災害救助犬のお仕事を知ろう! 熱海土石流災害のケースより

本稿は季刊誌の「wan」2023年10月号(9月14日発売)に掲載している記事の改変版です。詳しい情報はそちらをご覧ください。なお、初出の発行日の関係上、令和6年能登半島地震に関する情報は含まれておりません。

ニュースなどで「災害救助犬」という名前を聞いたことがある人は多いはず。でも、実際にどんなことをしているのかはあまり知られていないのでは……。

熱海で起きた災害の事例から、現場で活躍する救助犬の活動内容を紹介します。

災害現場で活躍する犬たち

災害の実情と災害現場で活躍するワンコについて、筆者が顧問をしている特定非営利活動法人 日本捜索救助犬協会の活動を通して紹介します。

2004年に設立された当協会は、土砂や瓦礫に埋まった被災者を見つける捜索救助犬の育成のほか、被災地での活動や行方不明者の捜索などをしています。現在の会員数は20名で、捜索救助犬は15頭所属しています。これまでに派遣された大きな災害としては、新潟県中越地震、東日本大震災、熱海市伊豆山土石流災害(以下「熱海土石流災害」)などが挙げられ、多くの現場で活躍しています。

ここでは、近年発生した熱海土石流災害について報告します。

熱海土石流災害での1日

熱海土石流災害は、2021年7月3日に静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川で発生した、大規模な土砂災害です。発生当初から自衛官や消防官、警察官ら約1000人が行方不明者の捜索活動にあたりました。当協会の災害救助犬が熱海土石流災害の捜索活動に参加したのは、7月12日・14日・23日です。

ここでは獣医療支援者としての活動意義も含めて、筆者がヘルパーとして同行した7月14日の捜索活動の1日の流れを紹介します。

まず、早朝4時に集合。5時にはほかの災害救助犬の団体と協働するため、前日の状況や注意事項、当日の現場の役割分担などを申し送りします。

写真:朝5時に申し送りをしている様子

その後現場へ移動すると全国から消防車が集まっており、騒然としていました。まだ一般のボランティアも入れず、現場には土砂が2メートル近く堆積しており、雨で足元がぬかるんでいるという状況でした。

写真:現場に到着した災害救助犬

3頭の災害救助犬が捜索するのにかかった時間は3~4時間。通常、瓦礫の下の行方不明者を探し当てるときは、1頭がニオイを感知(アラート)したらもう1頭で再度確認し、2頭ともアラートした場合は瓦礫を人間の手でていねいに撤去します。アラートがない場合は重機で瓦礫を撤去するので、重要な役割を担う仕事なのです。この日は行方不明者を発見できませんでしたが、災害救助犬は雨が降るなかでもがんばって仕事をしてくれました。

午前中の活動終了後、救助犬の汚れを洗い流すため、近くの水の出ている避難所まで山を下り、水道を借りて足に付いた泥を流しました。すると、雨のため瓦礫で滑ったときに皮膚を裂傷したのであろう傷があったため、ヘルパーである私が応急処置を施しました。

現場ではこのように、獣医師や動物看護師(現在は「愛玩動物看護師」)も災害救助犬のヘルパーとして動いており、捜索活動を支える重要な役目を果たしています。

災害救助犬の団体の課題

今回紹介した災害救助犬の活動は、国や市町村からの支援を一切受けていません。救助犬を育てる育成費や現場に行くための移動費、現場で無駄なく動くための装備費のすべてを寄付金や自己資金で対応するしかない状況なので、活動が制限されてしまう場合もあります。

災害救助犬の活動を継続し、ひとりでも多くの命を助けるには皆さんからの支援が必要です。当協会のウェブサイトやFacebookに支援方法の詳細を掲載しています。活動に興味がわいた方は、ぜひご覧下さい。

特定非営利活動法人 日本捜索救助犬協会

公式サイト:https://www.japan-srda.net/
Facebook:https://www.facebook.com/526705787536732

【執筆者】
小沼 守(おぬま・まもる)
獣医師、博士(獣医学)。千葉科学大学危機管理学部 教授、大相模動物クリニック名誉院長。NPO法人日本捜索救助犬協会顧問、動物危機管理教育研究センター副センター長、シニア・フェロー他兼務。熱海土石流災害、西日本豪雨災害、2019年台風19号豪雨災害などでボランティアや調査活動、さらにNPO法人日本捜索救助犬協会にて捜索救助犬サポーター検定の構築もしている。