ペットとの別れなどを考える「トライアングルケア講習会」レポート

命あるものはすべて、いつかその生をとじます。特にほとんどのペットは人よりも短命であるため、飼い主は、いつかその日を迎えなければならないことをわかったうえでペットと暮らしています。しかし、頭では理解していても、いざその現実に直面したとき、多くの人はさまざまな感情が押し寄せ、混乱します。なかには、日常生活に大きな支障を来す場合もあり、それは決して珍しいことではありません。そのようなペットロスに苦しむ人の多さを反映してか、それを乗り越えるためのセミナーなどが各地で実施されています。

今回は、ペットとの別れへの向き合い方として、「トライアングルケア」というアプローチ法を提唱している日本国際動物救命救急協会の講習会(2024年4月28日、東京・浜松町、講師:サニーカミヤさん)の概要をレポートします。

写真:講師のサニーカミヤさん。レスキュー隊員、牧師など多様な経験をもつ

トライアングルケアとは

トライアングルケアとは、愛するペットとの別れの過程において、飼い主が体験する「ターミナルケア(終末ケア)・グリーフケア(祝別ケア)・スピリチュアルケア(命のケア)」の連鎖を指します。

■ターミナルケア(終末ケア)…終末に向かうペットと家族への段階的なケア。末期にあるペットに対して快適さや尊厳を最優先に考えた支援を行い、ペットが望む場所で穏やかに命を終えるための方法を学ぶ。加えて飼い主が体験する悲しみを考察する。

■グリーフケア(祝別ケア)…終末を迎えたペットへの対応と家族の心へのケア。ペットが亡くなる前から祝別までのケアであり、死を受容するための重要なアプローチ。安楽死の問題なども考える。

■スピリチュアルケア(命のケア)…魂となった命、および新しい命と向き合うための心のケア。生を終えたペットの存在をどのように感じ続けるのかなどを考察し、次のペットを迎えるための準備を具体的に整えていく。

この講習会では、それぞれの局面で起こることを具体的に想像しながら、可能な限りペットの痛み・苦しみを軽減し、飼い主の悲観による生活の質の低下を予防することを目指して、さまざまな話題が提供されていました。

活発な質疑応答もみられ、さらにはポイントごとに参加者同士が体験や考えを語り合うワークショップの形式もとられていました。ペットとのつらい別れを経験した人、あるいはそれを事前からとても恐れる人同士が想いを共有することで、孤独感が癒され、次の一歩を踏み出す大きなきっかけになったようです。

写真:ペットとの別れの体験などについて語り合う参加者たち

写真:ペットの命と尊厳を守る活動を展開しているサニーカミヤさん。著書『エキゾチックペットの命を守る本』『ペットの命を守る本』を手に

【プロフィール】
サニー カミヤ
(一社)日本国際動物救命救急協会代表理事/(一社)日本防災教育訓練センター代表理事
福岡市消防局のレスキュー隊小隊長を務めた後、国際緊急援助隊員、ニューヨーク州救急隊員として活動。人命救助者数は1,500名以上を数える。マウイ島での牧師の経験ももつ。2013年より再び活動拠点を日本に移し、リスク・危機管理、防災、防犯、各種テロ対策コンサルタントなどの活動を行う。さらには「助かる命を助けるために」をテーマに、ペットの救命救急法(ペットセーバープログラム)の講習を日本全国で展開。ペットの飼い主や消防士などに、日常事故や自然災害時における実践的な動物愛護と保護に向けた取り組み、および飼い主とペットの「生命・身体・財産・生活・自由」を守るための防災教育の普及活動を行っている。著書に『ペットの命を守る本』(緑書房)など。最新刊『エキゾチックペットの命を守る本』(緑書房)が2024年5月10日に発売。

*「トライアングルケア講習会」や「ペットセーバー講習会」は全国各地で開講されています。最新情報は日本国際動物救命救急協会の公式サイト(https://petsaver.jp/)でご確認ください。