犬・猫を中心に、動物用のフードやミルクを製造、販売している森乳サンワールド。ペットだけではなく、動物園や水族館のいきものたちにもミルクを提供していることをご存じでしょうか。
今回は、森乳サンワールド創業55周年特別企画として、全国の動物園・水族館のスタッフさんにミルクと動物たちの関わりをインタビューしてもらいました。
第1回は、ジャイアントパンダに「パンダミルク」を与えているというアドベンチャーワールドにて、獣医師の尾﨑さんと飼育スタッフの真柴さんに前後編に分けて、お話しを伺いました!

インタビュイー:アドベンチャーワールドの獣医師の尾﨑さん(右側1列目)、飼育スタッフの真柴さん(左側1列目)
パンダミルクは必需品

―どのような経緯でパンダミルクを知りましたか?

―パンダミルクの使用を始めた当時の担当者が既に退職しているので正確には把握できていないのですが、上野動物園との情報交換で知ったと聞いています。パンダの飼育園が少ないので、当時から上野動物園、王子動物園、当パークで情報交換をしていました。


―パンダミルクはどのタイミングで準備しているのでしょうか?

―パンダが出産してからでは間に合わないので、妊娠が確認された時点で準備の一環として必ず手配します。

―その際には、上野動物園とも連絡を取られているのですか?

―出産の際には、特に上野動物園と連絡は取っていません。共同プロジェクトを行っている、中国の成都ジャイアントパンダ繁育研究基地に相談します。

―中国へは何を相談されるのでしょうか?

―成都ジャイアントパンダ繁育研究基地では独自のパンダミルクを既に使用しているので、「当パークでは森乳サンワールドのパンダミルクを使います」という報告と確認をします。


―森乳サンワールドのパンダミルクを使用して良かったことは何ですか?

―他のミルクを使ったことがないので比較はできませんが、パンダは双子が生まれる際には特に母乳量が足りなくなるので、必須だと感じています。母乳がたくさん出る動物ではないですし、野生で双子が生まれると1頭しか育てない動物なので、補助としてパンダミルクを与えることで双子を同時に育てることができます。



―当パークのパンダは、1~1歳半で子どもがひとり立ちします。野生下でも、だいたい1歳半~2歳くらいまで母乳を飲んでいるので、ひとり立ちした後にパンダミルクがないと、竹を食べられるようになるまで栄養が足りなくなってしまいます。ひとり立ちした後の半年から約1年は、パンダミルクをメインで与えていました。


―一頭で生まれて、母乳がしっかり出る場合でも、ひとり立ちの際にはパンダミルクを与えていますか?

―はい、与えています。ただし、ひとり立ちしてからスムーズにパンダミルクを飲めるわけではありません。ひとり立ちの少し前からパンダミルクを少量ずつ与えてミルクに慣らして、ひとり立ちした後に十分な量を飲めるように管理しています。


―代替乳は母乳が出れば必要ないと思っていましたが、ひとり立ちの時にも使うことで役に立っていたのですね。

―ミルクはちゃんとお皿から飲みます。

―母親の乳首から飲んでいたミルクをお皿からぺろぺろと飲むのが最初は難しいようです。口の周りをビタビタにして、お皿からこぼしながら飲んでいますよ。

いろいろなミルクを動物たちに与えています

―パンダミルク以外に当社の製品を使ったことはありますか?

―海獣ミルクはイルカ用に、犬・猫用の療法食であるチューブ・ダイエットはチーターなどの猫科の動物に与えています。チューブ・ダイエットの「猫用キドナ」はトレーニングでかなり使っています。



―いろいろなメーカーさんが犬用や猫用ミルクを出していますが、未だに動物園の動物にはどのミルクが合うのか分かりません。トラの人工哺育をした際には、何社からもミルクを購入して試しました。最終的には森乳サンワールドの「ゴールデンドッグミルク」と、「ワンラックキャットミルク」を使っていましたね。実は、猫科や小型の草食動物とかも犬用ミルクが合っていました。牛用とかヤギ用になると、栄養バランスとか脂肪分とかが少し違うんですよね。
他の動物園さんでもかなり使っていると思いますよ! 犬用が多いと思います。


―実は、フラミンゴにも犬用ミルクを使っています。

―フラミンゴ!? 鳥にミルクのイメージがないので意外です。

―フラミンゴだけですけどね。

―動物たちにミルクが合うかどうかは、どのように判断していますか?

―他の園館の情報も参考にしていますが、最終的には個体差で下痢や便秘があるかどうかで判断します。

―便の状態が一番わかりやすい変化なのでしょうか?

―そうですね、消化・吸収に関わるので便の状態が分かりやすいです。
生まれてからすぐでは合うかどうか分からないので、いくつかのミルクを用意しておきます。例えば、イルカが妊娠したら、使えるかは分からないですが、海獣ミルクは必ず準備しておくようにしています。


―ミルクの成分として、乳糖は気になりますか?

―トラのときに初めて気にしましたが、それまでは気にしたことがありませんでした。

―乳糖が多いと下痢をしやすいということですか?

―当パークではそのような話になっていました。
どこの園館もそうだと思いますが、人工哺育をしなくてもいいように出産の環境を整えてお母さんの手助けをするので、ミルクでここまで成長しましたという実例が多くありません。特に希少動物になればなるほど情報が限られています。そのため、試行錯誤を繰り返すしかないのが現状です。

―動物の赤ちゃんを育てるうえで、気を付けていることは何ですか?

―動物の種類によりますが、母乳を飲んだ量や体重の増減、便の状態などを過去のデータと比べながら把握するようにしています。
また、基本的には親に育ててもらえるようにサポートしますが、親がナーバスになることもあるので、環境づくりには特に気を付けています。からだが小さいうちは体力も少ないので、温度や湿度もしっかり管理しています。

―すべてのデータを記録しているのですか?

―基本的にはすべて記録します。希少種の場合は特に重要です。
担当者が変わることもあるので、過去のデータがあると管理しやすいです。

―飼育担当者は敢えてローテーションさせているのですか?

―いろいろな知識や技術を得たり交換し合ったりするために、定期的にローテーションしています。

―繁殖のチャンスは限られていて、パンダは1年に2~3回ですが、他の動物の人工哺育にチャレンジする機会は少ないので、対応できるように人材育成は力を入れています。

―2024年の夏に生まれたナマケモノの赤ちゃんは人工哺育ですか?

―人工哺育です。出産翌日にお母さんが亡くなってしまいました。ナマケモノの人工哺育は当パークでは初めてなので、経験のある東山動植物園や千葉市動物公園に連絡を取りました。色々と試してみた結果、ヤギミルクが合っていました。「ヤギなんだ~」と思いましたね。

―ドッグミルクも試しましたが、ナマケモノにはヤギミルクの方が合っていました。


―乳首も動物によって違うので、哺乳器もいろいろな種類を揃えて試しましたね。

―哺乳器は細さも違いますよね。

―クロスか丸か、硬さもゴムやシリコンなどでも異なります。やはり、例数が多い動物はデータがありますが、ない場合は多くの種類を揃えます。

おわりに
前編では、動物用ミルクと、動物たちの飼育・哺育についてお話しをお聞きしました。動物たちの体調管理をしながら、試行錯誤を繰り返すスタッフさんたちの努力が垣間見えたのではないでしょうか。
後編では、パンダの飼育と動物用ミルクの今後について伺います。ぜひチェックしてみてください!
後編はこちら:準備中
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◎森乳サンワールドのミルクに関するの過去の記事はこちらから