一般社団法人ペットフード協会の調べによると、2022~2024年における猫の平均寿命は、以下のように年々延びていることが判明しました。
猫全体 | 完全室内外 | 外に出る | |
2022年 | 15.62歳 | 16.02歳 | 14.24歳 |
2023年 | 15.79歳 | 16.25歳 | 14.18歳 |
2024年 | 15.92歳 | 16.34歳 | 14.24歳 |
日頃の診察でも15歳の猫は珍しくなく、年齢以上に若々しい猫が増えたという印象があります。
猫の寿命は今後も延びると予想される中で、「エイジングケア」はとても重要です。この長生きできる時代に、できるだけ健康で穏やかに過ごしてほしいと願うオーナーさんは多いのではないでしょうか?
今回は、自宅でできるエイジングケアについてお話しします。

猫のエイジングケアは何歳から意識すれば良い?
2021年版の『AAHA*¹/AAFP*² 猫のライフステージガイドライン』では、10歳以上(猫種によっては8歳以上)をシニア期、15歳以上を高齢期とし、ライフステージに応じた自宅でのケアや動物病院での診療を推奨しています。
ただし、このステージングはあくまでも目安です。年齢という数字にとらわれず、個々の猫に合わせた柔軟なケアが大切です。同じ10歳でも、まったく健康に問題がない猫もいれば、持病があり日頃から投薬が欠かせない猫もいます。
猫の平均寿命が15歳を超えた今、8歳という思いのほか早いタイミングからシニア期を意識しておくことが重要です。
*¹ AAHA:American Animal Hospital Association(全米動物病院協会)
*² AAFP:American Association of Feline Practitioners(全米猫獣医師協会)
猫のエイジングケアが大切な理由
猫は、平均寿命の約半分の時間をシニア期から高齢期として過ごすことになります。つまり、エイジングケア次第で、寿命の半分近くの生活の質が大きく変わる可能性があるということです。
どの猫も等しく歳をとりますが、高齢期をどのように過ごせるかは、エイジングケアによって大きく左右されると言っても過言ではありません。

猫のために自宅でできるエイジングケア
1.感染症などの予防
一般的な予防接種(混合ワクチン)やノミ、ダニ、フィラリアの予防は必ず行いましょう。「外に出さないから」「他の猫と接触しないから」といった理由で予防をしないことはおすすめできません。
地域や生活環境によって、必要な予防の種類や頻度は異なります。かかりつけの先生に相談して、適切な予防を心がけましょう。
2.定期的な体重測定
体重測定は、自宅で比較的簡単にできる健康管理の一つです。猫に多い慢性腎臓病を発症したとき、体重が重い方が長生きできるというデータもあります。適切な体重を維持することは、健康管理の鍵といえるでしょう。
3.小さな変化にも目を向ける
猫は痛みや体調不良を隠すのがとても上手な動物です。そのため、自宅で体調の変化に気づいたときには、すでに病態が進行していることも少なくありません。
食欲や排泄の様子はもちろんのこと、以下のような小さな変化にも注意を払いましょう。
・遊び方:高いところに登るかどうか、遊ぶ時間の長さや活力の有無、他の猫との関わり方の変化
・食べ方:食べ終わるまでにかかる時間、口に痛みがありそうかなど
・睡眠:熟睡できているか、寝ているときの呼吸回数
・身づくろい:爪研ぎをしているか、毛づくろいができているか、体が汚れていないか、など
こうした変化を「歳だから」と見過ごさずに、「もしかしたら調子が悪いのかもしれない」という視点で日々の観察をしてください。

4.ライフステージに合わせて生活環境を整える
食事の内容やトイレの形状、給水方法などは、ライフステージや持病によって柔軟に変えることが大切です。
また、高齢期だからといって寝てばかりにはせずに、おもちゃなどを活用して遊ぶ時間も設けると良いでしょう。
5.定期的な検診
犬と比較すると、猫は動物病院を受診する機会が少なくなる傾向にあります。自宅での観察だけでは気づけない病気のサインを、病院での血液検査や尿検査、血圧測定などで見つけることができます。シニア期以降は最低でも1年に1回、高齢期以降は半年に1回は病院を受診して、その子にあった検診を受けるようにしましょう。
おわりに
猫の寿命が伸びてきたとはいえ、私たち人間と比べれば、その一生は短いものです。だからこそ、大切な家族である猫がいつまでも元気で健やかに過ごせるように、ぜひ無理のないところからエイジングケアを始めてみてはいかがでしょうか?

[参考文献]
・一般社団法人ペットフード協会、令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査、https://petfood.or.jp/pdf/data/2024/9.pdf
・American Animal Hospital Association, American Association of Feline Practitioners, and International Society of Feline Medicine, “2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines”, 2021.
・Michael Ray et al. “2021 AAFP Feline Senior Care Guidelines”, Journal of Feline Medicine and Surgery, 23, 613–638, 2021.
・L M Freeman et al. “Evaluation of Weight Loss Over Time in Cats with Chronic Kidney Disease”, J Vet Intern Med, 2016.
【執筆】
酒井和紀(さかい・あき)
獣医師。麻布大学獣医学部卒業後、都内動物病院にて一般診療および眼科診療を担当。その後、製薬会社で犬猫用サプリメントの学術を担当する傍ら、動物病院での診療を担当し、2025年2月TOMOどうぶつ病院代々木上原(HP:http://tomoahyoyogiuehara.com)を開院。
Instagram:@tomoanimalhospital
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