小鳥のように舞い、うさぎのように跳ね、光のように走り、独特な動きで敵を惑わすアンデスの妖精、チンチラ。
野生の彼らが十分に覚醒している深夜から早朝にその姿を見たら、それが何の動物かを瞬時に判断することはとても難しいでしょう。
本記事では、そんな神秘的で美しく、運動神経も抜群、頭脳明晰で明朗活発なチンチラと暮らすためのアドバイスを写真とともにご紹介します。
SNSの発達とともに
数年前までの日本では、「チンチラ」は猫やうさぎのなかまと理解されており、齧歯類に「チンチラ」という動物が存在していることすら知られていなかったのです。
しかし、ここ数年でチンチラの知名度と存在感は急上昇しました。
その大きな要因は、さまざまな種類のSNSが普及し、チンチラを心から愛している飼い主さんたちが、そのあらゆる魅力を簡単に発信、拡散できるようになったからです。
そして、コロナ禍のペットブーム時には、全国のペットショップに他の動物と共に展示されるようになりました。
この事実には良い側面も悪い側面もありましたが、実物が展示されることが少なかったチンチラにとって、知名度と人気上昇につながったことは間違いありません。
実際のチンチラは、SNS上で眺めていた彼らとはケタ違いにフワフワでかわいらしく、触ってみるとあまりの毛の柔らかさに体をのけぞってしまう人がいるくらいの衝撃です。
チンチラと暮らす上で注意すべきこと
1つ目に、高温多湿や寒暖差に非常に弱いことです。
四季のある日本にとって、どちらも避けられない現象です。彼らと楽しく長く暮らすには、最適な環境を整えてあげることが一番大切な要因となります。
2つ目は、うさぎよりも大きなケージが必要であることです。
チンチラの体重はだいたい500~700グラムくらいでうさぎより小さく、よく眠りもしますが、よく動き、落ち着きがありません。
3つ目に、感情の起伏が激しく、わがままで自己主張が強いことが挙げられます。楽天家であり、前向きな姿勢は素晴らしいのですが、言うことはほとんど聞いてくれないので、こちらが折れてばかりです。
しかし、そんなすべてが本当にかわいいのです。
クルクル動く丸っこい耳やつぶらな瞳、独特な鼻、ちょぼっとした口、意外と長いひげ、小さな手、すぐ内股になる細い足、ふっくらしたお腹、ツルツルな背中、ふさふさとしたしっぽ。
ひげを引っ張ってきれいにしたり、小さなおててで顔を洗ったり、鼻をこすって「てやんでい」したり、1日中見ていても飽きません。
特徴的な習性:砂浴び
チンチラは、その美しい被毛を守るために、「砂浴び」を行います。これは、彼らが心から欲する快感であり、心も体も洗われる瞬間です。
彼らはもともと、寒冷乾燥地帯に生息しており、体からラノリンという油を出して乾燥から体を防ぎます。その余った油を除去し、体についた汚れや匂いを落とすために、砂浴びが必要です。また、1つの毛穴から繊細な毛が50~200本ほど生えており、それがベールのように体を覆っているため、非常に細かい砂でないと奥まで入っていくことができません。
チンチラ用として販売されているものの中でも、より細かいものを選んであげましょう。
チンチラは、1日の疲れやストレスも豪快な砂浴びで一気に軽減します。
ケージが置いてある部屋全体が砂浴びで汚れてしまうという問題がありますが、彼らにとって食事の次に大事なことなので絶対に欠かせません。
クルクル回って砂浴びしている彼らを見ていたら、あまりにかわいくて、わんこそばのように砂を足してあげたくなってしまうはずです。
さいごに
チンチラは日本の気候では暮らしにくく、わがままで、砂浴びで部屋も汚してしまいます。
多くの病気はまだ解明されておらず、チンチラを診ることができる獣医師が少ないのが現状です。
それでも、環境や食事などの必要な条件を揃えることで、20年前後一緒に暮らすことができます。
実際に、日本では20年以上生きるチンチラが増え、最高では30年以上生きています。
愛を捧げる相手とはできるだけ長く一緒にいたい。チンチラは、そんなたくさんの夢と希望を与えてくれる存在かもしれません。
【文・写真】
鈴木理恵(すずき・りえ)
チンチラ専門店「ロイヤルチンチラ」オーナー。一般社団法人日本チンチラ協会会長。著書に『チンチラ完全飼育』『チンチラ飼い始めました!』(いずれも誠文堂新光社)、『ふわっとチンチラ』(河出書房)。
HP:https://www.royalchinchilla.com/
Instagram:royalchinchilla