馬と触れ合おう! 乗馬のはじめ方ガイド

馬は、古代から現代にいたるまで、多くの場面で人間を支えてきたパートナーともいえるいきものです。彼らの優れた知性と感受性は私たちの心を動かします。
この記事では、馬に惹かれるけれどまだ触れ合ったことがないという方々に向けて、乗馬のはじめ方をご紹介します。馬との出会いは、あなたのこれからの人生をきっと豊かにするはずです。

まずは馬に会いに行ってみよう

馬を身近に感じられる場所は、競馬場や観光牧場などいろいろありますが、馬に乗りたい、長く関係を築きたいという方には乗馬クラブをおすすめします。馬に触れ、乗ってみることで、馬の魅力をより一層体感できます。多くの乗馬クラブで、初心者向けの体験乗馬プログラムが用意されているので、自分に合った乗馬スタイルを見つけていきましょう。

多彩な乗馬スタイルを知ろう

乗馬にはさまざまなスタイルがあり、それぞれに特徴があります。興味や目的に合ったスタイルを見つけることが、乗馬ライフを長く続ける秘訣です。
主な乗馬スタイルをご紹介します。

ブリティッシュ

イギリスの伝統的なスタイルで、大きく2つの種目に分けることができます。姿勢の美しさや正確な技術を重視する「馬場馬術」と、競技アリーナに設置された障害物を、決められた順番通りに飛越、走行する「障害馬術」があります。

ウエスタン

アメリカの開拓時代に由来する実用的なスタイルです。西部劇に登場するカウボーイをイメージしてみるといいでしょう。馬の背にどっしりと腰をおろして、片手で手綱を持って乗ります。ウエスタンには、馬場での馬の運動能力を競う「レイニング」などの競技があります。

エンデュランス

馬に乗って長距離を走破するスタイルです。馬との信頼関係を深め、自然の中で冒険を楽しむことができます。ただ早くゴールするのではなく、馬が良いコンディションで完走することに重きが置かれています。トップレベルの大会では、走行距離が160キロメートルに及ぶこともあります。

外乗(ホーストレッキング)

自然の中を馬に乗って散策したり、爽快に駆け抜けたりするスタイルです。定期的なレッスンに通うのではなく、旅先などで外乗を楽しむ方もいます。地域によって、その土地に昔からいる在来馬での外乗を楽しめるところもあります。

体験乗馬に行ってみよう!

前述した乗馬スタイルのなかでも、日本で特に多いブリティッシュスタイルを主体とするクラブで行われる、体験乗馬の大まかな流れをご紹介します。

予約する

電話やウェブサイトから体験乗馬を予約します。予約時には、その人に合った馬を選ぶために年齢や体重、乗馬経験の有無などを確認されることもあります。また、当日の服装や持ち物、集合時間なども確認しましょう。

準備・着替え

当日、受け付けを済ませたら着替えに移ります。丈の短いトップスやくるぶしまで隠れるズボン、ハイソックスがおすすめです。特にズボンは、ブーツインしやすくて動きやすい、ストレッチ素材の細身タイプだといいでしょう。

大抵の乗馬クラブでは、ヘルメットやブーツ、プロテクターをレンタルできるので、予約時に確認しましょう。

馬との対面

インストラクターと一緒に馬房に馬を迎えに行ったり、あるいは馬場に馬を連れてきてもらったりします。人の緊張は馬にも伝わるので、馬の前では落ち着いて堂々と振る舞うのがポイントです。自分で手綱を持って馬を引く場合、足を踏まれないよう注意が必要です。

馬の背に乗る

馬場に到着したら、踏み台などを用意してもらい馬の左側から背に乗ります。足を置く鐙(あぶみ)の長さはインストラクターに調節してもらいましょう。乗りやすさが大きく変わります。

いざ、レッスン開始!

初めての場合は、馬がゆっくり歩く「常歩(なみあし)」を中心にレッスンが行われることが多いです。慣れてきて大丈夫そうなら、一段階スピードアップした「速歩(はやあし)」を体験させてもらえることもあります。速歩は、人間のジョギングに相当する速さです。常歩よりも揺れが大きくなるので、心の準備をしておきましょう。

レッスンが終わったら

レッスン終了後の流れは、クラブごとに異なります。馬のお手入れをしたり、おやつをあげたりできる施設もあれば、すべてスタッフが対応する施設もあります。もし可能であれば、乗せてくれた馬をねぎらってあげたいものです。

自分と相性のいい乗馬クラブを

体験乗馬は、馬に乗る感覚を知るだけではなく、その乗馬クラブが自分に合っているかを見極める絶好の機会です。

クラブを選ぶ際のチェックポイントをご紹介します。

乗馬の目的を明確にしよう

乗馬は、スタイルごとに魅力や目的が異なります。競技志向の方は、大会への出場実績が豊富な乗馬クラブが最適です。一方、馬との触れ合いや癒しを求める方には、競技に重点を置かないクラブや外乗がメインのクラブなどがおすすめです。目的に合わせて適切な乗馬クラブを選ぶことで、より充実した乗馬ライフを楽しむことができます。

レッスンのスタイルを確認しよう

一般的には、個人レッスンの方が上達が早いと言われます。しかし、グループレッスンにも、他の馬がいることによる学びや、レッスンの思い出を共有する馬仲間ができるといった魅力があります。ぜひレッスンスタイルにも注目してみてください。

アクセス方法を確認しよう

長く続けていくためには、通いやすさも重要です。乗馬クラブは郊外にあることが多いため、車や公共交通機関でのアクセスを確認しましょう。乗馬沼にハマると、荷物がどんどん増えていきます。車を持っていない人は、駅からの距離や送迎の有無に注意してください。

費用について確認しよう

入会金や月会費、レッスン料、装具レンタル料などの基本費用に加え、荷物を預けるロッカー代など追加で必要になりそうなものも考慮しましょう。いきもの相手の趣味なので、どうしてもお金はかかります。長期的な視点で費用を検討することが大切です。

安全に馬と触れ合うために

馬は体が大きく、力も強い動物です。優しい性格で知られていますが、時として予期せぬ行動をとることもあります。また馬ごとに性格も異なります。安全に馬との触れ合いを楽しむためには、インストラクターの指示に必ず従い、馬のそばを通る際は十分な距離をとる、急な動きや大きな声は控える、馬の死角に立たないなどの注意を払いましょう。さらに、馬の感情の変化にも気を配ることが大切です。

乗馬は、人間と馬が信頼関係を築きながら成長することができるスポーツです。最初は不安なことが多いかもしれませんが、一歩一歩着実に進んでいけばきっと素晴らしいパートナーとの出会いが待っているはずです。まずは体験乗馬から始めて、ぜひご自身に合った乗馬ライフを見つけてください。

【執筆者】
鑓 由希子(やり・ゆきこ)
編集者・ライター。「庶民の乗馬」をテーマにブログなどを執筆。その後、初心者向け競馬コンテンツや乗馬コンテンツの制作、馬産地取材などに携わる。現在は馬文化について調べること、取材すること、伝えることをライフワークに活動中。乗馬は永遠の初心者。
Instagram:balogram.tokyo