この症状もしかして? 飼い主のための犬の病気入門【第4回】アトピー性皮膚炎

みなさんの愛犬の中にも、かゆみや皮膚トラブルに悩んでいる子は多いのではないでしょうか?
今回は、犬に多い皮膚の病気「犬アトピー性皮膚炎」について、わかりやすくご紹介します。

犬アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

犬のアトピー性皮膚炎は、アレルギー体質の犬に見られる慢性的な皮膚病です。主な原因は、空気中にあるハウスダストやチリダニ、花粉、カビなどの「環境中アレルゲン」です。これらが皮膚から体に入り込むことで、強いかゆみや炎症が引き起こされます。重症度によって、かゆみの程度は異なります。

症状には季節性があり、特にチリダニが多く発生する梅雨~10月下旬ごろまでは、かゆみが強く出ることが多いです。
食物アレルギーと併発する場合は、1年中かゆみがあり、嘔吐や下痢などの消化器症状を伴うこともあります。

症状のサインとなりやすい犬種

犬アトピー性皮膚炎のサインには次のようなものがあります。

体をかいたり、足(特に前足)をしきりになめる
耳が臭う、かゆがる、赤くなる
腹部やわきの下、足先、目のまわりが赤くなる
毛が抜ける、皮膚が黒ずんでくる

アトピー性皮膚炎を発症した柴犬の症例。毛が抜けたり皮膚が黒ずんだりしている
治療後の様子。毛が生え、皮膚の黒ずみもなくなった

症状は生後6か月〜3歳ごろに発症することが多いです。

アトピー性皮膚炎に特になりやすい犬種は以下の通りです。

・フレンチ・ブルドッグ
・柴犬
・シー・ズー
・トイ・プードル
・ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
・ミニチュア・ダックスフンド

アトピー性皮膚炎を発症したフレンチ・ブルドッグの治療前(上)と治療後(下)

主な治療法

アトピー性皮膚炎は完治こそ難しいですが、症状を抑えて快適に過ごせるようにすることは十分可能です。近年は犬専用の良い薬も複数発売され、治療の選択肢も増えています。

・飲み薬(ステロイド、抗ヒスタミン薬、シクロスポリンなど)
・かゆみを抑える新薬
・減感作療法*¹
・月1回の注射薬
・ステロイド外用薬
・薬用シャンプーや保湿剤によるスキンケア
・アレルゲン除去食(食事療法)

*¹アレルゲンを意図的に体内に投与して、アレルギー反応に身体を慣れさせることで症状を緩和していく治療法

症状と体質、生活環境に合わせてベストな組み合わせを獣医師と一緒に考えましょう。

予防とおうちでのケア

前述の通り、アトピー性皮膚炎の症状を軽くすることや悪化を防ぐことは可能です。自宅でできることをまとめました。

・こまめに掃除をして、空気清浄機でチリダニやホコリを減らす
・薬用シャンプーで皮膚を清潔に保つ
・保湿ケアを続けて、皮膚のバリア機能を高める
・「かゆがっている」「耳を気にしている」など、日常の小さな変化に早めに気づけるようにする

シャンプーの様子

おわりに

犬アトピー性皮膚炎は、かゆみや炎症を繰り返す病気ですが、きちんと診断をして継続的に投薬治療や自宅ケアを行うことでコントロールできる病気です。
毎日の観察を欠かさずにし、上記の症状があればすぐに動物病院へ相談しましょう。

【執筆者】
横井愼一(よこい・しんいち)
獣医師、VCA Japan 泉南動物病院(大阪府)院長。日本獣医皮膚科学会認定医で、皮膚科、耳科、肥満指導に特に力を入れている。NPO法人しっぽのごえん代表理事、一般社団法人日本獣医皮膚科学会理事、一般社団法人日本臨床獣医学フォーラム幹事なども務める。著書に『専門医に学ぶ 長生き猫ダイエット』(監修、駒草出版)。

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