代わり映えしない環境がシマヘビを育む
今、身近な自然が注目されていますが、「里山」と呼ばれる人里近い環境によく似合う爬虫類としてシマヘビをあげることができます。
春先、カエルの出現に合わせて人目につくようになり、秋が過ぎると目にしなくなります。冬はしっかり冬眠をして、また春になると畔(あぜ)に出現します。この何とも代わり映えしない環境が、シマヘビたちをも育んでいるのです。
しかし、最近は畔のコンクリート化が進み、高齢化で田んぼを手放される方も多くなってきました。こうなってしまうと、生きものたちの居場所が減っていくことも考えられます。田んぼを維持することによってカエルが集まり、それを狙うヘビたちも住みつくのですが、それがなくなると……。
私がよく通う棚田では、朝から夕方まで撮影をしていると複数のシマヘビに出会うことができます。出会い方もさまざまで、ゆっくりクネクネしながら水のはられた田んぼを泳いでいたり、畔でとぐろを巻いていたり……。また、出会う個体の体色のバリエーションも豊富です。カラスヘビと呼ばれる黒化型の個体や縞模様にバリエーションがある個体など、見ていて飽きません。
幼いシマヘビは縞模様ではない
私がもっとも興味を抱くのは、シマヘビの幼蛇は縞模様ではなく、小豆がブロッチ状に並んでおり、成蛇とまったく違う模様をしていることです。これが成長とともに縞模様になるのがちょっと不思議で、どのような変化を遂げるのか見てみたいとずっと思っています。ただ、こればかりは飼育してみないと、成長と模様の変化を追えないので、何とかチャレンジしてみたいなと考えています。
シマヘビの縞模様は背中から見ると4本あります。この縞模様がおしりの方で2本に変わります。実はこの2本に変わった部分以降がしっぽなのです。そう、背中から見てもしっぽの位置が分かるのです。ぜひ確認してみてください。きっと、「しっぽ、短っ!」と思ってしまいますよ。
シマヘビの主食はカエル
さて、シマヘビの主食はカエルです。撮影していると何処からともなくギューッとカエルが締め付けられている声を耳にします。残念ながらカエルの断末魔でしょう。シマヘビはカエルを見つけると噛み付き、そのまま一気に締め付けます。この力はすごいもので、カエルにとって逃げるのはほぼ不可能です。また、ヘビにはまぶたがないので、シマヘビの充血したような赤い目は顔つきがいっそう精悍に見えてくる瞬間です。
生きもの観察のメインフィールドは近場に
このように、私はメインフィールドを身近な場所から選んでいます。何度となく足を運ぶことによって、また季節変化によって、生きものの暮らしの見え方が変わってくるのがとても興味深いところです。遠い地に赴いてフィールドワークをするのもいいのですが、「身近な自然を見つめなおすことも大切」と、最近特に思いはじめ、足しげく通っています。ぜひ皆さんもこのような場所を見つけて何度も通い、その自然の奥深さを感じていただきたいと思います。
【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。 『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(ニホンヤモリ、ニホンイシガメ、オオサンショウウオ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、イモリ、トカゲ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ!イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。最新刊『日本のいきものビジュアルガイド はっけん! 小型サンショウウオ』(緑書房)が2023年9月29日に発売。
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