フォトエッセイ 猫とのほほん日和【第23回】猫の名前を呼ぶ旅

名前を呼ぶたびに返事をしてくれる猫がいます。例えば、「◯◯ちゃん!」と呼びかけると、「にゃ、にゃ」と猫が答えるという具合です。
このようにこちらの呼びかけに返事をもらうと、言葉ではない何かで通じ合っている気持ちになれます。

ずっと猫の写真を撮ってきましたが、気持ちと雰囲気の波長が合うと良い関係性ができて、愛を感じる写真が撮れるのだと感じます。それは、言葉の通じない外国で身振り手振りで意思を伝え合う、そんな感じに似ています。
外国に行ったときに「表情やボディランゲージで意外と伝わることが多いなぁ」、と感じることが多くなったのも、実は猫ちゃんのおかげかもしれません。

さて、僕の家の近所には、地域猫として生きているハチワレのセロくんがいます。
僕が「セロ!」と呼ぶと、必ずと言っていいほど返事をしてくれます。
僕は毎回そのやりとりがうれしくて、猫と人間の関係は素晴らしいなと感じるひとときを過ごしています。

話は変わりますが、最近訪れたある島で、茶トラの「小寅」が挨拶してくれました。

「よう来たにゃー。一緒に遊んでくれにゃー。」と言っている気がします。

この子は最近気になっている猫で、僕が大好きな「車寅次郎」(山田洋次監督の男はつらいよシリーズのあの寅さんです)にちなんで名付けました(茶トラ猫ですし)。頭がよくてかわいいです。

子猫のときから、小寅のお母さんが世話をしている合間に一緒に遊んだりしていたので、すっかり馴染みです。
性格はこう見えてやんちゃで個性が強く、会うたびに小寅ともっと仲良くなりたいと思います。

子猫から成猫に成長している途中なのですが、基本一匹狼で群れることなく生きているのもかっこいいところです。
力を抜いて寝ている姿にも愛らしさを感じます。

「小寅!」と呼ぶたびに、こちらを気にしてくれます。
名前の話をするはずが、いつのまにか小寅が可愛いという話になってしまいました。

昼過ぎや夕方前になると、みんなご飯を食べてから遊ぼうと寄ってきます。この1番上に居るのが小寅です。

みんな仲がいいのでしっぽもピーんと立っていて、じゃれあう様子からも猫同士の仲の良さが見てとれます。

第22回でも登場したしまちゃんが小寅を連れてやってきました。
彼らの目に映っている世界を見てみたいものです。

【文・写真】
山本正義(やまもと・まさよし)
大阪在住の猫写真家。猫が立ち上がる瞬間をとらえた「立ち猫」写真でブレーク。ちょっぴり力の抜けた「脱力猫」、凄い勢いの「猫来る」、気の抜けた感じの「舌猫(ぺろにゃん)」、猫が集団で行進する「ずんずんずん」など、愛らしい猫たちをとらえた写真とユニークなワードセンスがSNSなどで注目を集めている。写真展、メディア出演、講演などで各地を飛び回る。写真集に『立ち猫』(ナツメ社)。
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