観賞魚用のフードって、何が入っているの?
アクアリウムの主役となる観賞魚には、金魚やメダカ、熱帯魚、海水魚など様々な魚を選ぶことができます。
どのような魚であれ、必要となるのが観賞魚用フードです。
魚が必要とする栄養素には、実は特別なものはなく、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルと、基本的には私たち人間が必要とするものと変わりません。
魚の食性によって、植物質の消化吸収が苦手などの違いはありますが、必要とする栄養素の量はどの魚も大きくは変わりません。
一例をあげると、パッケージに載っている成分表の最初に表記されているものは、タンパク質の含有量であることが多いのですが、大抵は35~50パーセント程度の範囲内に収まっています。
筋肉や皮膚、鱗やヒレの発育など、魚の成長に最も必要とされる栄養素です。意外と少なく感じられるかもしれませんが、魚に必要なタンパク質はこの程度の分量となります。
また、活動のエネルギーとして重要な脂肪ですが、人の感覚では太り過ぎの原因になりそうな気がして、数値が高いものは避けられそうなものです。
しかし、栄養源として優れているだけではなく、EPAやDHAなどの必須脂肪酸のように餌から摂取しなければならない要素も少なくありません。
また、産卵させるために脂質はとても重要で、繁殖を目的とした餌は、その数値が高めに設定されることが多くなります。炭水化物に関しては、魚種によっては栄養として吸収できない魚もおり、雑食性の魚はうまく活用できますが、肉食魚は一般的に炭水化物の消化を不得意としていることが多いなどの違いがあります。
タンパク質
アミノ酸が結合したものです。筋肉や皮膚を作る原料となります。魚の成長に必要なものに、餌からの摂取をしなければならない必須アミノ酸が10種類ほどあり、欠乏すると成長率の低下、骨の異常などの症状が発生します。原材料としては、魚粉、オキアミ、昆虫、大豆ミールなどになります。
脂質
生命活動のエネルギー源となるもので、脂肪、リン脂質、脂肪酸などがあります。EPAやDHAなどは必須脂肪酸と呼ばれ、餌からの摂取が必要な成分です。魚油などが主な原材料です。
炭水化物
エネルギー源として利用されるもののひとつです。雑食性の魚類はアミラーゼ(糖質を分解する酵素)が多く、炭水化物を分解し、栄養源とすることができます。しかし、海水性の肉食魚は、アミラーゼが少ないものや、まったく出せないものもおり、炭水化物を栄養として吸収できない魚種もいます。
ビタミン
体内では合成できないか、合成できても量が少ないため、餌から摂取する必要がある化合物です。水溶性、脂溶性の2つがあり、欠乏すると成長不良などの悪影響が出ます。ただし、取り過ぎても問題があり、特に脂溶性ビタミンの過剰摂取は害になりますのでバランスの良い給与が必要です。
ミネラル
カルシウムやリン、マグネシウムなどの無機質のことです。骨格の形成、酵素の作用を助けるなどの働きがあります。これらが欠乏すると、脊椎の湾曲、飼料効率の低下などにつながります。カルシウムは水中にも多く溶け込んだ物質であり容易に摂取することができますが、リンは不足しがちで、食事から取ることが重要です。
栄養摂取以外にも、こんな特性が……
市販のフードは、魚はもちろん、それを使う人にとっても“いいもの”であることが求められます。
例えば「水を汚しにくい」などの性能を備えていることです。フードを与えれば水が汚れるのは当たり前なのですが、フードの質を改善することで、飼育水の汚れを減らすことを可能としています。
一例として、当社独自の「ひかり菌」「GB(ガーベッジバスター)菌」などの善玉菌の配合です。魚の腸内で消化吸収を促進することで糞の量を減らし、水中に残った餌を中心とする有機物の分解が素早く行われ、水の汚れを抑えます。
他にも、カメでは「ひかり菌」によってサルモネラ菌が発生しにくいなどの効果も確認されています。乾燥した人工飼料に生きた菌? と思う人もいるかもしれませんが、魚の腸内、排出された糞などからも菌が検出されており、賞味期限内の餌ならば、生きた菌の働きが期待できます。
また、そうした菌は食べた魚の腸内環境を整える効果もあり、魚の健康に作用することも確認されています。水、魚ともに良い状態を保つことに役立っています。
フードは1日にどのくらい与えれば良いの?
