皆さんは、耳の先をV字にカットされた猫を見たことがありますか？
この耳は、ケガをしているわけではありません。飼い主がおらず、外で暮らす猫に対して繁殖制限（不妊・去勢手術）を施し、これ以上増えることがないことを示す証です。
猫が好きな人、苦手な人、お互いを思いやりましょう
地域猫活動とは、飼い主のいない猫のお世話をして管理することです。
猫が好きな人、苦手な人が混在している世の中で、どちらか一方の意見を中心に考えるとトラブルが起きてしまいます。
すべての人と猫が共存する優しい地域づくりを目指すのが地域猫活動の考え方です。
地域猫活動に対して、「自然の摂理に反する」などの反対意見をいただくことがありますが、何もせずに外で暮らす猫や生まれた仔猫をすべて幸せにできるのであれば、この活動は必要ありません。
しかし、現実では手を打たなければ高い繁殖能力により猫が増えすぎてしまい、殺処分や交通事故の増加につながっていきます。猫が増えれば、庭を荒らされたり、糞尿の被害も増えて、より一層猫と人間の共存が遠のいてしまいます。
環境省が発表した2022年度の調査*によると、犬や猫の殺処分数の割合は、約8割が猫となっていて、そのうちの約6割が仔猫です。殺処分や交通事故、近隣住民とのトラブルを減らし、将来的に飼い主のいない猫を無くすために行うのが地域猫活動です。
すべての猫を幸せにすることがベストと考えるのであれば、この活動はベターな方法であると考えています。
外で暮らす飼い主のいない猫を減らすという意味では、猫が苦手な人のためのものでもあります。「活動をしていたら猫が苦手な人から怒鳴られた」、「時間帯に配慮して活動していたけれど苦情を受けた」、「警戒心のなくなった猫が虐待されていた」など、よく耳にします。外で必死に暮らしている猫は勿論ですが、活動をしている方々にも優しく接してほしいと思います。
一方で、すでに地域猫活動をしている方々にもお願いがあります。繁殖制限・健康管理や規則正しいエサやり、トイレの設置と掃除まで行い、管理するのが地域猫活動です。無責任なエサやりは地域猫活動ではありません。トラブルの元となりますので控えましょう。
そして、地域猫活動に対して反対意見を持つ方々へしっかり説明ができるようにしてください。理解を示してもらえるようにすることも、大切な活動の一つです。
猫をすでに飼っている方々は、室内飼育の徹底をお願いします。外でケガをしたり、病気をもらってしまうこともあります。
また、猫は繁殖力がとても強い動物です。多頭飼育崩壊が起こる恐れもあるので、繁殖制限を施すよう努めましょう。
地域猫活動の進め方
みんなで協力しましょう
区役所や市役所など、行政と連携をとることが大切です。また、猫が好きな人だけではなく、迷惑を訴えている人にも説明をして協力を呼びかけましょう。
現状を把握しましょう
猫に対する苦情はなぜ起きているのか？ その地域にいる猫の数は？ 猫の健康状態は？ 活動に参加している人数は？ など、活動をする理由を明確にしたり、猫の管理を怠らないようにしましょう。
地域猫活動のルールを決める
活動する方針（ルール）を決めて、意見を交換することも重要です。
飼い主のいない「野良猫」から「地域猫」として、今住んでいる環境の中で出来るだけ快適に過ごせるようにしてあげましょう。
下記に最低限のルールを挙げるので、参考にしてみてください。
・不妊・去勢手術を施す
・手術をした猫の耳にＶ字カットを入れる
・置きエサをしない
・トイレを設置する
それぞれの立場の人と話し合いましょう
猫が好きな人や苦手な人、地域猫活動に賛成の人、反対の人、協力してくれている行政と定期的に話し合うことが大切です。
活動報告や、活動の効果など、お互いに活動への理解を深められるように心がけてください。
ここで述べた猫たちは、野生動物ではありません。人間が人間のために取り込んだ動物です。人間が起こした問題は、人間が解決できるはずです。
地域猫や地域猫活動への理解が深まり、活動がしやすく、幸せな猫たちが増えることを願っています。
*統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」、環境省
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html
※もっと詳しく知りたい場合は協会HP「地域猫について」をご覧ください。
https://jspca.or.jp/localcat.html
※すでに活動されている方、活動を始めてみようという方は「地域猫相談室」をご覧ください。
https://jspca.or.jp/localcat_faq.html
※その他、冊子も配布していますので、お気軽にお問い合わせください。
【執筆】
廣瀬章宏（ひろせ・あきひろ）
公益財団法人 日本動物愛護協会 常任理事・事務局長。
【公益財団法人 日本動物愛護協会】
・HP…https://jspca.or.jp/
・お問い合わせ…03-3478-1886
※平日10:00～12:00 13:00～15:00
