動物園・水族館で写真を撮るときに気をつけたいマナー

動物園・水族館にはさまざまな生き物が展示されており、多くのお客さんがいます。そのような環境で写真を撮る上で、特に気をつけたい点について紹介します。

光を発する撮影は控える

動物園・水族館でのストロボ撮影・フラッシュ撮影は、原則禁止と考えて撮影しましょう。

水族館や動物園の一部展示エリアは、暗く、撮影対象となる生き物も動いているため、撮影する難易度が高く感じるかもしれません。それでも、ストロボ撮影はNGです。強い光は、生き物にストレスを与えかねません。特に、イカ、深海にいる生き物、夜行性の生き物などは強いストレスを感じる可能性があります。

展示エリアによってストロボ撮影を許可している動物園・水族館もありますが、そのような場合でも園内・館内が混雑しているときは使用を控えたほうが良いでしょう。隣からいきなり強い光が発せられたら、他のお客さんがビックリしてしまいます。

写真:ストロボの使用は控える


また、スマートフォンやカメラの自動フラッシュ機能、カメラのAF(オートフォーカス)機能で使用されるAF補助光もオフにして撮影に挑みましょう。

写真:スマートフォンの自動フラッシュ機能はオフにする(新江ノ島水族館にて撮影)

カメラの設定によっては、故意ではなくても発光してしまうことがあります。入園・入館前にカメラの設定をチェックしてから挑みましょう。

長時間、展示の前を占領しない

休日の動物園・水族館や、人気の高い展示の前は、基本的に混雑しています。

そんな中で、一部のカメラマンが展示の前を長時間占領してしまうと、他のお客さんが展示を見られなくて悲しい思いをしてしまいます。また、そのような状態が続いてしまうと、動物園・水族館の側も、展示の時間制限や、撮影自体の禁止などの対策を検討しなければならなくなるかもしれません。

可能な限り、他のお客さんに展示の前を譲ることで、多くの人が展示を楽しめる環境を作っていきましょう。

また、動物園・水族館には混みやすい時間帯があり、多くの場合はお昼頃から混雑しはじめます。開園後すぐや、閉館する間際など、比較的混雑が緩和される時間を狙って撮影してみるといいかもしれません。

写真:人が少ないタイミングを狙って撮影した水槽(新江ノ島水族館にて撮影)

大きな水槽の撮影であれば、離れたところからでも生き物を大きく写すことができる中望遠のレンズを使用してみるのも手です。

写真:水槽から5メートルほど離れて撮影したパシフィック・シーネットル(新江ノ島水族館にて撮影)

三脚の使用は控える

「手ブレしないように三脚を立てて撮影をしたい」と思う人もいるかもしれません。しかし、安全性の問題もありますし、他のお客さんが水槽を見る妨げにもなりかねないため、三脚の使用は控えましょう。

また、動物園・水族館によっては「三脚は禁止、一脚はOK」などと決められていることがあります。事前に公式サイトを確認しましょう。

ちなみに、水族館などでの撮影全般に言えることですが、暗いからといって三脚を使用して長秒露光をすると、生き物が動いて被写体ブレしてしまいます。生き物に合わせた設定にするのが良いでしょう。

生き物をビックリさせないように注意!

動物園・水族館で展示されている生き物たちは、大きな音や振動が苦手です。野生では視覚、聴覚、触覚をフルに活用して危険を認識している生き物たちなので、異変を察知する能力が人間よりも優れているのです。

生き物がそれぞれの展示環境で心地よく過ごせるように、むやみに大きな声で騒いだり、水槽や動物舎を叩いたりしないようにしましょう。

また、カメラのレンズを水槽などのアクリルガラスにくっつけて撮影すると、アクリルガラスが傷つく恐れがあるので、気をつけましょう。

写真:動物を驚かさないように撮影する(神戸どうぶつ王国にて撮影)

物を使って生き物の注目を引かない

展示されている生き物たちは、おもちゃやタオルなどを動かすと興味をもつことがあります。私も、他のお客さんが水槽の前でおもちゃを動かしてイルカやアシカなどの興味を引いている光景を何度か目にしたことがあります。しかし、これらの行為も、生き物によっては悪影響となる可能性があるのです。

新さっぽろサンピアザ水族館は下記の投稿で、物を使って生き物の気を引くことについて注意喚起をしています。

こちらに興味をもってくれる様子が可愛い気持ちはわかりますが、展示されている生き物が体調を崩してしまうのは悲しいですよね。

カメラを持つ位置に気を使う

皆さんは、カメラをどのように持ち運びますか? 首から下げたり、肩から下げたり、手で持ったまま歩いたりと、人によってさまざまだと思います。

カメラを持つ位置によっては、子どもなどにぶつけてしまい、怪我をさせてしまう可能性があります。実際に、何気なく肩からカメラを下げて歩いていた人が、子どもの顔にカメラをぶつけてしまった事例について聞いたことがあります。小まめに鞄に入れたり、持つ位置に注意を払ったりして、安全にカメラを持ち運びましょう。

動物園・水族館以外での撮影とも通じる部分がありますが、大事なことは生き物への負担を可能な限り減らし、かつ、他の人に気を配りながら撮影することです。そのために待ち時間が長くなることもありますが、それも含めて動物園・水族館での撮影です。譲り合いの精神を大切に、写真ライフを楽しんでいきましょう。

【文・写真】
あき
1996年大阪府生まれ、東京都在住。水族館や水中、音楽ライブの撮影のほか、雑誌、Webメディアへの寄稿などを行う。2017年、水族館の生きものを綺麗に撮影したいと思い、写真を始める。2023年、国際フォトコンテスト8TH 35AWARDS「UNDERWATER PHOTOGRAPHY」で100Best photo選出、Top35 photographers選出。ほか『幻想的な水族館の世界カレンダー2024』(緑書房)など。
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