知らなかった! ウサギ用フードの開発秘話

近年よく耳にするようになった「食育」。健全な食生活のために食材を選び、料理をするように、ペットフードも動物たちの健康を考え、試行錯誤の末に完成します。

ペットフードメーカーのイースター株式会社では、10年以上に渡ってウサギ用フードの開発、販売を行っています。
そこで、今回はウサギ用フードがどのような流れで開発されるのかをご紹介します。

開発から発売されるまでの流れ

当社で販売している「バニーセレクションプロ」は、エキゾチックアニマルを専門とする獣医師の霍野晋吉先生(以下、霍野先生)と共同開発した製品であり、2025年3月にリニューアルを予定しています。今回のリニューアルを検討する際に、コンセプトや原材料、配合設計の方向性に関しても霍野先生と当社で協議を重ねながら製品開発を行いました。

バニーセレクションプロと使用している原材料

当社の製品開発は、大きく分けて7つのステップを経て進められます。

  1. コンセプト作り:ターゲットを絞り、製品にどのような特長を付与するのかを検討します。
  2. 原材料探し:レシピ作りに必要な原材料を探します。製品によっては割愛することもあります。
  3. 配合設計:コンセプトに沿ったレシピを作ります。主食の場合には、栄養基準を満たせるように原材料の組み合わせや配合量を決めます。また、粒の形状やサイズもこの段階で決定します。
  4. 試作:作ったレシピが、大型の機械で問題なく作れるかどうかを確認します。成形性だけではなく、粒の形状・サイズ・比重も指定通りに作ることができるのかを試します。
  5. 給餌試験:動物飼育場で飼育している対象の動物に試作品を与え、嗜好性の評価を行います。また、食べやすさや便の状態等の確認もします。
  6. デザイン作成:コンセプトに沿って、ユーザーにどのようなフードなのかを伝えられるようにデザイン作成を行います。
  7. コスト試算・販売価格設定:原料や製造に必要なコストを算出し、そこから販売価格を設定します。ユーザーに適切な価格と思ってもらえるように努めています。

開発工程の全てをお伝えしたいのですが、ここからは、リニューアルでプラスされる特長をご紹介します。

コンセプト作り

本製品の場合は、獣医師の霍野先生と協議を重ねた結果、「食物繊維の種類と量の調整」と「自然下の食事の再現」をリニューアルにおけるプラスコンセプトとしました。

ウサギの栄養学の研究はまだまだ発展途上であり、分かっていないことが多いです。これまでは、アメリカのNRC(国家研究会議)が発行した栄養基準を参考に設計しておりましたが、これは1966年からアップデートされていません。そこで、犬・猫では総合栄養食の基準として採用されている、ヨーロッパのFEDIAF(欧州ペットフード工業会連合)が2013年に発表した、ウサギの栄養ガイドラインも参考にすることにしました。

2つの栄養基準の中で特に大きく異なる点は、繊維分画という推奨値を設定しているかどうかです。“粗繊維”は、ウサギの飼い主さんにおける認知度は高いですが、ADF(酸性デタージェント繊維)やADL(酸性デタージェントリグニン)などの繊維分画を指す言葉は耳にしたことがないかもしれません。FEDIAFでは、ウサギに必要な食物繊維は粗繊維だけで表すことは不十分であると考えられていましたので、バニーセレクションプロでも、粗繊維と繊維分画の両方に着目することにしました。

まず、それぞれの項目を測定するための分析試験を行い、現状の繊維分画毎の量や、バランスを確認しました。結果として、「リグニン」という繊維の含有量が推奨値よりも若干少ないことが判明しました。よりウサギに適した食事になるように、含有材料を置き換えることにより、食物繊維の量とバランスの調整をしています。

樹木由来の食物繊維「リグノセルロース」

原材料探し

今回のコンセプトを実現するには、新しく原材料を探す必要がありました。社内の担当部署に原材料の調査を依頼し、候補として挙がったものは順次、嗜好性確認試験や成分確認試験を行います。

自宅にいるウサギにも嗜好性を確認してもらいます

実は、この工程でかなり苦戦しました。ユーザーとウサギへフードを安定供給するには、原材料を安定的に仕入れる必要があります。「とても良い!」と思っても、野草であるために収穫が年に1回のみで、必要な量を仕入れられないため、採用を断念したこともあります。さらには、「甘い匂いがして嗜好性が高そう!」と期待しながら給餌試験に挑んだところ、どのウサギも一口も食べないという散々な結果を迎えることもありました。

新規採用を見送った原材料の一部

また、これだけでは、数多くのウサギが食べているフードに新規採用する原材料の選定には不十分であると考え、当社のWEB会員を対象としたアンケートもとっています。候補になりそうな原材料などを織り交ぜながら、飼育しているウサギの食歴の有無や嗜好性を確認し、これらの結果を総合的に判断した上で、新規採用する原材料を選定しました。

上記以外の開発段階においても、様々な場面で納得がいくまでに時間を要する部分がありましたが、本製品は2025年3月に発売できる準備が整いました。

バニーセレクションプロの新しいパッケージデザイン

さいごに

バニーセレクションプロは、もともと健康を維持することを最優先に考えられたブランドです。

今回のリニューアルで、新たに「自然下の食事の再現」というコンセプトをプラスしています。それは、ウサギ本来の食事に着目することで「毎日の食事を楽しんでほしい」という想いが込められています。個々のウサギの好みはもちろん異なりますが、ウサギも食べられるものが多いとそれだけ喜びや楽しみの機会が増えると思いませんか? そして、今日は何を食べられるか考えることがきっと楽しくなりますね。

バニーセレクションプロでウサギの健康を維持しながら、「食育」を合わせて考えていただけますと嬉しいです!

【執筆者】
イースター株式会社
イヌやネコだけではなく、ウサギ・モルモット・ハムスター・フェレットなど多くの動物種が食べるフードを製造しているペットフードメーカー。
HP:https://www.yeaster.co.jp/
X:https://x.com/yeaster_JP/
Instagram:https://www.instagram.com/yeaster.co.jp/