姿を変えながらも水を漂いつづける(鶴岡市立加茂水族館)
オキクラゲはこんな生き物
オキクラゲ(刺胞動物門鉢虫綱旗口クラゲ目オキクラゲ科・学名Pelagia noctiluca)は、世界中の暖海域に生息する外洋性のクラゲです。自然界では、波や風の影響で沿岸に大量に漂着することがあります。発光するクラゲとしても知られており、刺激を受けると青白く発光します。
多くのクラゲは、プラヌラ(受精卵から変態した幼生)やポリプ(海底などにくっついて生活する状態)、エフィラなどの過程を経て成体のクラゲへと成長します。しかしオキクラゲは、鉢虫綱のクラゲでは珍しくポリプ世代をもたず、受精卵がプラヌラに変化した後は、そのままエフィラに変態します。
鶴岡市立加茂水族館では、展示水槽にて30匹ほどのオキクラゲを飼育しています。また、バックヤードではクラゲのエフィラから成体までの1000匹以上を飼育しています。
※情報は2024年7月時点のものです。
オキクラゲの日常
オキクラゲを含むほとんどのクラゲは、水の流れに身を任せている生き物です。飼育員が近寄ってきたからといって、クラゲも近寄ってくるということはありません。また、餌も自分から食べに行くのではなく、偶然に体に触れた餌を捕まえて食べます。このように、のんびりしたクラゲたちがゆったりと漂える水流になっているか、餌は適切な量を食べられているかを、日々観察しながら飼育しています。
1日の飼育の流れとしては、8時30分頃に照明を点灯して、オキクラゲたちの状態を確認します。このときに、クラゲ同士が絡まってしまっていればほどき、水槽が汚れていれば掃除をします。餌は、午前中にアルテミア*、夕方にミズクラゲの切り身や魚のミンチを与えています。閉館後は、状態を確認してから消灯します。
*アルテミア:水中で生息する小型の甲殻類。別名ブラインシュリンプ。
飼育員さんの小話
オキクラゲは、照明が点灯してから3~4時間後に放卵します。バックヤードでは9時ごろに採卵できるように、タイマーで照明の点灯時間を調整しています。展示水槽は8時ごろに照明をつけるので、放卵が確認できるのはお昼ごろです。オキクラゲの卵は粘液に絡まった状態で放卵されるため、卵がまとまって水中を漂っていることがあります。タイミングが合えば、放卵の様子や浮いている卵を観察できますよ。
飼育員さんが教えるオキクラゲの見どころ
ミズクラゲなどのポリプ世代がある種類は、成体のクラゲがいなくてもポリプから赤ちゃんクラゲを得られるため、次の世代につなげられます。しかしオキクラゲは、鉢虫綱のクラゲでは珍しくポリプ世代を持たず、プラヌラから直接クラゲに変態します。このため、オキクラゲの成体がいなくなると受精卵を得られず、次世代がいなくなってしまいます。加茂水族館では毎日採卵をして、世代が途切れないように飼育をしています。
展示室では、オキクラゲの受精卵からエフィラに変態するまでの過程を、顕微鏡で拡大して展示しています。1日ごとにどのように姿が変わっていくかを観察できます。
また、バックヤードの繁殖室では稚クラゲを大量に育成しています。バックヤードツアーに参加すると繁殖室に入ることができるので、参加した際にはぜひ育成の様子を観察してみてください。
【文・写真】
鶴岡市立加茂水族館
〒997-1206 山形県鶴岡市今泉字大久保657-1
TEL:0235-33-3036
公式サイト:https://kamo-kurage.jp/
X(旧Twitter): https://x.com/JELLYFISHAQ
Facebook:https://www.facebook.com/JFAQUARIUM
Instagram:https://www.instagram.com/kamoaquarium/