世界を巡れ! お魚ハンター体験記【第3回】ワイルドフィッシュ(東南アジア・タイ編)

みなさんこんにちは!
本連載では、世界を巡りお魚の買い付けをしている筆者が、体験談を中心にお魚の買い付けや、出会った素敵なお魚を紹介しています。

みなさんは「ワイルドフィッシュ」という言葉をご存知でしょうか。この業界では、自然の中で採取された天然個体をそう呼んでいます。
今回は、熱帯魚王国であるタイに渡航した際に見つけた「ワイルドフィッシュ」たちをご紹介します。

ワイルドフィッシュの買い付け

日本で普段口にするお魚に旬があるのと同じく、海外でも1年間で禁漁期間や採取期間の諸事情があり、その限られた中で世界の業者と競いながら買い付けを行います。

タイには、ミャンマーやラオス、カンボジアなどの周辺国の熱帯魚が集まり、多くの魅力あるワイルドフィッシュを買い付ける事ができます。
訪問の際は、より多くのワイルドフィッシュを集めるために輸出業者や漁師、マーケットを中心に探し回ります。

現地の人は、自国のお魚をいつも見ているため当たり前のように並べますが、その中から希少価値や色彩、サイズなどの観点から良い個体を判別し、交渉をして出来る限り安く買い付けます。
生体選別の注意点として、「採集によってお魚が傷んでないか」「健康状態」「欠損や奇形が無い完品個体」をチェックしています。

時期により入手が難しいワイルドフィッシュ

アイズファイヤースネークヘッド

ミャンマー産。全長20センチメートル以上。
目元の赤いラインが特徴的で、「カブキスネークヘッド」とも呼ばれています。
採取シーズンがあり入荷は不定期です。
写真は、以前珍しい大きなサイズを入手した時のものです。

パービャウ

タイ産。全長1メートル以上。
銀光沢の体色が美しい、大型のナマズです。牙魚(きばぎょ)とも言われるお魚で、口の中に鋭い歯が生えているのが魅力の1つでもあります。肉食魚であり、魚類等を大きな口で捕食します。

淡水の名前がついた食用でお馴染みのワイルドフィッシュ

淡水カレイ

タイ産。全長20センチメートル以上。
食卓でお馴染みの本種は、水槽で飼育し観賞を楽しめます。
幼魚の流通が多く、写真のような大型サイズは珍しいです。
採集や輸送が難しいので、輸入は少ないです。

淡水アジ

タイ産。全長不明。
河口域で採取され、淡水アジとして流通しています。写真は目元の上に黒いスポットが入っているので、ギンガメアジになります。海水個体は全長1メートルほど大きくなりますが、通常、淡水個体はそこまで大きくなりません。

淡水イシモチ

タイ産。全長35センチメートル以上。
体高があり、大きな頭部が特徴的で、青みを帯びた銀光沢の体色が美しい個体です。
幼魚の輸入が多い為、写真のような大型サイズは珍しいです。
肉食魚で魚類等を捕食します。現地では食用として重宝されています。

観賞魚を代表するフグ

ミドリフグ

左:ミドリフグ幼魚 右:ミドリフグ成魚

タイ産。全長17センチメートル以上。
可愛い幼魚サイズの流通が多く、採集シーズンもあるため成魚の輸入は少ないです。
幼魚は、緑の体色に黒いスポットが特徴的ですが、成魚になるにつれスポット周辺に金色のラインが入り、更に美しくなります。
始めは小型水槽で飼育できますが、将来的には大きめの水槽が必要になります。

漁師が過去に採集した激レア種

ゴールデン淡水アンコウ

左:通常の淡水アンコウ 右:ゴールデン淡水アンコウ

タイ産。全長約20センチメートル。
漁師が過去に採集した自慢の個体として紹介されていました。
通常個体は写真のような茶色なので、美しい黄金色の色彩には驚きました。
日本に未入荷だと思われる非常に珍しい個体で、今後の入荷が望まれます。

さいごに

ここでご紹介したのはワイルドフィッシュのごく一部です。世界にはゴールデン淡水アンコウのような希少なお魚や、まだ見ぬお魚がたくさんいます。次はどんなお魚に出会えるのか、わくわくしますね!

【執筆】
榎本弘紀(えのもと・ひろのり)
株式会社ジャパンペットコミュニケーションズに所属。幼少期より、お祭りの金魚すくいをきっかけに観賞魚の飼育を初め、熱帯魚の収集、飼育から繁殖まで、観賞魚の世界に惹きつけられる。現在、国内外で新たなお魚を追い求め、観賞魚の奥の深さ・面白さを、より多くの方にご提供できるよう、チャレンジを続けている。