動物業界のお仕事:ペットフードメーカーの学術担当(ロイヤルカナン ジャポン)

「いきもののわ」5月の特集では、いろいろな「動物業界のお仕事」を紹介していきます!

今回は、ペットフードメーカーの学術担当をしている大橋さんに、1日の業務や就職までの経緯、この仕事を目指す人へのアドバイスなどをお聞きしました!

展示会で来場者に説明をするロイヤルカナン ジャポンの大橋さん

朝はメールチェックから始まり、大学や動物病院の先生との連絡や資料作成、会議などを行います。社内の各ビジネスユニットへの学術サポートも担っており、質問対応や依頼業務も多くあります。外部向けセミナー資料の作成は大変ですが、様々な情報や詳細を調べることで自分の勉強にもなっています。

昼はオフィスに出勤しているメンバーとランチをとり、貴重なコミュニケーションの場となっています。午後は社内のプロジェクト会議に出席するほか、セミナーなどの業務依頼のために大学を訪問することもあります。当社のフードは種類が多岐にわたるので、各分野の専門家との連携はとても重要です。特に、KOL(キーオピニオンリーダー)との関係構築は学術担当者に求められる重要な役割となっています。
また、社内の担当部門に向けた勉強会を定期的に開催しており、外部の専門家を講師として招く場合もあれば、自ら講師を務めることもあります。

夜は、保育園に通う子どものお迎えのために決まった時間に退勤しますが、業務が期日までに間に合わないときなどは、子どもが寝た後に自宅で作業をすることもあります。

著名な先生方とお話をする機会も多く、常に新しい学びが得られます。最近は、専門分野で活躍する大学の同級生も増えてきて、一緒に仕事をすることも楽しみの一つです。グローバル企業のため、本社や他国のメンバーとの英語での情報共有も活発で、国際的な視点を学べる機会も豊富です。また、海外学会への参加もサポートしてもらえるので、昨年はACVIM(米国獣医内科学会)に参加し、世界で活躍する先生の講義を現地で聴講することができました。各国のロイヤルカナン学術担当者や、日本から参加されていた先生方との交流も深まりました。

アメリカ ミネアポリスで開催されたACVIMに参加

e-learningサイトのコンテンツ制作・運営、また外部専門家と協力したフード試験の実施やサポートなど、業務が多岐にわたるのも面白いところです。実施したセミナーや企画に関するアンケート調査などを通じて、獣医師や愛玩動物看護師、ブリーダーから感謝のコメントをいただくと、とてもやりがいを感じます。

幼少期に、よく動物園や水族館に連れて行ってもらったことで、動物が大好きでした。加えて、中学生の頃に猫を初めて飼ったこともひとつのきっかけです。「専門資格を持って自立して働きたい」という思いもあり、獣医師はまさに理想的な進路でした。大学卒業後は、臨床獣医師として経験を積みましたが、その後のキャリアに悩む中で、自分の知識と経験を活かせる動物用医薬品メーカーの学術職に出会いました。家庭の事情でその会社を退職しましたが、再び就職先を検討する中で、多くの関係者と連携する業務や、社内外から信頼される学術の仕事に大きなやりがいを感じていたことを再認識しました。

臨床獣医師時代の大橋さん(右)

これまでの臨床獣医師としての知識・経験、ならびに製薬会社での学術の経歴を活かせる職種を探している中で、ロイヤルカナンの学術職に出会いました。臨床時代にロイヤルカナン製品を使用していたので、一定の理解はありましたが、ペットショップ向け製品については面接を受ける前に製品に関する情報収集などを行いました。

また、ロイヤルカナンの「Dog and Cat First(すべては犬と猫のために)」という理念に強く共感し、ペットフードは病気の動物だけでなく、健康な犬や猫にも貢献できるという点に大きな意義を見出し、現職に就きました。

学術職は新卒での採用があまり一般的ではありません。募集要項に臨床獣医師としての実務経験が記載されていることが多く、実際にその経験が大いに活かされていると感じます。私は動物病院で成功体験や失敗から学び、それを次にどう活かすかという視点を持って働くことが大切だと感じています。また、獣医師として常に向上心を持ち、学び続ける姿勢も求められます。

「学術」という言葉には堅い印象があるかもしれませんが、実際には高いコミュニケーション能力が必要です。他部門やKOLの先生方との連携が多いため、社内外含め様々な職種の人と関わることが得意な方やいろいろな人たちと一緒に働くことが好きな方に向いていると考えます。

イベントはペットオーナーと直接コミュニケーションをとる貴重な機会

また、特定分野の専門知識をもっている方は、その分野の製品やサービスを展開する企業にとって魅力的な人材となる可能性が高いと思います。さらに、外資系企業では本社や海外の同僚との連携が多いため、英語力も求められる場面が少なくありません。英語への抵抗をなくしておくことも、キャリアの選択肢を広げるうえで有効です。獣医療分野で自分の専門知識を活かし、幅広く活躍してみたいと考える方は、ぜひ目指してみてください。

大橋麻里奈(おおはし・まりな)
ロイヤルカナン ジャポン合同会社 サイエンティフィックコミュニケーション&アカデミックアフェアーズ
ホームページ:https://royalcanin.jp/