声優・長縄まりあさんインタビュー　TVアニメ『貼りまわれ！こいぬ』で表現したい、犬の真っ直ぐな心

こいぬのセリフは、台本に書いていない、監督さんの指示がない場合も多いので、オーディションのときから割と自由にアドリブで入れています。監督さんも『長縄さんは好きにやってくれていいよ』と言ってくださるので、自由に演じさせていただいています（笑）。

この作品は、登場“犬”物たちの絵柄の愛らしさ、人間くさいキャラ、動きのおもしろさだけで十分見る人に訴える魅力があるので、私はそこにちょっぴり声をのせている感じです。むしろ、声を発するまでの間を大事にしています。

方向性の違いでモメるとか、エピソードがいかにもバンドっぽいんですよね。最初は邪魔者扱いだったこいぬが、最後はちょっとだけみんなの力になれた、というオチもほっこりするし、私もずっとこのバンドを応援してきたような気持ちになりました。

犬ってものすごく純粋で真っ直ぐじゃないですか。犬を飼っている友人の家に遊びに行くと、全身全霊で『会えてうれしい！』『大好き！』を伝えてくれる。気持ちが表情や動作にストレートに表れ、さらにはあふれちゃっているんですよ。ああいう姿がたまらないです！

こいぬにもそういう犬らしさがあって、ステッカーを貼るなんていう変わったお仕事を真面目にやる一途さ、それしか目に入っていない夢中な感じ、できたときの『ほらほらできたよ！見て見て！』という得意げな表情が、ボールを追いかけて取ってきたときの犬そのものなんです。その純真さが愛おしすぎて、ちょっとポンコツな子なんだけど憎めない。

一方で、犬って活発で感情が振り切れているイメージがありますが、こいぬはおっとりして落ち着いている。このギャップも魅力です。

自分が飼うなら、ゴールデン・レトリーバーみたいな、大きくておっとりした犬が良いですね。日当たりの良いリビングで、犬にもたれながらまったりと静かな時間を過ごしてみたいです。

声優という仕事は、〝文章〟を〝言葉〟に変換して、そこに込められた思いを伝える仕事だと思うんです。ふつうなら、『ドキドキした』というセリフを言えば、言葉の意味からある程度ドキドキ感が伝わりますよね。でも、こいぬは『わあ』といった音しか発しないので、音にダイレクトに気持ちをのせ、私のニュアンスだけでドキドキ感を伝えなければいけません。『わあ』で、『びっくりしたな』も『うれしい』も『悲しい』も表現する必要がある。だから、ものすごく勉強になりましたし、感情表現の引き出しが増えました。

それから、私は役のことをあれこれ考えて、自分なりに工夫するのが好きなんですけど、こんなに工夫しがいのある役はなかなかないです！　その結果、監督さんや周りから『良かったよ』と言われると、すごくうれしいし、大きな達成感がありますね。

こいぬは犬の一生懸命さを象徴するキャラクター。犬好きの方なら愛さずにはいられない存在です。犬を飼っている方は、うちの子ならどんなふうにこのお仕事をするかな、どこにステッカーを貼るかな、なんて考えながら見ていただけると楽しいと思います。

また、さまざまな色、形、性格の犬や犬ステッカーが出てくるので、『この犬ウチの子に似てる！』なんていう発見もあると思います！