フォトエッセイ  犬と人が織りなす文化の香り【第14回】南フランス(セナンク修道院)

南フランスに魅せられて2度目の旅をしに、前回とは別のルートで向かいました。コート・ダジュール空港からニースの街に向かい、TGV(高速鉄道)でアヴィニョンTGV駅まで約3時間で到着しました。アヴィニョンに滞在しながら電車やバス、車を使って村を巡りました。

「フランスの最も美しい村」に登録されているGordes(ゴルド)まで、アヴィニョンから約40キロメートル。そのゴルド村から4キロメートルほどのところにあるセナンク修道院を訪れました。修道院はセナンコル川が流れる渓谷にあり、ラベンダー畑が前面に広がっています。

ひっそりと佇むこの修道院は、1148年に創設され、1150年より修道院になったそうです。厳格な規律で守られた生活をしていることで知られるシトー会派の修道院で、現在も修道士達が生活しています。

ラベンダーの爽やかな香りが漂いはじめる6月下旬、フランス国内外からバカンスで訪れる観光客がたくさんいました。もちろん、家族の一員である犬たちも一緒です。
大きな白い犬を連れた少年が、ラベンダー畑に歩いてきました。少年と犬はあとから来る家族たちを待っている様子でした。犬の躾がしっかりとできているのでしょうか。少年よりも大きな犬にもかかわらず、彼の凛とした姿勢とリードを手首にしっかり巻いて持っている姿には感心させられました。

続いてフリーにされた黒いラブラドール・レトリバーがやってきました。穏やかな顔をして、飼い主との距離3メートルあたりで一緒に歩いていました。

そんな姿を見ながら修道院の入口に着くと、1枚のイラストが目に留まりました。
聖フランチェスコが犬に「ごめんね、兄弟犬、外にいてね」と伝えているイラストです。

彼は、動物にも人間と同じように神の愛が宿っていると考えていたため、動物を兄弟のように扱いました。しかし、このイラストは、何らかの理由で犬を外に出さなければならない状況が描かれており、そのことに対して聖フランチェスコが申し訳なく思っている様子が表現されています。
この村で穏やかな時間を過ごし、イラストの意味を知ったことで、人にも犬に対しても温かい気持ちになりました。

【写真・文】
蜂巣文香(はちす・あやこ)
写真家。犬、猫、コンパニオンバードなどのペット写真をはじめ、手仕事やライフスタイルなどさまざまな分野で“伝わる”写真を日々撮影している。広告や雑誌、書籍、WEBなど幅広く活躍中。欧米を中心とした海外での撮影経験も豊富。愛犬雑誌「Wan」(緑書房)でもおなじみのカメラマンで、柴犬をモチーフにしたカレンダーシリーズ「しばいぬ(卓上)」「日本の柴犬(壁掛け)」「黒柴(壁掛け)」(緑書房)も毎年好評を博している。
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