動物も人も共に守るための対策 人獣共通感染症:SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

動物にも人にも感染する人獣共通感染症の一つであるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)。マダニが媒介し、特に猫が感染すると致死率が高いことで知られています。猫に限らず、重症化すると死に至る感染症ですが、正しい知識と予防策があれば過度に恐れる必要はありません。

今回は、そんなSFTSの正しい知識を一緒に学んでみましょう。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の日本での感染状況と危険性

犬・猫のSFTS感染事例は、2024年までは主に西日本~中部エリアで報告されていました。しかし、2025年5~6月には、関東圏初となる感染事例が茨城県で報告されました。

猫・犬それぞれの報告件数をもとに日本地図をグラデーション。SFTSは徐々に拡大傾向にある*¹

SFTSに感染すると、以下の通り致死率が高く、非常に危険です。

致死率27パーセント
高齢者や基礎疾患のある方は重症化しやすいことが分かっています*²。

致死率44パーセント
猫と比べると軽症なことが多く、感染しても発症しない場合もあります*³。

致死率約60パーセント
非常に重症な経過をたどることが多いとされています*³。

人・犬・猫に共通する症状として、発熱、白血球や血小板の減少、嘔吐、下痢などがあげられます。
また、SFTSに感染した猫のほぼ全てが室外に出る猫であったこと*⁴や、駆虫剤の投与を受けていない猫が多かったこと*⁵がわかっています。

保護活動から感染するケースもありますが、犬や猫の飼育放棄や保護活動を止めることは、かえって社会全体の感染リスクを高めてしまうと考えられています。
動物病院や、飼い主とその家族が協力して対策に取り組むことが何よりも重要です。

犬・猫と共に暮らす人ができるSFTS対策

犬や猫をSFTSに感染させないためにできることとして、以下のことがあげられます。

・犬は散歩時に服を着せるなどのマダニの付着を防ぐ工夫をし、散歩後には全身をチェックする
・猫は完全室内飼育をする
・駆虫剤は、毎月確実に投与する(通年投与が推奨されている)

実は、駆虫剤でSFTSを直接予防できるのかは、まだ分かっていません。しかし、マダニの寄生を最低限に抑え、犬・猫が感染していた場合にSFTSウイルス保有マダニを拡散させないという観点から、駆虫剤によるマダニの駆除は重要です。駆虫剤の使用については、動物病院と相談してください。

SFTSウィルスの感染経路

SFTSウィルスは、マダニに咬まれることで感染します。野生動物や犬・猫などのペットはもちろん、人に直接感染することもあります。

また、感染した動物の血液や体液を介して人に感染することもあるため、感染対策はしっかりと行いましょう。

マダニの寄生を見つけたときの対処法

犬猫のSFTS感染エリアが拡大しています。背景*⁶としては、野生動物の都市進出や林縁の拡大*⁷、温暖化などが考えられます。
いつマダニの寄生を発見しても対処できるように、以下のことを憶えておきましょう。

・素手で触らずに迅速に動物病院を受診する

・犬・猫の体調変化は獣医師に相談する

・自身や家族の体調に異変があれば、医療機関を受診する

おわりに

冒頭で述べた通り、SFTSは致死率が非常に高い人獣共通感染症ですが、正しい知識と予防策を知っていれば過度に恐れる必要はありません。
動物病院と家族が協力し、動物も人も共に守るための対策に取り組むことが何よりも重要です。そして、少しでも犬・猫の様子に違和感を感じたら、すぐに動物病院に相談しましょう。

[引用文献]
※ウェブサイトの最終閲覧日はいずれも2025年7月10日
*¹ 国立健康危機管理研究機構、「動物におけるSFTS 県別・月別発生状況」、https://www.niid.jihs.go.jp/content2/research_department/vet/from-vet.html
*² Kobayashi Y. et al, “Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome, Japan, 2013-2017”, Emerg Infect Dis, Apr;26, 4, 692-699, 2020
*³ 国立健康危機管理研究機構、「獣医療関係者のSFTS発症動物対策マニュアル」、https://www.niid.jihs.go.jp/content2/research_department/vet/from-vet.html
*⁴ 朴ら、「ネコにおける重症熱性血小板減少症候群」、 ウイルス、第69 巻、第2 号、pp.169-176、2019年
*⁵ 厚生労働省、令和3年度 動物由来感染症対策技術研修会、「 SFTSの最新の状況について」、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00406.html
*⁶ 国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所、「高致命率のマダニ媒介性感染症SFTSの感染が発生しやすい環境を解明—野生動物と人間の活動域が交わる境界では特に注意が必要—」、https://www.ffpri.go.jp/press/2025/20250408/index.html
*⁷ 辻ら、「 Landsatデータを用いた林縁周辺における土地被覆変化の把握」、第131回日本森林学会大会、2020年

【執筆】
ゾエティス・ジャパン株式会社
動物用医薬品やワクチン、診断検査の研究開発・製造・販売を中心に、遺伝子検査やバイオデバイスなどのサービスも提供している動物用医薬品・医療機器メーカー。

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