知っておきたい 犬の皮膚疾患

近年、人ではスキンケアに注目が集まり、洗顔や保湿が一般的になってきましたが、スキンケアが必要なのは人だけではありません。
わんちゃんにも皮膚に関する病気があり、スキンケアが必要です。
そこで、本記事ではわんちゃんの皮膚病と、その予防のために行う上手なシャンプーの方法について紹介します。

代表的な皮膚病

わんちゃんの病気の中でも皮膚病の割合は非常に高く、動物病院に来院する約24パーセントのわんちゃんが皮膚病を理由に来院すると言われています。
特に皮膚病の中でも、アレルギー性皮膚炎や表在性膿皮症、マラセチア皮膚炎が多く、若いわんちゃんからシニアのわんちゃんまで幅広くみられます。これらの皮膚病に共通してみられる症状は痒みであり、後ろ足で体を頻繁にかく、毛がちぎれるまで体を舐める、前足をかじるなどの症状がみられた場合は痒みのサインになります。痒みが持続的に起こると炎症が生じ、その結果「赤み」「脱毛」「フケ」などの症状がみられます。

アレルギー性皮膚炎

特にアレルギー性皮膚炎は、皮膚の乾燥やアレルゲンによって痒みが生じるのですが、主に目や口周り、耳、足先、脇、股などに赤みを中心とした症状が見られ、慢性的にかくことが特徴です。

脇の赤み
耳の赤み

表在性膿皮症

皮膚の常在菌であるブドウ球菌の増殖によって、湿疹やフケが見られるのが特徴です。

背中のフケ

マラセチア皮膚炎

皮膚の常在菌であるマラセチアの増殖によって、全身の皮膚がベタベタしたり、フケが出たり、独特な匂いがすることが特徴です。

背中のベタベタ

このような皮膚症状がみられた場合は治療が必要になるので、動物病院に相談しましょう。

皮膚病は、早期に発見し適切な治療を受けることで、重症化を防ぐことができます。
日常的なブラッシングやシャンプーなどのお手入れをするときに、皮膚や被毛を観察する習慣をつけておくと皮膚病の早期発見につながるので、ぜひ参考にしてみてください。

上手なシャンプーの方法

わんちゃんの皮膚は、赤ちゃんの皮膚のように薄くデリケートと言われています。したがって、わんちゃんにシャンプーをする際は、できるだけ刺激を少なくすることを心がけます。
具体的に、下記の3点などがあげられます。

・お湯の温度は38度前後のぬるま湯を使用する。
・シャンプー剤はよく泡立てて体に付着させ、皮膚や被毛を擦らず撫で洗いをする。
・シャンプー後は保湿やトリートメントを必ず行う。

特に、シャンプーをした後は皮膚や被毛は乾燥しますので、保湿やトリートメント剤の塗布は必須です。

また、被毛を乾かす際には、できるだけタオルドライを心がけましょう。吸水性の良いマイクロファイバーなどのタオルを使用し、体全体を乾かしていきます。この時に、しっかりと水分をタオルで吸水することで、ドライヤーの時間を短時間に抑え、わんちゃんへの負担を減らすことができます。

ドライヤーをかける際には、わんちゃんが嫌がらない程度の優しい風圧に調整し、できるだけ低温で行うことが理想です。風圧や温度調整が難しい場合は、わんちゃんの体に手を当てながら熱くないか、嫌がらないかなどを確認し、体からドライヤーまでの距離を20~30センチ程度離して温風をゆっくり当てていきましょう。

被毛が乾いた後は、保湿スプレーやコートスプレーなどの皮膚や毛を整える製剤を使用すると仕上がりが良くなります。
ブラッシングする際には、皮膚を傷つけにくい獣毛ブラシやウェットブラシのような柔らかい素材のものを使用しましょう。
健康な皮膚のわんちゃんには、月に1回程度のシャンプーをお勧めしますが、シャンプーが苦手なわんちゃんは、体拭きシートやドライシャンプーなどを活用してみてください。

また、健康な皮膚や被毛の維持のために定期的にトリミングサロンを利用し、日常的な汚れを取り除くことに加えて、保湿やトリートメント、普段行き届かない部位(顔まわりなど)のお手入れを重点的にやってもらうこともおすすめです。近年、皮膚や被毛のスキンケアに特化したトリミングサロンもありますので、気軽に皮膚のことを相談できるトリミングサロンを見つけておくと良いと思います。

さいごに

わんちゃんの皮膚は繊細ですので、飼い主さんがしっかりとケアをしてあげてください。
ブラッシングやシャンプーの際には、皮膚の状態を見ることを習慣づけ、普段からわんちゃんの行動を観察し、いつまでも健康な生活を送れるようにサポートしましょう。

【執筆者】
江角真梨子(えすみ・まりこ)
獣医師。日本獣医皮膚科学会認定医。2020年に「Vet Derm Tokyo」から独立し、フリーランスの皮膚科獣医師として従事。人の美容にも精通しており、日本コスメティック協会認定指導員も務める。著書に『Small animal dermatology books 皮疹を極める! – 的確な鑑別と伝わるカルテの記入法』(EDUWARD Press)。