フォトエッセイ 猫に呼ばれて世界の街へ【第6回】道案内をしてくれた猫(ギリシャ)

迷路のような島で猫に導かれ

イドラ島は、ギリシャの首都アテネにあるピレウス港から高速船で行くことができます。アテネから比較的近いので、日帰りで訪れる観光客がほとんどのようです。

私がイドラ島に向かうために乗った船の名前は「Flying Cat 6」でした。なんだか猫に出会えそうな気がして、ワクワクしながら乗船しました。

到着した時にはすっかり日が暮れており、港を照らす街灯が島をすてきにライトアップしていました。

イドラ島は道が狭く、迷路のようでした。車やバイク、自転車などは原則通行禁止です。

さっそくGoogleマップを頼りに宿泊先に向かって進んでいましたが、当時持っていたスマートフォンは迷路のような道ではGPSが正常に機能しなくなるため、自分の位置を見失って完全に迷子になってしまいました。

周りに人の姿も見当たらず、薄暗い階段だらけの道で途方に暮れていると、すこし離れたところに1匹の猫がゆっくりと歩いている姿を見つけました。

やがて猫は歩くのをやめて、こちらをじっと見つめてきました。その猫に近づいてみると、なんとそこに宿泊先の看板があるではありませんか!

扉を開けて宿に入ると、「遅いから心配したよ」とオーナーがとても温かく迎えてくれて、ほっとしました。

部屋に荷物を置いて外に出ると、道案内をしてくれた猫にまた会うことができました。たくさん撫でて、たくさんお礼の気持ちを伝えました。

イドラ島には印象深い思い出がたくさんあるので、またの機会に他のエピソードを紹介したいです。

【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
埼玉県出身。世界中を旅しながら、地域の猫を撮影している。猫の表情や仕草、猫が暮らす環境の色と光に重点を置いた写真が特徴。2023年に世界一周旅行を達成し、初の個展を開催。その他、企業カレンダーやグループ展など精力的に活動中。
Instagram:cat_serenade
X(旧Twitter):naho_umineko