書籍『遺伝子からたどる 日本の歴史と起源』(著:杉田繁夫)発刊

緑書房では、このたび『遺伝子からたどる 日本の歴史と起源』(著:杉田繁夫)を発刊しました。

遺伝子は歴史と関係あるの?

「遺伝子」という言葉にどのようなイメージをもっていますか?

「DNA」? 「性染色体」? 中学校や高校では習った気がする……。
なんとなくは知っているものの、「詳しく解説して!」と言われたら「そこまでは無理」でしょうか? 説明するのは意外と難しいかもしれません。
でも、この書籍なら大丈夫。
きっと、今予想したものとは違う遺伝子の話を読むことができるはずです。

さて、いきなりですが、本書で解説される猫の話です。
猫には、しっぽが折れ曲がったかぎしっぽ猫がいます。これは「HES7」という遺伝子の変異で起こることが特徴で、長崎県にいる野良猫の約80%はこのかぎしっぽ猫です。
かぎしっぽ猫の原産地は、東南アジアや中国南部で、インドネシアを含みます。インドネシアはオランダの植民地だった国です。
そう、江戸時代、日本は鎖国して出島を通してオランダと交易していたので、長崎県での偏りが生まれたと考えられます。

このように、遺伝子には遠い昔で起こった変化が積み重なって残っています。
なので、検査機器が新しくなればなるほど、人や動物の遺伝子から、今まで知ることができなかった、さまざまな歴史的できごとが分かるようになってきました。
例えば、旧石器時代の人々が赤毛や青目だったのかを特定できますし、日本人の祖先がアメリカ大陸に渡って原住民になったということも分かってしまうのです。

DNAから歴史を再考

本書は、遺伝子研究の最先端にいる著者の杉田繁夫さんが、遺伝子解析を含めたさまざまな最新の解析法を用いて歴史を再考する1冊です。
最初に「そもそも遺伝子とは何?」、「DNAからどんな情報が分かる?」などの疑問について簡単に解説したあとに、1冊を通して旧石器時代~古墳時代の日本史を中心に追っていきます。

・ネアンデルタール人は色白だった?
・糖尿病にかかりやすい遺伝子は?
・日本では、周囲の国にくらべて遺伝子が多様なのはどうして?
・孔子の祖先はどこにいた?
などなど、興味深いトピックについてもたくさん取り扱います。

日本以外では、かかわりの深い大陸(中国)やインドにおける遺伝子もみていきます。
カースト制度が続いたインドでは、どのような違いがみられるでしょうか?

「世界的な民族の対立は、遺伝子の中にどのように現れているのか?」
「男女による遺伝子の多様性の違いはどうして起こるのか?」
本書とともに、いま存在している地球、そしてずっと昔から連綿と変化を繰り返し、つながれてきた「いのち」に思いを馳せてみませんか?

写真:ゲノムの解析を行うと、古代骨となった人物の外観まで分かります。ネアンデルタール人はというと……(第2章)

写真:気候・海流・遺跡から出土した物品とDNAの情報を組み合わせて、縄文時代の人類の移動を探っていきます(第4章)

写真:イネの種類と、各国の民族の移動を照らし合わせます。マウスのDNAの変化はその時代の積み荷と関係するようですが……(第6章)

分野を横断した学び

著者の杉田繁夫さんは、あとがきにこのように記しています。
「正解のない困難を解決するには、もはや文系とか理系などと言っている時代ではありません。いろんなアプローチが必要です。例えば歴史を学ぶ際には古い文献を読みこなす必要があります。遺伝子からのアプローチでも、ゲノムを読みこなすことが必要です」

本書は各章の内容をつなげながら構成されており、「前の章で分かったことがここでも!」と、あたかも推理小説のように読めるのが特徴です。
「文系の人にも面白く読んでもらえて、理系の人にも興味をもっていただけるものを目指した」と筆者が語る本書。分野を横断した学びを得られること間違いなしです。

【主要目次】
第1章…歴史って、遺伝子で何か分かるの?
第2章…旧石器時代 遺伝子から人類のルーツをたどる
第3章…岩宿時代 日本に渡った人類
第4章…縄文時代 日本人の遺伝子にせまる
第5章…大陸の歴史 大陸と日本の遺伝子
第6章…弥生~古墳時代 伝播する遺伝子と文化
第7章…遺伝子でみるカースト制度 DNAで南アジアの歴史が分かる

【著者】
杉田繁夫(すぎた しげお)
博士(医学)、日本中央競馬会(JRA)競走馬総合研究所企画調整室
専門はウイルスの分子進化。1959年生まれ。京都大学薬学部卒、同大学院課程修了退学。大学院時代、アメリカ国立衛生研究所(NIH)による遺伝子工学のガイドラインが大幅に緩和されたこともあり、日本の遺伝子工学黎明期に遺伝子工学を学ぶ。その後、国立予防衛生研究所(現:国立感染症研究所)の厚生省流動研究員として、根路銘国昭博士の下で流行インフルエンザウイルスの遺伝子配列を決定するとともに、国立遺伝学研究所の五條堀孝博士の下で分子進化の解析手法を学ぶ。その後、JRA競走馬総合研究所に着任。インフルエンザ研究者交流の会の運営も担当。
※著者の略歴は出版時の情報です。

【本書概要】
・書名:遺伝子からたどる 日本の歴史と起源
・著者:杉田繁夫
・発行:緑書房
・体裁:四六判264頁 巻頭カラー・モノクロ
・定価:本体2,700円(税別)
・発売日:2024年6月10日
・ISBN978-4-89531-948-5

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