2024年12月、カンボジア旅行帰りの飛行機で何気なく開いた機内誌に、タイの”Cat Island”ことカイナイ島の名前を見つけました。ちょうど翌月にタイを訪れる予定があり、「これは何かの縁かもしれない」と感じて急きょ行き先に加えることにしました。
カイナイ島は、カイノック島、カイヌイ島と共に「カイ島」を構成する島のひとつで、無人島です。定期船はなく、観光ツアーに参加して訪れるのが一般的です。プーケットからスピードボートで15~20分ほどですが、私はロングテールボートに乗って青い海を見ながらゆっくり向かうことにしました。道中、漁船のそばを通りがかり、漁の様子を見せてもらったのも良い思い出です。

島に近づくと、白砂のビーチにカラフルなパラソルやビーチチェアがずらりと並び、日差しに照らされてまぶしく輝いていました。観光客を乗せたボートが次々と着岸していましたが、それすらも島の日常風景の一部のように感じられました。

上陸してすぐ、ビーチでごろんと仰向けになっている猫に出会いました。頭や背中に砂がたっぷりついていましたが、そんなことは気にもとめない様子でくつろいでいました。

パラソルがずらりと並ぶ光景は、まるで砂浜に咲いたお花畑のようでした。

椅子の上では、黒猫が優雅に毛づくろいをしていました。

お店もいくつかあり、猫も店番に加わっているようでした。飲み物を購入して、猫がしているようにぼんやりと海を見ながら過ごす時間も良いものでした。

このように、島のあちこちに猫がいて、それぞれ好きな場所で気ままに過ごしていました。人にもすっかり慣れているようで、猫たちが人に合わせているというよりも、人のほうが猫の暮らしにおじゃましている。そんな感覚になることもありました。

無人島であるカイナイ島では、有志団体が猫たちの世話をしているそうです。訪れたときに見かけた猫たちは、どの子も健康そうでした。警戒心の強い子もおらず、ギスギスした雰囲気もありません。干渉しすぎず、でも離れすぎない、そっと寄り添うような程よい距離感が心地いいと感じました。

今回のカイナイ島への訪問は、カンボジアからの帰り道にたまたま開いた機内誌から始まりました。このように、この旅もどこかで次の旅へと繋がっていくのかもしれません。
【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
猫写真家。水中写真家・鍵井靖章氏との出会いをきっかけにカメラを始める。「猫×彩×旅」をテーマに、世界中を旅しながら各地で出会った猫たちを撮影。これまでに35ヶ国以上を訪れ、2023年には念願の世界一周を果たす。2023年、2024年に富士フォトギャラリー銀座にて個展を開催。その他企画展やSNS等を通じて作品を発表している。
Instagram:cat_serenade
X:naho_umineko
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