ペットとの生活における心配事に、日常生活でのケガや事故、そして地震など災害時の対応があります。そのような厳しい状況のとき、愛するペットを助けるためには、実践的な知識や事前の備えが重要です。
とはいえ、どういった情報を集めればよいのか、どんな準備が必要なのか、なにから取り組めばよいのか、とっかかりがわからないという人も多いのではないでしょうか?
この記事では、「いざというときのために備えておきたい」という飼い主さんのために、ペットの命や安全を守るために全国各地で開催され、たくさんの人が受講している「ペットセーバー講習会」の様子を紹介します。
ペットセーバー講習会とは
「ペットセーバー講習会」とは、救急救命のプロであるサニーカミヤさんが代表を務める、日本国際動物救命救急協会が開講しているプログラムです。
アメリカのペットテック社が開発したペットの救命救急・防災対策プログラム「ペットセーバープログラム」を土台としながら、日本の実情に即した内容にアレンジした「ペットの救命救急隊員講習」と「ペットのレスキュー隊員講習」の2部で構成されています。

ペットの救命救急隊員講習
「ペットの救命救急隊員講習」では、日常生活で起こりうる事故やケガに対する救命救急処置として、おもに以下のカリキュラムが実施されています。
【ペットの救命法】
・観察、意識、反応の確認
・助けを呼ぶ準備
・呼吸と脈の確認
・心肺蘇生法と人工呼吸法
・気道異物除去法
【ペットの救急法】
・止血法
・骨折時の処置
・アナフィラキシーショック、やけど、熱中症への対応
・犬に咬まれたときの対応
■心肺蘇生法と人工呼吸法
飼い主さんが心肺停止状態のペットを発見した場面から実習が始まります。ペットの名前を呼び、意識や呼吸の有無を確認し、搬送手段を確保し、動物病院へ連絡し、車内で処置を継続し、獣医師に引き渡すという流れにそって実習を進めます。



■気道異物除去法
のどに異物を詰まらせて窒息してしまうという事故は、特に犬ではよく起こります。数回せきこんでも吐き出せないようであれば、速やかに異物を除去する必要があります。実習では、さまざまな状況やペットの体格・体形に応じた異物除去法が紹介されていました。
その他、止血法と骨折時の処置についての実習、アナフィラキシーショック、やけど、熱中症についての注意点や罹患したときの対応法が詳しく解説されました。
ペットのレスキュー隊員講習
「ペットのレスキュー隊員講習」では、自然災害発生時に自身とペットを守るための方法を考え、学んでいくことを目的に、おもに以下のプログラムが組まれています。
・地震、風水害、火災、噴火に備え、ペットを守る
・交通事故に備え、ペットを守る
・同行・同伴避難対策(事前の備えや発災後の行動)
・ケージやネット、ロープによる逸走ペットの捕獲法

さまざま講習会を実施中
日本での「ペットセーバー講習会」は10年あまり前に開始されましたが、現在の受講者数は延べ9万人にのぼります。1回の参加者数は40~80人ほどで、毎回ほぼ満員になるとのこと。講習内容は定期的にアップデートされるため、リピーターも多いようです。
「ペットセーバー(Pet Saver)」は日本国際動物救命救急協会および日本防災教育訓練センターが認定している資格であり、受講者には自身の名前入りの国際認定修了証が発行されます。
ここで紹介した犬や猫の飼い主さんに向けた内容に加え、トリマーや愛玩動物看護師、ペットショップ関係者などを対象とした「動物事業者向け講習」、エキゾチックペット(ウサギ、モルモット、チンチラ、ハリネズミ、小鳥、カメなど)向けの「エキゾチックペットセーバー講習会」も開講されています。
さらに、2024年より「トライアングルケア講習会」を実施中で、2025年4月からは「ウェルネスケアラー講習会」も新たに開講されます。
「トライアングルケア講習会」は、愛するペットの命が虹の橋を渡るまでの過程を具体的に考えるもので、終末期におけるペットの痛みや苦しみ、飼い主さんの生活の質の低下を可能な限り軽減することを目的としています。
「ウェルネスケアラー講習会」は、ペットの心身の健康維持・増進に向けた生活全般への理解を深めることを目的としています。
ペットが元気なうちからの日常のケア、高齢期になってからのケア、事故や災害時などいざというときのための備えなど、飼い主さんが知っておきたい知識が詰め込まれた講習がテーマ別に実施されていますので、目的に応じてチェックしてみてはいかがでしょうか。
各講習会の最新情報は公式サイトへ。
・「ペットセーバー講習会」「トライアングルケア講習会」「ウェルネスケアラー講習会」https://petsaver.jp/
・「エキゾチックペットセーバー講習会」https://exoticpetsaver.com/

【講師略歴】
サニー カミヤ(Sunny Kamiya)
一般社団法人日本国際動物救命救急協会代表理事/一般社団法人日本防災教育訓練センター代表理事
1962年福岡県生まれ。福岡市消防局のレスキュー隊小隊長を務めた後、国際緊急援助隊員、ニューヨーク州救急隊員として活動。人命救助者数は1,500名以上を数える。アメリカに22年在住し、ハワイのマウイ島で牧師を務めた経験もある。現在はアメリカ国籍。
2013年より再び活動拠点を日本に移し、リスク・危機管理、防災、防犯、各種テロ対策コンサルタントなどの活動を行う。さらには「助かる命を助けるために」をテーマに、ペットの救命救急法(ペットセーバープログラム、エキゾチックペットセーバープログラム)の講習を日本全国で展開。ペットの飼い主などに、日常での事故や自然災害時における実践的な動物愛護と保護に向けた取り組み、および飼い主とペットの「生命・身体・財産・生活・自由」を守るための防災教育の普及活動を行っている。また、2023年より「トライアングルケア講習会」を実施し、ペットの命が虹の橋を渡るまでのプロセスにおける、ペットと飼い主への総合的なケアについての啓発活動を展開している。NHK「逆転人生」などメディア出演多数。
著書に『ペットの命を守る本:もしもに備える救急ガイド』(緑書房)、『エキゾチックペットの命を守る本:もしもに備える救急ガイド』(同)、『ペットの命と生きる本:ペットロスを乗りこえるためのトライアングルケア』(同)など。