家に帰っても会える動物たち フィギュアメーカー:シュライヒに聞く動物フィギュアの制作秘話

動物園や水族館のショップを訪れた際に、動物のフィギュアが売られているのを見たことがありませんか? 精巧に作られたフィギュアはまるで本物の動物のようで、子どもも大人も目を惹かれます。

今回は、動物フィギュアなどの製作・販売を行うドイツのフィギュアメーカー:シュライヒの日本支社、シュライヒジャパンさんにフィギュアの制作秘話を伺いました。

フィギュアがお出迎えしてくれました

身近なものを手のひらに

―シュライヒとはどのような会社なのでしょうか?

猪股匡博さん

1935年にドイツで、フリードリッヒ・シュライヒが設立したフィギュアメーカーです。
当初は、「ジョボ」というとんがり帽子のくねくね曲がるフィギュアを製作していました。その後、「ジョボ」を踏襲した動物のおもちゃや、小さな青い妖精「スマーフ」などを作っていました。

「ジョボ」(左)「スマーフ」(右)
猪股匡博さん

現在は、動物園や水族館でもおなじみの動物や、恐竜、オリジナルの世界観を持つ「エルドラドシリーズ」などを中心に、様々なフィギュアを製作・販売しています。

飾られた動物のフィギュアたち
飾られた恐竜のフィギュアたち
飾られたエルドラドシリーズのフィギュアたち

―動物のフィギュアを作るきっかけは何だったのでしょうか?

猪股匡博さん

動物は、車などの乗り物と同じくらい人の営みに身近な存在です。その生活に近いものをフィギュアメーカーの技術をもって再現しよう。というチャレンジがきっかけだったと聞いています。

―ドイツはペット先進国と呼ばれていますが、他の国より動物との距離が近いのでしょうか?

猪股匡博さん

きっと、そういった側面もあると思います。当時のドイツの人たちにとっても動物は身近で大切な存在だったからこそ、それを再現しようという挑戦に繋がったのだと考えます。

―フィギュア作りにおけるこだわりポイントは何でしょうか?

猪股匡博さん

実は、一体ずつ手塗りで仕上げをしています。目や鼻、足の裏の肉球など、細かな部分のクオリティを追及しており、そこに高い評価をいただいています。

―一頭一頭違うというわけですね!

猪股匡博さん

そういったこだわりが動物園・水族館からも評価されて、JAZA(日本動物園水族館協会)が開催する学会にも参加させていただいています。

―より本物に近いという評価を受けているのですね。

猪股匡博さん

2024年の新商品にニホンザルがいました。そのフィギュアを見た動物園の方から「尻尾の形状がニホンザルの特徴をしっかり捉えていて素晴らしい」と、お言葉をいただきました。

ニホンザルのフィギュア 尻尾に注目

―一般の方が気づかない部分までこだわっているからこその評価ですね。

猪股匡博さん

動物園・水族館からこれだけ高い評価をいただいているのは、お互いにしっかりしたものを売りたいという思いがあるからです。私たちも中途半端なクオリティのものを世に出したくありませんし、動物園・水族館は、動物を飼育して、文化的な目的で「展示」する施設として、造形にはこだわってほしいのだと思います。

―飼育・展示している動物たちと同じ姿形のフィギュアを作ってほしいという思いがあるのですね。

猪股匡博さん

正面からは見えない部分まで追求し、動物のプロフェッショナルの方々に認められてています。だからこそ、「後ろ姿や真上から見た姿など、普段はできない目線での観察を手のひらでできる」というシュライヒのフィギュアの強みが生まれたのです。

おもちゃ売り場からのメッセージ

―2025年に90周年を迎えたとお聞きしました。100周年に向けて挑戦したいことはありますか?

猪股匡博さん

ドイツなどの一地域目線から、グローバル目線を持ったシュライヒになろうという動きがあります。

日本では、馬といえばサラブレッドが有名で、競走馬は近年とても注目されています。このような日本で人気の動物種にフォーカスを当てたり、日本以外のアジア目線の情報も発信していきたいと思っています。

人気のラインナップ:「ホースクラブ」にはヨーロッパでメジャーな品種が多い

―ニホンザルもその一つでしょうか?

