あの鳥のここがたまらない!身近な野鳥の偏愛観察記【第3回】実は特別?日本のスズメの「黒いほっぺ」

スズメの塗り絵を用意しました。さあ、あなたなら何色で塗りますか?

「あれ?頭って何色だっけ?」
「お腹は真っ白でよかったかな…?」

いざ塗ろうとすると意外と手が止まってしまうのではないでしょうか?
毎日見ているはずなのに、私たちはスズメのことをちゃんと見ていないのかもしれません。

今回の推しポイントは、そんな知っているようで知らない、スズメの「色」についてです。実はこの小さな体に、生きるための工夫が隠されています。

「いろんな茶色」は、完璧な迷彩服

では、本物のスズメをじっくり観察してみましょう。彼らが決して「茶色一色」ではないことに気づくはずです。

まず、頭。
やや赤みのある、チョコレートのような茶色をしています。そして、背中のほうは黄土色と濃い茶色がまだらになった、複雑な模様が広がっています。

お腹はといえば、ふんわりと優しいくすんだクリーム色。このように、パーツごとに少しずつ色が違うのです。

これだから、先ほどの塗り絵が難しかったわけです。

では、なぜこんなに複雑な色(模様)をしているのでしょうか。ただのお洒落? いえいえ、もちろん理由があります。
秘密は彼らの暮らしにあります。スズメが地面に降りてエサをついばんでいる様子をよく見ると思います。
そして、スズメの天敵は、上空から狙うタカや、地上で待ち構えるネコです。

彼らから身を守るには、地面の土や、枯葉の色に似せるのが正解。そう「保護色」です。自然の中に溶け込むことで、天敵から見つかりにくくしているのでしょう。
この精巧な「迷彩服」は、スズメが自然界でたくましく生きていくために欠かせない、命を守るための機能美だったのです!

そのほっぺ、世界ではレアです

さて、スズメのチャームポイントでもある「ほっぺの黒い斑点」は忘れてはいけませんね。
でも、私たちが「スズメのトレードマーク」だと思っているこの黒い点、実は世界的に見たらかなり珍しいケースだって、ご存知でしたか?

世界で最も広く分布しているスズメは「イエスズメ」という種類なのですが、彼らにはほっぺに黒い点がありません。ためしに画像検索で「sparrow」と探してみてください。黒い点のないスズメがずらりと表示されるはずです。
つまり、日本のスズメの模様はレア。なんだか、ちょっと特別な存在に思えてきませんか?

一説には、この黒い点や喉元にあるネクタイの黒が濃いほど、オスの強さを表すのだといわれています。
でも、スズメはオスとメスの見た目がほとんど同じ。営巣時期につがいが出入りしているところを観察していても「どっちがどっち?」と首をかしげるほど。
明らかに黒っぽいからオスかと思っても、もしかしたらメスかもしれません。

解像度を上げると、日常はもっと面白くなる

普段なにげなく見ている景色も、ほんの少し解像度を上げて観察してみるだけで、全く違う世界が見えてきます。野鳥観察の面白さは、そんな発見の瞬間に詰まっていると思います。
明日から、駅のホームや公園でスズメを見かけたら、ぜひ立ち止まってその「色」をじっくりと眺めてみてください。きっと、昨日までとは違う彼らの姿に気がつくはずです。

【文・イラスト】
くますけ
子どもたちに自然の楽しさをやわらかく伝える専門家。自然ガイド歴17年。関東平野の真ん中で筑波山を眺めながら、すくすくと育つ。20代最後の挑戦で、体験型環境教育を実践するホールアース自然学校へ転職。柏崎・夢の森公園での勤務を経て独立。くだけた説明が行政・企業・先生から好評。おうち時間が増えたのをきっかけにイラストを描き始め、公園や庭で見られる自然の発見や誰かに言いたくなる話をSNSで発信している。著書に「エナガの重さはワンコイン」(山と渓谷社)。
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