犬の関節炎ってどんな病気?
「関節炎」とは、関節に炎症が起きることで痛みや腫れ、動かしづらさが出る病気です。人間でも高齢になると膝が痛くなるように、犬も年齢とともに関節にトラブルを抱えることが増えてきます。
体重が重い犬や関節に負担のかかりやすい犬種(ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、コーギー、柴犬など)は特に注意が必要です*¹*²。しかし、小型犬でも起こることもあり、怪我や先天的な骨の異常、激しい運動のしすぎなどが原因で、若いうちから関節に負担がかかることもあります。
どんな症状が出るの?
関節炎があると、以下のような症状がみられることがあります。
・散歩に行きたがらなくなる
・歩き方がおかしい、足を引きずる
・寝起きや立ち上がりに時間がかかる
・階段の上り下りを嫌がる
・足を触られることや抱っこされることを嫌がる
初めのうちは「ちょっと元気がないだけかな?」と思う程度かもしれませんが、進行すると痛みが強くなり、日常生活に支障が出てくることも少なくありません。
このような症状が見られたときには、動物病院でX線(レントゲン)検査を受けることで、関節の状態を客観的に確認することができます。関節の変形や骨のトゲ(骨棘)、関節の隙間の変化などが見つかれば診断に役立ちます。少しでも違和感があれば早めに獣医師に相談し、必要であれば検査を受けてみることが大切です。

関節炎の治療法は?
関節炎の治療には様々な選択肢があります。最近では、従来の方法に加えてより体に優しく、効果的な新しい治療も登場しています。
薬による治療(消炎鎮痛剤)
痛みや炎症を抑えるために、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)などの薬を使用します。長期使用の場合には副作用に注意する必要があるため、定期的な血液検査を行いながら慎重に治療を進めます。
サプリメントや食事療法
グルコサミンやコンドロイチン、オメガ3脂肪酸など、関節をサポートする成分を含んだサプリメントや療法食があります。これらは関節の炎症を抑えたり、軟骨を保護したりする効果が期待されています。
体重管理と運動
肥満は関節への大きな負担になります。適切な体重を保つことで、関節炎の進行を防ぐことができます。また、痛みが少ない範囲での軽い運動(例:水中トレッドミルなど)も有効です。
リハビリ・理学療法(フィジカルセラピー)
動物病院のリハビリ施設では、水中歩行、ストレッチ、温熱機器を用いたマッサージなどが行われています。関節の動きを保ちながら筋力を維持することができ、痛みの軽減にもつながります。


外科手術
進行した関節炎や、他の治療で効果がみられない場合には手術が検討されます。関節の一部を整形したり、場合によっては人工関節を入れることもあります。

予防・早期発見のためにできること
関節炎は「年をとったから仕方ない」と思われがちですが、早期発見・対応によって進行をゆるやかにすることができます。関節炎を予防するために、以下のことに注意してみましょう。
・日頃の観察:散歩の様子や立ち上がるときの動き、足の動かし方などをよく観察しましょう。
・定期健診:年1~2回の健康診断で関節のチェックをしておくと安心です。
・体重管理:太りすぎは関節への大きな負担になります。適正体重を保ちましょう
・床の滑り止め対策:フローリングで滑らないようにマットなどを敷くことも効果的です。
まとめ
犬の関節炎は、日常生活の中で気づくことができる病気です。少しの変化に気づいてあげることが、愛犬の健康を守る第一歩です。「最近ちょっと元気がないな」「歩き方が変かも?」と思ったら、ぜひ獣医師に相談してみて下さい。
愛犬がいつまでも元気に歩けるように、毎日のケアと気づきがとても大切です。
[参考文献]
*¹ Smith GK, et al, “Evaluation of risk factors for degenerative joint disease associated with hip dysplasia in German Shepherd Dogs, Golden Retrievers, Labrador Retrievers and Rottweilers”, J Am Vet Med Assoc, 219:1719-1724, 2001
*² Anderson K L, et al, “Prevalence, duration and risk factors for appendicular osteoarthritis in a UK dog population under primary veterinary care”, 8:641-654, 2018
【執筆者】
菊地勇輝(きくち・ゆうき)
1992年生まれ。北里大学獣医学部卒業後、YPC東京動物整形外科病院にて勤務し、現在では年間約300症例の整形外科手術を執刀。勤務の傍ら日本獣医生命科学大学獣医学専攻博士課程に在籍し、胸腰椎の外科的治療に関する研究に邁進。2022年より日本獣医麻酔外科学会ICT委員を務める。
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