『日本のいきものビジュアルガイド はっけん! スッポン』発刊

緑書房ではこのたび、『日本のいきものビジュアルガイド はっけん! スッポン』(関慎太郎 写真、亀崎直樹 編著)を発刊しました。制作を担当した編集者より、本書のおすすめポイントを簡単に紹介します。

謎多きカメ「スッポン」

皆さんは野生のスッポンを見たことはありますか?

スッポンはカメの仲間で、川や池といった比較的身近な場所に生息しています。古くから食用とされ、「すっぽん鍋」といった高級料理の材料として漁が盛んな時代もありました。

しかし、警戒心が強く、普段は水底の砂などに潜っているため、野生のスッポンを見つけるのはなかなか難しいそうです。こういった事情もあり、スッポンについての研究はなかなか進んでいないようです。スッポンがどこでどう暮らし、いつどのように交尾して産卵しているのかといった基本的な生態についても、研究の余地が大きいとされています。また、日本に古くからいるニホンスッポンのルーツについても分かっていないそうです。分類学的な領域も、研究すべきことがたくさんあるということです。

水底から顔を出すスッポン

現在、食用として大陸から輸入されたチュウゴクスッポンが養殖場から逃げ出し、日本各地で定着しています。ニホンスッポンとチュウゴクスッポンは見分けることが難しく、交雑も進んでいるようです。そのため、生物種としての遺伝的独自性を守っていくための取り組みも重要でしょう。

ニホンスッポン
チュウゴクスッポン

本書は、まだまだ謎多きスッポンについて、ニホンスッポンを中心にまとめた一冊です。カメ類の研究者たちが、今分かっているニホンスッポンの暮らしやルーツについて、写真と共にやさしく解説します。また、スッポン漁やスッポン料理など、文化的な話題も取り上げています。

以下に、本書の内容の一部を簡単に紹介します。

●スッポンの暮らしを写真で紹介する「巻頭ビジュアル」
●スッポンの体の特徴的な部位を写真とともに解説する「クローズアップ」
●日本にいるスッポン2種と海外の主な種を紹介する「スッポン図鑑」
●スッポンの1年を写真とともに追う「ニホンスッポンの春夏秋冬」
●スッポンを飼育する際に必要な環境やエサ、注意点などを解説する「スッポンを飼ってみよう」
●スッポンについての素朴な疑問に答える「スッポンQ&A」
●スッポンの生態や分類、レッドリストなど基礎知識を取り上げる「今、起こっていること」
●人間との文化的な関わりを紹介する「文化・歴史のなかのスッポン」
●スッポン(カメ)研究者の仕事や、観察方法などを研究者自身が解説する「研究者からのメッセージ」「自由研究のすすめ」
●スッポンを展示している施設を紹介する「スッポンに会える施設」

【主要目次】
巻頭ビジュアル スッポンのくらし
どこにいるの? なにがいるの?
主人公の登場!
産卵のために上陸
卵が割れると……
卵から出てきた!
泳ぐ幼体
捕食する
うんち
息を吸う
ぷかーっとうかぶ

スッポンとは

クローズアップ
スッポンのからだ
スッポンのかお
スッポンのあし
オスとメスのちがい
スッポンの幼体
スッポンの成長

スッポン図鑑
ニホンスッポン
チュウゴクスッポン
キタインドハコスッポン
ビルマハコスッポン
ジャワオオスッポン
フロリダスッポン
ガルフコーストスベスッポン
リーススッポン
タイコガシラスッポン
ヒラタスッポン
ミヤビスッポン
カントールマルスッポン

ニホンスッポンの春夏秋冬
春の訪れ
水中を移動する
産卵場所にあらわれたメス
産卵するメス
産み落とされた卵
卵がねらわれる
夏の訪れ
孵化1
孵化2
生まれたばかりの子スッポン
野生の子スッポン
魚と出会い、おどろいてもぐる
泳ぐ
秋の訪れ
子スッポンの捕食
子スッポンの日光浴
成体も日光浴
冬の訪れ
スッポンとともに

スッポンを飼ってみよう
飼育をはじめる前に
1. 環境をととのえよう
2. エサをあげよう
3. 掃除と水換え
4. 冬場の飼い方
5. 繁殖をさせてみよう
6. 注意すること

とことんスッポン

スッポンQ&A

今、起こっていること
スッポン類の分類解説
スッポンの生態は、わからないことだらけ
スッポン漁の歴史とモンドリ漁
徳島県で発見された世界最古のアドクス化石
ニホンスッポンのレッドリスト

文化・歴史のなかのスッポン
スッポンのいろいろな呼び方
みんなもよく知るあのフレーズ、月と……?
田んぼのいきものとして描かれたスッポン
食材としてのスッポンの歴史
郷土料理との深い関係
華麗な舞台を支える「スッポン」?
宝物になったスッポン
「スッポン」の名がつくエトセトラ

研究者からのメッセージ
スッポンの世界をのぞく

自由研究のすすめ
①スッポンは研究ネタの宝庫!
②骨格から読み解くスッポンらしさのひみつ

スッポンに会える施設
①番匠おさかな館
②やながわ有明海水族館
③島根県立宍道湖自然館ゴビウス
④栃木県なかがわ水遊園

スッポンを探究する大学
①岡山理科大学
②帝京科学大学

【写真】
関 慎太郎(せき しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家。日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生き物の生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府の水族館立ち上げに関わる。本書のシリーズ『日本のいきものビジュアルガイド はっけん! ニホンヤモリ』『同 ニホンイシガメ』『同 オオサンショウウオ』『同 ニホンアマガエル』『同 オタマジャクシ』『同 イモリ』『同 トカゲ』『同 小型サンショウウオ』『同 カナヘビ』や『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ!田んぼのいきもの』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。

【編著】
亀崎直樹(かめざき・なおき)
元岡山理科大学生物地球学部教授
1956年愛知県生まれ。1997年京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。神戸市立須磨海浜水族園園長、NPO法人日本ウミガメ協議会会長などを経て2014年から2025年3月まで岡山理科大学教授。ウミガメ研究の第一人者として知られる。主な著書に、『新日本両生爬虫類図鑑』(共著、サンライズ出版)、『新博物館園論』(共著、同成社)、『これからの爬虫類学』(共著、裳華房)など。

※略歴は出版時の情報です。

【本書概要】
・書名:日本のいきものビジュアルガイド はっけん! スッポン
・写真:関 慎太郎
・編著:亀崎直樹
・発行:緑書房
・体裁:A5判 160頁 オールカラー
・定価:2,420円 (本体2,200円)
・発売日:2025年5月30日
・ISBN978-4-86811-012-5

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