っていたのですが、ある日突然「プイープイー」とけたたましく鳴き出したのでびっくりしました。
懐いて本性を現したモルは本当に面白い奴でした。駆けずり回ってポップコーンジャンプをする姿が独特で、とぼけた顔でぼーっとしているかと思ったら唐突に前に進んだり引っ込んだり、いつも奇天烈な動きばかりするので、床にのたうち回るくらい笑わせてもらいました。
あの当時は、家に帰るとモルモットばかり描いていました。用紙の山が崩れるほど描き殴っていましたが、クローゼットの服の下に隠して誰にも見せませんでした。両親が眠った真夜中に、こっそり取り出して眺めるのが楽しみでした。お気に入りの4コマ数ページは今もとってあります。
小学生から高校を卒業するまで、思春期にはずっと家にモルモットがいました。
今は動物園に行かないと触れ合えないので、スーパーの買い出しの時に、そっくりなジャガイモの前でほっこりしています。
他にも、天井裏の小動物の足音や、フローリングの床で素足がキュッと鳴った時など、気軽に触れ合えない分、日常の中にモルを連想して胸をときめかせる機会は多いです。
夢の中では“エアモル”を2匹飼っています。年に数回だけ会いに行けるのですが、いつも片方がオスだったことが判明して、増えていく子供達を育て切れずにあらゆるバッドエンドを迎えてしまうので、早めに目覚めるようにしています。
本当にモルモットがお好きなんですね! モルモットの魅力は何でしょうか?
モルモットのもったりとしたお腹は、漫画を描く時に一番テンションが上がってしまいます。
ギュッと詰め込んだような手頃なサイズ感も魅力的です。大きすぎず小さすぎず、人間の手のひらで包み込むのにちょうど良い大きさです。
臆病なのに、仲良くなると甘え上手なところも魅力的です。一緒に暮らしたモルたちは、かまってほしい時はお尻をピタッとくっつけたり、身体によじ登ってアピールしてくれました。
意思表示がハッキリしてくるところも魅力だと思います。野菜をよこせと大きな鳴き声で呼びつけたり、撫でようとする手を頭でズンッと押しのけたり、小さな草食動物が気を許した相手に見せる図太さがたまらないです。
読みたいけれど見つからない! そんな欲求不満な社会に一石を投じた「GUINEA PIG ROOM TOUR」
モルモット漫画「GUINEA PIG ROOM TOUR」と、執筆時のこだわりを教えてください!
現在、本屋さんにモル漫画を置いてもらえたことで子どもの頃の無念は晴れましたが、作品としては改善したいところばかりです。
あるあるエピソードを紹介できることに満足してしまって、漫画としての読み応えを全く考えていませんでした。1番好きなものを作品にした時に、こういう弊害もあるんだと勉強になりました。
かなり細かい部分まで「あるある」が再現されていると思いました。「ろろちゃんと小松菜」では、お迎えしてからいっこうに表に出てこないモルモットにやきもきする心情が描かれています。自分も飼い始めたときに「小屋の中で死んでしまっているのではないか?」と、とても焦ったことを思い出しました!
みどころとしては、登場人物たちがモルモットにしてしまうことに注目して欲しいです。1日中お尻を眺めたり、ケージを改造したり、ペットショップから救出したり、何かせずにはいられません。モルモットが好きだからです。
そのままの姿で登場して欲しかったため、モルモットの絵柄はデフォルメの少ないものにしました。描いている瞬間は触れているような感覚が味わえるのですが、描き終わると本物の魅力には到底敵わない仕上がりに腹が立ちます。
デフォルメされていない分、モルモットの魅力が引き出されているように感じます!
タイトルの「GUINEA PIG ROOM TOUR」は、モル動画が見たい時によく使っていた検索ワードです。海外では日本よりもモルモットのコンテンツがメジャーで羨ましいです。
SNSの向こう側でモルと暮らしている人たちを羨ましいなと眺めている、そういう視点で執筆していたため、目次ページはスマホのアプリのアイコンをモチーフにしました。
より伝わりやすいようにスマホ画面の中に目次を入れるデザインを提案したかったのですが、遠慮してしまったことを後悔しています。
ありがとうございます。最後に、この記事の読者にメッセージをお願いします!
モルモットについて語る機会を下さって、ありがとうございました。
モル漫画は今もこっそり描いていて、1人で読んでいます。今度は様々なデフォルメで描かれた、違うジャンルのモル作品が読みたくて。このまま自分1人のために描き続けるのか、また誰かに見せたくなるのか、先のことは分かりません。もし目にする機会がありましたら、暇つぶしに読んでもらえると嬉しいです。
ありがとうございました。これからの作品も楽しみにしています!
鳩川 ぬこ
作家。モルモットと人間の交流を描いた短編集「GUINEA PIG ROOM TOUR」(ヒーローズ)の他、モルモットのLINEスタンプも発売中。
pixiv…https://www.pixiv.net/users/3540646