Pelodiscus japonicus (Temminck et Schlegel, 1838)
昨年は、ニホンスッポンを追いかけた一年でした。これまでに何度も出会っているのですが、なかなかうまく写真に収めることが出来ていませんでした。

ニホンスッポンの警戒心はとても高く、人影が少しでも見えるともう姿を見せてくれません。幾度となくチャレンジしているのですが、日光浴をしている様子が撮れていませんでした。
しかし、奈良での取材で有名な池のほとりを一周していると、浮かぶ倒木の上で巨大ニホンスッポンが日光浴をしているではないですか! 急いでカメラを取り出しパシャ!
背景には某有名なコーヒーショップが写っていますがラッキーな出会いでした。

ニホンスッポンのレアシーンを求めて
あまり知られていませんが、琵琶湖内にもニホンスッポンが生息しています。次に私が狙っているシーンは産卵です。ウミガメのように、砂浜の少し高い場所へ移動してから産卵すると言われています。どこかいい場所はないかと探していると、産卵の痕跡を見つけました。残念ながら、その卵はキツネに掘り起こされてしまっていました。
ニホンスッポンの卵の見分け方は簡単です。本州に暮らす亀の卵はだいたい細長いですが、ニホンスッポンの卵はピンポン玉のように丸い形をしています。中身を食べられていましたが、殻の残骸を見ると真ん丸でした。産卵に来る可能性が高い場所に見当をつけられたので、あとは待つだけです。巣穴に残っている卵はキツネに食べられてしまうので、家に持ち帰ることにしました。
6月の暖かい夜の琵琶湖。早くから準備をして産卵シーンを狙いましたが、一向にやってきません。何日も撮影に行きましたが、結局産卵シーンを撮ることは叶いませんでした。上陸したばかりの個体や穴を掘ろうとしていた個体、湖に帰っていく個体は見たのですが、また来年以降も懲りずに頑張ってみます……。
卵から突き出るおちょぼ口
さて、持ち帰った卵はどうやら順調に育ってくれているようです。見つけた状態と同じように、砂に埋めて湿度を保ちました。数日たったある日、卵にヒビが入っているのを確認しました。急いでカメラを構えると、ブシュッとブタ鼻が飛び出してきました! とてもかわいい!

小さな丸い卵の中に、腹筋トレーニングをするような姿勢で収まっているようです。苦しかったのか、元気にのびのび泳いでいます。お腹を見てみると、なんとオレンジ色をしています。
すくすく育って、いつの日か高い警戒心と敏捷性を手に入れ、貪欲で巨大なスッポンになってくれることを願っています。

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。
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