教えて!飼育員さん:ジンベエザメのはなし

優雅に泳ぐ最大の魚類(のとじま水族館)

ジンベエザメはこんな生き物

ジンベエザメ(テンジクザメ目ジンベエザメ科ジンベエザメ属・学名Rhincodon typus)は、世界中の温帯から熱帯の沿岸や外洋に生息しており、夏から秋にかけて日本近海にも回遊してきます。秋口になると石川県の近海にも姿を見せてくれます。

優雅に泳ぐジンベエザメの「モモ」

野生では、動物プランクトンや小魚を主食としており、海に浮遊する魚やサンゴの卵を食べていることも確認されています。のとじま水族館では、ナンキョクオキアミやツノナシオキアミ、シラス、サクラエビを与えています。

のとじま水族館で与えているエサ

魚類の中では最大と言われており、10メートル以上に成長することから英名では「Whale shark(ホエールシャーク)」と呼ばれています。

当館では現在、1頭のジンベエザメ(モモ、メス、全長4.5メートル)を飼育、展示しています。

※情報は2025年3月時点のものです。

ジンベエザメの日常

8時30分に出勤し、水温・水質チェックや設備点検を行い、9時に開館します。
この点検は朝と夕方に行っており、水温がジンベエザメに適した24~25度に保たれているか、酸素が十分に水中に溶け込んでいるかを必ず確認し、異常があれば対応します。

11時前までにその日のエサを準備し、11時頃と16時頃にエサやりを行います。ジンベエザメは、1日に7.5キログラムのエサを食べます。当館では、全て冷凍されているエサを使用しており、冷凍することで壊れてしまうビタミンを補うためにサメ用のビタミン剤を混ぜて与えています。

ビタミン剤入りのエサ

また、月に1回採血を行います。ジンベエザメの生態はほとんど分かっていないため、血液検査で飼育データを残すと共に、健康状態を把握し、エサの調整などをしています。

飼育員さんの小話

当館最大の深さ6.5メートル、対角20メートルの八角柱型水槽で飼育していますが、10メートル以上に成長するジンベエザメを飼育するには十分ではないので、大きくなると海に還しています。その際に発信機を取り付け、自然界でどの様に回遊をしているのか調査しています。

2024年1月に起こった能登半島地震により、当時飼育していたジンベエザメの「ハチベエ」と「ハク」が残念ながら死亡し、当館ではジンベエザメのいない状態が続いていました。しかし、同年9月に漁師さんから「ジンベエザメが入網しました」と連絡を受け、約9か月ぶりにジンベエザメを見ることができました。それから約1か月間海上の生け簀で飼育し、10月11日に当館へやってきたのが「モモ」です。

海上の生け簀でのモモ

モモは、今まで飼育してきたジンベエザメの中でも特に繊細な性格です。エサの好き嫌いに悩まされる事も多々あります。また、今までのジンベエザメはほとんど一定の方向で泳いでいましたが、モモは方向転換をして泳ぐ器用な一面もあります。

飼育員さんが教えるジンベエザメの見どころ

優雅に泳ぐ姿はずっと見ていられますが、1番のおすすめはエサやりの時間です。飼育員が柄杓(ひしゃく)で合図を出すと、水面に上がってきて勢いよくエサを吸い込み始めます。
柄杓を目印にしてエサを与えているので、適した場所へ方向転換させることもできます(もちろん動物なので思うようにいかないときもあります)。

柄杓でエサやりを行う様子 口元に注目するとエサを吸い込んでいるのがよくわかる

エサやりの終盤には立ち泳ぎをするので、水槽の上から下までジンベエザメの大迫力な姿を見ることができます。

エサやりの終盤に水槽前で見ることができる立ち泳ぎ

当館は、ジンベエザメを飼育している水族館で唯一、常に水面からジンベエザメを見ることができます。エサやりの時間は大きなガラスの前で立ち泳ぎを見るのもいいですが、水面でエサを吸い込む音と共に見るのも楽しいと思います。

水上からは大迫力のエサやりを見ることができる

ところで、ジンベエザメのウンチを見たことはありますか? 当館で飼育しているモモも、もちろんウンチをします。ジンベエザメは小さなエサを食べていることもあり、赤茶色のほろほろしたウンチをします。

赤丸で囲まれているものがジンベエザメのウンチ

健康管理を行う上でウンチは一つの指標となりますが、水中のウンチはくずれやすく、水の循環の影響で30分もすれば無くなってしまいます。常に飼育員が監視する訳にもいかないため、ウンチを見たらすぐに飼育員に知らせてくれるととてもありがたいです。急いで確認しにいきますので、一緒に観察してみましょう!

【文・写真】
のとじま水族館
〒926-0216 石川県七尾市能登島曲町15部40
TEL:0767-84-1271
公式サイト:https://www.notoaqua.jp/
X:@notoaqua_jp
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