フードをどれだけ与えれば良いのかですが、商品パッケージの裏面などには、「2~3分で食べ終わる量が目安」などと表記しています。
厳密に言えば、ベストな量は飼育環境や魚種、あるいは個体ごと、水槽ごとによって異なるものです。当社研究所の研究データ、水産情報などからは、1日に与える総量が魚体重の1~2パーセントという数値を示しています。もう少し厳密に言うと、2パーセントはやや多く、1.5パーセント程度が理想値となります。体重100グラムの魚であれば、1日あたり1.5グラムの給餌が理想量です。ただし、問題は魚の体重計測が難しく、その数値の把握をすることが困難であるということです。
以下に当社が計測した魚体重データを掲載しましたので、大体の目安として参考にしてみてください。また、浮上性フード、沈下性フード、フレークフードではそれぞれ密度が異なるため、同じスプーン1杯でもその質量は大きく異なります。フレークから粒状餌に変えた場合(その逆も)、与え過ぎ、または不足になることがあるので、その場合には注意してください。
魚種 | 魚体重 | 1日の最大給餌量 |
カージナルテトラ (全長31㎜) | 0.33g | 0.0066g |
グッピー♂(全長44.5㎜) | 0.38g | 0.0076g |
グッピー♀(全長51㎜) | 1.52g | 0.0303g |
エンゼルフィッシュ (全長40㎜) | 0.86g | 0.0303g |
コリドラス(全長57㎜) | 2.79g | 0.0558g |
フード選びのコツ
人工飼料には多くの種類があり、それぞれに異なる機能、特徴があります。時には異なる餌も与えた方が良いのでは? と考えたことのある人もいると思いますが、1種類のフードのみでもまったく問題はありません。
人工飼料は栄養的に完成された完全栄養食です。特に魚種別フードであれば、その魚に対して理想的な栄養組成になっており、そのフードのみの単一給餌で問題ありません。同じフードを続けて与えていると、魚の腸内環境や消化酵素などが、そのフードに特化したものに変化し、比較的短期間で与えているフードに合った体になります。それを別のフードに変えると、消化吸収に影響が出る可能性もあります。魚のためを思うのであれば、フードはあまり変更しない方が良いでしょう。
一般的に、商品パッケージには成分表を表記しています。これは、タンパク質や脂肪などの含有量を表示したものです。ユーザーの中には、この表を見てフードの良し悪しを判断しようとする人がいますが、成分表の数値だけでフードを判断することは、とても困難です。
というのも、一部の観賞魚用フードの成分表では、使用されている原料がすべて表記されておらず、使用量などが曖昧な商品も存在しています。また「タンパク質が多いこと=良い餌である」という認識も、必ずしもそうとは限りません。タンパク量が多いと成長が促進されることは事実なのですが、フードに含まれているタンパク質がどういったものであるかにも左右されます。なお、当社製品の成分表については、含有量が多い順に表記しており、その数字も最低保証値となっています。表記されている数字よりも低いパーセンテージであることは絶対にありませんので、ご安心ください。
フード選びに迷ったときには?
観賞魚用フードを購入する際、価格やパッケージ表記などを参考にされると思います。迷ったときには、価格についてはあまり重要視しないでください。水槽という限られた空間で過ごす魚たちにとって、食べることが日々の楽しみとなります。魚たちのことを思えば、価格だけではなく、美味しくて体に良い商品を選んであげたいものです。
例えば、900円の商品でも、3ヶ月間の使用であれば1日あたりの価格は10円です。私たちの1日の食費に比べれば圧倒的に安いのではないでしょうか。
また、観賞魚用フードには、日本国内産のものだけではなく、台湾製や中国製などの輸入品もあります。パッケージの裏には、小さな表記であっても原産国が書かれていますので、こちらも購入の際の参考としてもらえればと思います。
【執筆者】
株式会社キョーリン
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