猪股匡博さん

ニホンザルの制作は、「温泉に入るニホンザル」が海外メディアで大々的に報じられたときの影響です。ヨーロッパの人にとって温泉に入る動物は身近ではないようですが、世界的に注目されたので商品化に至りました。

―2024年にタイでコビトカバが注目されましたが、同じアジア圏で注目された動物の商品化もありますか?

猪股匡博さん

そういった話題も拾い上げていきたいです。コビトカバは世界3大珍獣と言われ、絶滅危惧種にも指定されているので、動物愛護や環境保護などのメッセージをおもちゃ売り場から発信できるのではないかと思っています。

―子どもと大人が一緒に考えられる機会を提供できますね。

猪股匡博さん

その通りです。インターネットの普及で、映像を見ながら動物が抱える問題について考えることは容易になりましたが、実物を見て、触りながらという体験はなかなかできません。映像だけだと現実味がないことも、フィギュアとして触ってもらうことで「この動物が実在していて、困っている」と認識してもらえるのではないかと考えています。

生活の一部として感じてほしい

―主に子ども向けの商品だと思いますが、子どもたちにはどのように遊んでもらいたいですか?

猪股匡博さん

これといった遊び方の指定はありません。子どもたちの自由な想像力の下で遊んでほしいです。
もちろん戦わせてもいいですし、ペットのように可愛がっても、並べてみるのもいいと思います。

子どもたちの自由な発想を謳ったキービジュアル ”Do giraffes grow in the rain?” 「キリンは雨の中で育つかな?」

―子どもたちの純粋な疑問を大切にしているのですね。

猪股匡博さん

本やインターネットで見た動物を手のひらに乗せて、360度見て楽しんでほしいです。
足の裏の皺まで、3D図鑑のように観察できるのがシュライヒのフィギュアです。

その他にも、たくさんのラインナップがあるので、普段は見ることのできない動物を身近に感じてもらえることも強みです。

飾られた動物のフィギュアたち

―では、大人はどのような楽しみ方ができますか?

猪股匡博さん

観察はもちろんですが、収集は楽しみ方の一つだと思います。「キッダルト」(キッズ+アダルト)という言葉が近年注目されていますが、雑貨やインテリアとしても楽しんでいただけるよう、ブランド力も大切にしています。ただし、決して敷居の高いものではなく、距離感の近いブランドでありたいです。

―確かに、テレビの横などに置いてあります!

猪股匡博さん

そのように、生活の一部として楽しんでもらえるのは嬉しいです。
シュライヒのロゴがより身近になるように、フィギュア以外のライセンス商品も売り出しています。動物という、人に身近なものを作り続けてきたからこそ、生活の中に溶け込んだブランドを目指しています。

服やリュックなどのライセンス商品

―最後に、この記事の読者にメッセージをお願いします。

猪股匡博さん

動物園や水族館、おもちゃ売り場などで一度手に取って見てみてください。本や画面のなかではなく、実物として、クオリティを追及したものを販売しています。手に乗せて、ひっくり返してみたり、いろいろな角度から楽しんでください。そして、自由に遊んでください。

また、「サステナブル」を掲げ、2027年までにすべてのフィギュアがリサイクル可能な素材で作られるよう移行する予定です。人の生活に身近な動物を作るフィギュアメーカーとして、環境に配慮し、持続可能な社会づくりにも貢献していきます。

―ありがとうございました!

シュライヒジャパン
ドイツに本社を置く、リアルな動物や恐竜などのフィギュアを製作・販売をするフィギュアメーカー。2025年に90周年を迎えた。
公式ホームページ:https://empli.fi/schleichjapan/
X:@Schleich_jp
Instagram:@schleichjapan
Facebook:Schleich
YouTube:シュライヒジャパンチャンネル