動物園のこんな生きもの【第1回】神戸どうぶつ王国・ワオキツネザル

皆さんは「ワオキツネザル」という生きものをご存知でしょうか。

ワオキツネザルは、マダガスカル島に生息する体長40~50センチメートル程度のキツネザル科の生きものです。尻尾のしましまが輪っか模様のため「輪っかの尾のキツネザル」→「ワオキツネザル」と名付けられました。

今回は、神戸どうぶつ王国で観察できるワオキツネザルのユニークな特徴について紹介します。

写真:ワオキツネザル

日向ぼっこで体温調節

ワオキツネザルは体温調節機能が発達していないため、寒いときには日光浴で体を温めます。

写真:木に座って日光浴をするワオキツネザル

いろいろな動物園で、お腹を広げて日当たりの良いところに座っているワオキツネザルが見られますが、神戸どうぶつ王国のワオキツネザルの様子は一味違います。日光よりも効率的な、文明の利器「ヒーター」を使うのです。

もちろん太陽が出ているときには日向ぼっこで暖を取りますが、曇っていて日差しの弱い日にはヒーターの方が暖かいのでしょう。まれにヒーターの前に4、5頭が集まっているときは、場所取り合戦をしているような可愛い姿が見られます。

写真:ヒーターにあたるワオキツネザル

一方で暑いときには、コンクリートの床の日陰に寝転がって体を冷やしている姿が見られます。背中を冷やしたいときは仰向け、お腹を冷やしたいときはうつ伏せなのでしょうか。野生を忘れてしまったのでは、と心配になるほどリラックスした寝転がりっぷりですね。

写真:コンクリートの床に寝転がるワオキツネザル

上の写真からわかる通り、神戸どうぶつ王国でワオキツネザルなどが暮らしている「アフリカの湿地」エリアには、私たちと生きものを隔てるガラスがないため、その姿をより身近に感じられます。

体臭が強さの証!?

ワオキツネザルの強さは体臭によって決まります。

メスの臭腺は陰部にあります。オスの臭腺は陰部や手首などにあり、臭腺から強烈なニオイを発します。そのニオイの強烈さが、生きものとしての強さの指標となっているようです。

まずはニオイの強さで勝負。それでも決着がつかない場合は、取っ組み合いの喧嘩になります。ギャグ漫画みたいな世界観ですね!

ワオキツネザルのニオイの強さは健康状態と比例し、怪我した個体はニオイが弱くなるという研究データがあります。野生環境では、怪我してしまいニオイが弱くなった個体は自然と淘汰されていくのかもしれません。

写真:仲間のニオイを嗅ぐワオキツネザル

ずっと見ていたくなる豊かな表情

ワオキツネザルを長時間観察していても飽きがこない理由は、その豊かな表情にあります。

仲間をぼーっと観察していたり、どこか羨ましそうな表情で眺めていたり。彼らの気持ちを表すように目まぐるしく変化する表情は、見ているだけで彼らの心が覗けるような楽しさがあります。

写真:個性豊かな表情を見せるワオキツネザル

下の写真は、仲間の餌を狙っている様子のワオキツネザルです。自分でも餌を持っているのですが、隣の子が食べている餌の方がおいしそうに見えるのでしょう。友達のおもちゃが欲しくなる2、3歳の子どものような無邪気さがあり、お気に入りの1枚です。

写真:仲間の食べている餌を見るワオキツネザル

このように、自分がその生きものを好きな理由や、その生きものの特徴を深掘りしながら観察すると、動物園がより楽しくなるのでおススメです。

※写真はすべて神戸どうぶつ王国 https://www.kobe-oukoku.com/(撮影・あき)

【文・写真】
あき
1996年大阪府生まれ、東京都在住。水族館や水中、音楽ライブの撮影のほか、雑誌、Webメディアへの寄稿などを行う。2017年、水族館の生きものを綺麗に撮影したいと思い、写真を始める。2023年、国際フォトコンテスト8TH 35AWARDS「UNDERWATER PHOTOGRAPHY」で100Best photo選出、Top35 photographers選出。『幻想的な水族館の世界カレンダー2024』(緑書房)が好評発売中。
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